771プレセブンス。剣聖を。

日々の鍛錬。
実に単純といっていい。
ルガディンの青年からすれば。かもしれない。
体格に恵まれた彼は、剣を振るう以外にすべきこととして。
狩人として過ごしてきた時間を、違う事に。
姉の・・姪を救ううために。

そして、剣を振るう。

自己鍛錬以外にもすることは山ほど。
ハウンドと名乗る傭兵から紹介された二人の師は、どちらも女性で、年も変わらない・・ないしは年下。だが、年下の方が伝説クラス・・・。
マイ、と名乗る少女は、気が向いた時だけ「剣技」を教えてくれる。
ヴィーと呼ばれる彼女は、基本的な技や鍛錬。

だが、奔放なミコッテの少女は、その「剣聖」にふさわしく、妙技を扱いこなす。
それを、なんとかして真似たい・・が、できない。
そして、思いついたのが。
姉夫婦から譲り受けた、というべきか・・小剣と短剣。これを師である剣聖に匹敵させるべく、鍛錬し、双刀を振るう師に見せ付けるべく。
入れ替え、距離感を掴ませない。
そういう剣技を。
なんとか、物にできた・・・と思う。ヴィー師にも、剣聖にも黙って鍛えた、自分だけのスキル。


「ふうん。ワタシに手合わせ、か。いいよ。やろう!おもしろそう!」
薄桃色の尻尾を振りながら。彼女は自慢の剣ではなく、練習用の。
同じく、練習用の剣でユパは対峙する。

そして。

「いいよ!ユパ!さすが!見所あると思ったんだ!」と彼女は楽しそうに二本の剣を振るう。
短い剣で受け流し、長い剣で捌きながら、斬り伏せ、突き崩しにかかる。
でも、それに長短入れ替え、間合いを壊しながら、自在な剣戟を見せる弟子。

「おい・・・!」
それは、ハイランダーの女性の声。
その横には、ハウンドと名乗る青年。

短剣の応酬の後に、二人は来たのだ。「剣聖」が「見に来て欲しい」と。

そして、二人、いや、三人の目の前で、少女は踊り疲れたのだろう。

少女は。

「おい!アイ!」と親友に抱かれ。
二人の青年は、何が起きたのか・・
「ねえ。ヴィー。一番美味しいお魚、食べたい。」と。
虚ろな瞳。
「わかった。アイ。」とだけ。

そのままミコッテの少女を抱えながら。
「おい。ユパ。今日、この場で剣聖と名乗れ。それがアイの遺言だ。」

「え?」
「は?その?剣聖・・は?」
二人の青年は、意味が分からず。
「おい!ヴィー!」ハウンドが怒鳴る。
「え?」
「いいから、黙って言うことを聞け。親友の最期の言葉に手向ける。」

物言わぬ「剣聖」は。

「アイ・クオーレ。おいらは、剣聖として・・往きます。」
その言葉を受けたのか、少し尻尾が揺らいで・・

満足したような、そんな笑顔で生涯を閉じた。


「アイの剣、だ。」ヴィーはそう言い、ひと振りの剣を。ジュワユースを受け取り、そして・・継ぐ者を自分も探す必要がある、と。青年は誓う。

継ぐべき少女に逢えた。
名を、ミーラン。親友の娘。

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