753セブンス。始点・・・

「んーっと。こっち、だよね。しっかし、久しぶりちゃあ、久しぶりだけど。あたしがマップ無しだと森をうろつけなくなるなんて。霊災ってエグイわねえ・・。」
以前、一度だけ訪れたのだが、その時はあまりに違いすぎる森の環境に驚き、そして道にも迷ったものだ。
そして今回もまたマップに頼らなければ。「はぁ、魔女の名も森だとしっくりくるのにね。おとぎ話の魔女にあやまらなくっちゃ。」ゆっくりと歩く。

チョコボを用意してくれる、との話だったのだが・・・。なんていうのか。残念ながら、チョコボが全て出払ってしまった、というのだ。
「はぁ。」としか返事できないあたしに、大牙佐は平謝りしていたのだが、チョコボ屋が彼に耳打ちを。
すると彼はやや表情を堅くはしたが、「その、レティシア様。代わりの騎獣なら用意すると。ただ、その。コホン。少しクセがあるらしく・・。」
「なに?別にいいわよ。」と安請け合いしたのも悪かったのだけど。
「では、こちらに。」とチョコボ屋が離れに案内する。もちろんついていくが。やや暗がりな厩舎に高台のように階段つきの床が。
其処に上ると、なにやら”居る”のがわかる。チョコボの臭いじゃなく、なんだか別の。
どうぞ、といわれ、なんだか解らないものに足をのせ、恐る恐るまたがろうとしたが、球形らしく、上手くまたぐのが難しい。
なんだか表面にはうっすらと毛のようなものでもあるのかと思ったが、そうでもないらしい。皮?膝を曲げた状態でまたがり、手綱をもつ。
すると騎獣の筋肉?らしいものが動くのが両脚から伝わってくる。な、なんですか?コレ?
「では、行ってらっしゃいませ。」と、厩舎の扉が開放されて。
日差しが差し込むと、自分が今何にまたがっているのかがわかった。
バサッ!バッサバッサッ!キキィィィ!!と羽音と奇声を響かせ、それは空に向かう。いや、そこまで高くはないが、チョコボよりも視点は高いし、なにより飛んでいる。
ふわふわした乗り心地だが・・・「きいやああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」
そんな悲鳴なぞ、どこ吹く風といわんばかりに飛び続けるアーリマン族の魔物。
時々うしろでぴしゃっ!と何かムチ打つよな音は尻尾を使ってバランスと方向を調整しているようだ。

なんじゃこりゃああああああ!と森に響き渡る悲鳴。


「ボルセル殿。よかったんです?」「ああ、大事ない・・・とおもう・・・。」
二人はいまだ余韻を残す悲鳴は聞こえなかった事にしようとしていた。


「ななな、なに?ドコにいこうっての?」とりあえず、転げ落ちないようにだけ。そこそこの速さで飛び、かつそれなりの高さがある。ヘタに落ちれば骨折ではすまないかもしれない。
かといって、こんなのにしがみ続けるのも正直トリハダ物、いや、もうすでにトリハダが。
なんとかして・・・。
「あれだ!」おもわず叫び、心の中で数を読む。3・2・今!大きく張り出した枝に勢いをつけて飛び移る。
はぁ。魔物?はそのまま飛んで行ったが・・大丈夫だろうか?さて、そんなことより、ここは?マップをみようとしたが、ぶら下がったままではそれも叶わない。
よっと。地面に足がつくと少し落ち着いた。

そんなわけで、魔女の異名もカタ無しな状況とあいなった次第。
「げ。」マップで確認した現在位置は全く違う方向に。
なんてこったい。と毒づきたくなるが、手綱を持ってたのはたしかに自分なわけで、しかしながら、何の予備知識もなしにイキナリあんなモノに乗せられて、どうしろと・・・。
とりあえず、目的の場所までは歩くしかない。
ほったらかした魔物がどうなってるのかはこの際気にしない方向で。
しばらく行くと、分岐点。
コレを南に行けば養蜂場があり、そこでとりあえず情報収集から開始。
「ホウソーンさんかあ。久しぶりっちゃあ、久しぶり。またあの歓迎。いや、挨拶か。」
ごそごそ、っと木々を分け入り、ミツバチが飛んでいるのを見かけると、その向うに養蜂箱、いわゆる巣箱の世話をしているおじさんと目が合う。
「おや?お客さんか。」と言いながら、手や腰を揺らすように刻むようにくねくねと踊りだす。
「あああ、ホウソーンさん!あたしです!レティですって!」
慌てて奇怪な踊りを止めにかかる。箱の近くまで来るとミツバチたちが絡んでくるが、邪険にさえしなければ襲っては来ない。
「おうおう!そうだった。どっかで見たと思ったんだが。で?またハチミツがほしいのか?」
「いや、それはそれで魅力的なんですが、今回は少し優先しないといけないことが。」
「なんだね?」
「いや、じつはシルフ族について、なんですが、彼らの動向を調査してほしいと請負いまして。」
「ほう?」また踊りだす。なんというか・・この「踊る」事がシルフ族の挨拶らしい。しかし何故今?怪訝な顔をしたであろうあたしに「いや、今シルフの子が飛んで行ったからね。
挨拶したんだよ。」と。気がつかなかった・・。まあ、背後をふよふよ、と距離を開けて飛ばれては、わかりようもないのだが・・・
ふむ。このタイミングでこのあたりでも普通に飛んでいる、ということは危害は与えてこない、か。
まあ、異種族の思考がどうなっているかは学者に任せるとして、単刀直入な質問でいいか。
「で、シルフと直談判がしたいんですが・・。シルフ達が凶暴になった、という報告もあります。どうすればいいでしょう?」
「おう、その事か。たしかにそんな話があるな。だが、この森でそんな被害はきいておらん。
だが、シルフ領に行ってきた連中はみな、ほうほうの体で帰ってきて、あいつらやっぱり!とか言うておったな。そういう話はバスカロンドラザーズで聞けるんじゃないか?」
「なるほどね。」
「おお、それとな。その先にオチューが増えだしてな。いくつか片付けてはくれんかね?」
「はあ・・。」あんまり気乗りはしないけど・・。情報料かしら。
「そんな顔しなさんな。オチューのつるの付け根な。あそこから取れる樹液からミルクートという、シルフ達の好物ができるんだ。交渉するならあれば得だろうて。」
「む。作るのに時間かかる?」
「発酵させるからの。しばらくかかるだろう。が、家にいくつか作り置きがあるしな。空瓶を渡すから集めてきてくれた分だけ交換しようじゃないか。」
「オーケー、商談成立。何か注意点は?」
「しとめる前に採集せんと、搾り出すのが大変だぞう。活かしてあるうちはびゅーびゅー出てくるから楽に採れるがな。くたばれば、アレを抱きしめてぎゅっと絞るのをくりかえさんとなあ。」
「それは多分一番重要なポイントだったわね。じゃあ、いってくる。ビン頂戴。」
「あいよ。」


そしてミルクート3本を持って、バスカロンドラザーズへ。
片目のマスターはドアを開ける音に「らっしゃい!」背中をむけたまま。
カウンターの席に座り、「繁盛してるじゃない。」「ああ、おかげさまでね。おーい!イアンナ!カウンターにお一人だ!」「はあい。」
「あら、いらっしゃい。」「どうも!」 マスター、バスカロンの動きが止まる。「ん?」
ゆっくりと。ゆっくりと振り向くマスター。あたしと彼の残った片目と視線が合わさる。
引きつったような表情を浮かべ「あ。あんた・・・。」と搾り出すような声のマスター。
あたしはといえば「よっ!久しぶり!」と片手を挙げて挨拶。
「イアンナ、俺、気絶して夢みてるのか?」
「へ?バスカロン?どうかしたの?綺麗なお嬢さんが来て浮かれた?」
「あら、やだ。お嬢さんだなんて。」
そんなやり取りに、まわりの客もなんだかこちらをチラチラと見ては、そそくさとお勘定を置いて出て行く者、ひそひそと声をひそめる者と、なんだか好ましく思われていない?ようだ。
「あの?」あたしの声にびくっとあからさまなアクション。
「あら、ごめんなさいね、普段はもっと活気があるんだけど。お知り合い?」
「まあね。2,3年くらい前?かな?」
「あら、その時分だと、お店開けたてくらい?じゃあ、オープンの時くらいから知ってるのね。」イアンナは勤めてまだ2年に満たないという。
「そっかあ。でバスカロン?ちょっと聞きたい事があるんだけど。って、何も取って食おうってんじゃないんだからさ。ね?いいお店だし、さ。」
言外のニュアンスを察したのか、ブンブンと大きく首を縦に振る。
「実は、シルフの件なんだけど。ここだと詳しい話が集まってるんじゃないかって、聞いたからよ。それ以外には、無いハズだけど。」
「ああ、その事か。」「そうじゃない事もあったりしちゃう?」「ないないないです、はいっ!」「ふうん。」
マスターは心底安心した様子で、胸をなでおろし。「なんだってそういう事に首つっこんでるんです?」と少しだけ余裕を取り戻したのか、質問を。
「んー、グリダニアで噂話聞いたから。それだけよ。」
「そうですか・・・(お国がらみ、か。それじゃ大丈夫、か。)」
「そろそろお腹すいたし、なんか作って。」
「へい、ちょっと待ってくだせえ。」奥にキッチンがあるのか、倉庫があるのか、引っ込む。
(裏話、かな?)
「ちょっと、バスカロン?どうしたの?」「イアンナ、俺がこの店をした経緯は話したな?」「ええ、聞いたわ。それで私も足を洗ったんだから。」
「その時の襲撃を仕掛けてきた相手、ってのが、あの女だ。」「「え!・・・・・・もごもご」「大声だすな。手をはなすぞ?」
「本当に?まだそこらへんに居るような街娘じゃない。」「俺も後から聞いたんだが、アレが天魔の魔女だ。」「天。!」「大声出すなと言っただろ。」
こくこく「今回は国がらみらしいから、俺達を今更どうこうはしないだろうさ。それに賊は廃業してるし、その事もおそらくは知ってて様子を見てるんだろ。
さあ、メシ頼まれてるんだ。取り掛かるぞ。」「はあい。」

「さ、どんな情報がでてくるかしら。」その前に腹ごしらえ。っと。
お腹が きゅぅ と小さく鳴った。


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この話で 七・五・三  七五三ですなw
753話ですー
Marth Lowell (Durandal) 2013年11月17日 19:07

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>マルスCEO、そーか、そー言う意味だったんだw

思えば遠くに来たもんだ・・・(゜д゜)y-~

あ、タバコはやりません。マジw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年11月18日 03:05

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さすがのレティさんも、
キモ可愛い(?)アーリマンには勝てなかったかw
思わず笑ってしまいましたw
敵として対決したら楽勝だろうけどねw
Yupa Boleaz (Ragnarok) 2013年11月18日 20:51

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>ユパさま、どうもw
そりゃあねえ、まさかあんなモノに乗せられるとはwww
昔ハトを飼ってたんだけど、羽ばたいたときの大胸筋、スゴイよ?w
ゴリゴリ動くwましてや、あのサイズでバッサバッサと動いて鞍無しでまたがってたら、太股の裏側がキモチワルイどころではないだろうとw
素肌だったら、なおさらだろうけどw(レティは素肌装備ではなさそう。レザー系のトラウザか?)
もちろん、このクラスの魔物を正面切って戦っても負けはしない、とおもうw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年11月18日 23:49

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