769プレセブンス。ルガディンの・・。

薄桃色の髪の少女は、はっきりと言えば、呆れてものが言えない。
そんな状況というのは、実は結構あるものだ、と半ば感心を持ってその事態に立ち会っていた。

荒涼とした地に一大商業都市を構えた創始者も確かにタフだ、とおもう。
そして、目の前の少年あらため、青年も大したものだ。タフ、と言っていい。ほんの2,3年前に、あろうことか弟子入りをしてきたのだ。
自分に。
確か、まだ自分は15かそこら、だったと思う。
そんな自分に弟子入りをしてきた彼は、確か18歳とか言っていたか。
成人した男が、いきなり少女に弟子入り、というのもなんだ。オカシイ。
とはいえ、剣を履いた彼はいたく真剣に、口説いてきた。

「ねえ。お嬢さん。俺と、その。寝台の出来について語り合ってみないかな?」
「は?」
「寝台の強度を確かめたいんだ。是非、パートナーが欲しくって。」

男が何を言っているのか、理解が及ぶと手は勝手に動いた。
「ワタシに勝てば、寝台の強度だけじゃなく、どんな声を出すのか確かめるチャンスをあげる。」

男は10を数えることすらできずに叩き伏せられ「負けたからには俺の事を好きにしていいぜ。」とのたまい。
ミコッテの少女はこの男・・・少年を弟子にしたのである。イヤガラセも含め。
2年ほどして、様になっては来たようだが、逃げ出してしまい特訓がハデすぎたか、と反省もしようというところに。

彼は目の前にいた。
「あ。その。アイ師匠?」ミコッテの少女に平謝りを・・するどころか、屋台のテーブル越しにドカッと座った彼は「今は、ハウンドって名前にしてるんだ。」と。
フードをかぶりながら、ボソボソと話しかけてくる。

「あ、そう。」と、苦い(串焼きは美味しいが)表情で見返す。
「そんな目で見ないでくれよ。」
「一万ギル。」
「あ・・。」
「賞金首がワタシになんの用?」
「いや、その。あれだ。仕込んで欲しいヤツがさ。」
「あのね・・・アンタのおかげで、ワタシ死にかけたのよ?ワタシがアンタの居所知ってるって勘違いした富豪が殺し屋差し向けて。」ズズー・・・ミルクティーをすすりながら。
「おいおい・・剣聖ともあろう方が何を・・。」
「ワタシの弱点、知ってるでしょ?」
「尻尾?」
「死ぬ?イッペン、死んでみる?」
「死ぬ前に、師匠にお願い。」無精ひげが様になってきた青年。
「何?」
「一緒に風呂に入り・・いや、ウソ。ウソ!だからその剣を収めて?」
「似合わないヒゲを剃ろうとしただけよ。」目にも止まらない速さで抜き放った「喜ばしき者」を鞘に収める。

こええ・・「いや、知り合いなんだがな。ちょっと剣の修行をさ。見てやって欲しいんだ。」
「へぇ。その彼は?」
「ああ・・・そこに居るんだよな。」
え?気付かなかった・・・
「申し訳ないです。その・・ちゃんと挨拶をと、思ったのですが。彼が黙って立ってろ、と言うもので。」
「ふん。」
「ユパ・ボレーズ。です。ローエンガルデ族、この北にある集落の出身で。狩人を生業としていました。
とある事情で、どうしてもチカラが欲しくて・・。知り合いである彼に無理を頼みました。」
「ふうん。」尻尾を揺らし。アイは。「目は真剣、だね。いいよ。でも、ワタシの剣は少し特殊だから。」
「はい。お伺いしています。二刀を操るのだとか。」
「そう。そこのヘタレじゃあ、身につかなくてね。」
「では、よろしくお願いしてもいいでしょうか?」
「2年だ。それ以上は面倒みない。」
「はい。」ユパは、自分よりも年下のミコッテの少女に頭を下げる。
「よろしい。じゃあ、まずはこのアホを連れて、リムサ・ロミンサまで走れ。ワタシの実家、がある。しばらくすれば、ワタシも追いつく。」
剣聖と称される少女は、ミルクティーを飲み終えると、そのまま立ち去る。

「ふう・・」ルガディンは息を付き。
「あ、勘定・・・・。」ミコッテはもういない・・・ハウンドはうなだれる・・。

<<前の話 目次 次の話>>

マユリさんの元ページ