751セブンス。予兆・・・

「ただいまー・・・・っと。そういや、ね。」
独り言。
グレイの髪の魔女は静かな家の中にふとした感慨を。
霊災の後、なんとか無事だった家を引き払い、キャンプ・ホライズンの近場に新しく家を買ったのには、娘夫婦がウルダハに引っ越した、というのが理由の一つだけど。
昔にかかわりを持ったイヤな相手が近場にいるというのもなんだか気持ちのいいものではない、から。
それに、このキャンプだと仕入れも幅が増えるので、主人の店のためにも都合が良かろうというのもある。
など、言い訳をつらつらと並べないと、やはり少し寂しいからだが。
「ベテックト師もこんな気分だったのかしら。」物憂げに。
店への買出しに行かなければ。と気分を入れ替え、レティシアは店からの荷物(晩御飯等)を片付けると、市場に。
メモを見ながら、アレコレと買い物を済まし、チョコボを呼び出すとさっと乗るや、駆け出す。
(これ届けたら、グリダニア行こうかな・・・少し感傷的になったのかしら?)

「おう、レティ。すまんな。助かったぜ。」どこから見ても海賊な旦那、アレッサンドロがニカっと笑う。
「ん。」頬にキスをすると、茹でダコのようになった夫に。
「ちょっと里帰りしてくるわ。2,3日くらい、かしら。」
「おう。そうか。気をつけてな。」
「あら、心配?」微笑む。
「ああ、お前の相手になるヤツにな!はっはっは!」
「失礼ね。」だが表情は、微笑んだまま。
「マユ達には?」
「気にしなくていい、くらいで。わざわざ報告するまでもないでしょ。」
「そうか。まあ、楽しんできな。」「ええ、愛してるわサンドロ。」「照れるね。」

レティシアはにっこりと微笑むと、両手を広げて術式を展開する。
ふわり、と浮き始める体に蒼く輝く構成が羽衣のようにまとわりつき、輝きを強めていく。
「じゃあ、ね」口元の動きだけで声はもう届かない。
輝きが白くなって、弾けた瞬間、もう其処には何も無かったかのような。
「まったく、自由だな。あいつは。」午後からの仕事もそろそろ準備しなくては。


シュン、という音が聞こえそうな唐突の出現に、しかし誰もいちいち気に留めない。
そうこうしてる間に、となりに冒険者らしき一団が数人現れて、どこかに駆けて行く。
ここはグリダニア、エーテライトプラザ。移動術式の到達地点の一つで、市内には幾つかあるがそれは市内限定だ。
外からはこの「プラザ」に。なので人も多く、ぽんぽんと人が増える。
その光景を尻目にカフェへと向かう。
この街にくれば、まずはカーラインカフェと決めている。
「よっ!ミュー!」片手をあげて挨拶を。
小麦色の女主人ミューヌはにっこりと。
「いらっしゃいませ、レティさん。ちょうどお茶の時間ですし、ケーキと一緒にいかが?」
「いいわね、いただくわ。」
「太るがいい。」横には仮面を外してカウンターに置いたスウェシーナが。
「スゥ?あんたこそ太った?」
「やかましー。太ってませんよーだ。」
あはははは!
3人が揃うといつもこんなだ。
「そういえば、レティ。マユちゃんの新居には行ったの?」
「引越しの時だけね。あんまりちょっかい出すと、子離れできないって言われそうでね。」
「あはは、こっちは未だ親離れできない息子を嫁が尻に敷いてるところ。」クスクス。
「シャンはよくできる子だしね。マユは・・ウルラにべったり、かしら。」
「あら、いいじゃない。」
「そうだけど。っと。」「はい、お待ちどう様。今日は栗とカボチャを使ったケーキと、アップルティーですよ。」「わお、おいしそ。」
「さっき食べたけど、絶品よ。」「楽しみ・・はくっ。・・ん~~~美味しい!」「どうも。」

食べ終え、しばしの3人での歓談。
「そういえば・・レティ。ちょっとキナ臭い話もあるのよね。」
「なに?」
「うん、鬼哭隊がほら、あちこちで歩哨してるんだけどね、前よりも範囲を広げて。そこで噂とか、その他も拾ってくるのよ。
その分析とか、対応に追われてる中、鬼哭隊じゃなく、グランドカンパニーに回す案件もあったりで。ウルダハだと、イフリートかしら?」
「はぁ?」
「そのね、蛮神がらみ。こっちはこっちでイクサル族のガルーダだったか。「神降ろし」なる神事を進めているみたいなんだけど、その牽制で手一杯みたいでねえ・・。
鬼哭隊も動員して探索とかしてるんだけど、いかんせん、戦力としては足らないから神勇隊と合同で。
カンパニーもあっちにこっちに、と手を広げてると戦線が延びすぎて、薄いところを突っつかれたりしたら面倒だなって。」
「そんで?」
「冒険者をカンパニーに勧誘ってのも、その穴埋めの一環。あなたならまず間違いなく、即戦力だし。できれば、わたしからもお願いしたいくらいなのよねえ。」
「で、結局のところカンパニーに顔だせって?」
「・・・・うん、なんか、こういう頼み方って好きじゃないけど・・。」
「いいわ、スゥ。貸し、ひとつね。」
「仕方ないか。」
「そんな顔してるスゥを見れたし。貸しはチャラね。」
「ありがと・・レティ・・・。って、わたしって顔芸キャラにされた?」
「いいじゃない。で、どこに?」
「ああ、この先のプラザから水車四辻を西に。橋越えてすぐカンパニー本部があるわ。ボルセル大牙佐がいるから。」
「ああ、なんか懐かしい。そっかー昇進したのねー彼も。」
「あんたにかかれば、一個大隊の長も子共扱いか、ははっ!」
「そうね、挨拶がてら行ってくるわ。」
「うん、気をつけてね。」
「まかせなさい。それとスゥ、そうやって笑ってるほうがいいわ。」
「なっ!」顔が赤い鬼哭隊隊長
「じゃあ。」手を振ってカフェを後にする。

じゃ、どうなるのかな?鼻歌を歌いながら・・・・

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