747セブンス。剣聖に至るまで・・・III    注:後半・・・・

ユパは今日の狩を終えて帰路に着く所だった。
収穫としては、まあまあ、といったところ。事前に仕掛けておいた罠にスクウィレルという小型の獣が2匹に、
弓で子ヤギ(アルドゴート種だが、どこから迷い込んだみたいだ)、あとは薬草の類。しかし、一番の収穫はウルダハ行きのキャラバンとの会話だろう。

「なあ、あんたらウルダハに行くのかい?」
先頭を歩くヒューランの傭兵に声をかける。
まだ少し幼さを残した青年。だがよく鍛えているらしく、一見痩せているがその鎧の中はしなやかな筋肉で占められているのだろう。
背には槍、腰には剣と長短の間合いに合わせてスイッチできるようにしているあたり、傭兵らしく抜け目が無い、といったところか。
「どうしたんだい?」どこか人を食ったような表情は生まれつきだろうか?漆黒の髪を少し長めに伸ばし、どこにでもいるやんちゃ坊主然としながらも隙は無い。
「おい、アガト?どうした?」
いつのまにか二人になっている。こちらはヒューランだが背も高く体格もいい。おそらくハイランダー出身だろう。
「あー、ヴォルフ君?初対面の相手がいるところで気安く名前呼ぶのはマナー違反じゃないかね?」意地悪い目つきで見上げる。
「な!今お前だって名前呼んだじゃねえか!」
「俺は本名で呼んでないぜ?」
「ヴォルフガングなんだから、本名と変らねえじゃねえか!」
「お前、バカか?何、自分で名乗ってんだよ。それに本名略して呼び名にしてる時点でバカ確定だろ?」
「あっ!?ぐっ!なあ!あんた!」
いきなり話を振られ、ユパはどうしたものかと・・・・
「あんたも名乗れよ!」
「あ、ああ。おいらはユパ。この森から少し離れた所に集落があって、そこに住んでる。この森には狩で足を運ぶんだ。そろそろ帰ろうかと思ってたんだけど・・。」
「じゃあ、ご苦労さん。傭兵の入用があればウルダハの酒場クイックサンドまでよろしくな。」
「おい、後ろのオッサン連中がなんで進まない?って文句つけてるぜ?そもそも、それを言いに来たんだ。」
「言わせとけよ。」「報酬が目減りしても知らんぜ?」「チッ、大した額でもねえのに、これ以上渋りやがったら次からは受けねえぞって脅して来いよ。」
「ったく、わがままだね。」「けっ、言ってろ。俺は傭兵王に成り上がってやるんだ。チンケな仕事一つでグダグダ言われたくねえ。」
「はいはい、王様ね。まあがんばれ。」後ろに歩いていく。それを見送ると「そういや、なんで俺を呼び止めた?」
「あ、その。実は・・・」
たどたどしく説明を。その間もキャラバンは速度を落としながらも進んではいる。
「なるほどな。ま、俺からすればあんたの家庭の事情なんざどうでもいいが。ウルダハからグリダニアに行くときに一緒に連れて行ってくれ、てのは俺は構わんけどな。
スポンサー次第だろ?ついでに言えば、さっきのやり取り見てたろ?今のキャラバンは二度と俺を雇わないだろうな。だが・・他の連中、さっきのバカとかならなんとかしてくれるかもな。
そうだ、もう一組エレゼンのカップルもいるからそいつらにも声かけとくわ。近く婚姻するらしいから、身につまされてOKくれるんじゃないかな。まあ、話は通しといてやるぜ。」
「あ、ありがとう・・・。」丁寧にお辞儀を。そして「これ、傷薬なんだ。大したお礼ができないけど。」「お、ありがたくもらっとくぜ。」そこに。
「おい。」「噂をすれば、か。アル、メイ、ちょっとこの御仁を覚えておいてくれ。」
「は?」「え?ちょ!アっくん?」エレゼンのカップルは呆気に取られ。
「じゃあな。ユパ!大事無いことを願ってるぜ。」と手を振りキャラバンと共に去っていく。


アガト、ヴォルフ、アル、メイ、か。
帰り道、やや遠回りになってしまったが、このツテができたのはありがたい。
今までもキャラバンと会話をしたことはあったが、商人達ばかりで森で獲れた獲物が多すぎて買い取ってもらったり、もしくは香辛料を買ったり、世間話ていどのものだったからだ。
こんなに具体的な脅威に対してはなんとも心もとない、ゆえに思い切って傭兵に声をかけたのだ。年齢も近そうだったので掛けやすかった、というのもある。
「あ。しまったな・・・そういえば次、グリダニア行きが何時なのか聞けばよかったか・・」
とはいえ、不定期だろうから・・・まあ、明日あさって、ということもなかろう。
今のうちに荷物の整理だけしておくように言っておかねば。それと、キャラバンが来るとしても合流するのに時間がかかりすぎるのはわかりきっているから、
早起きしてウルダハ方面まで少し足を伸ばさなければならないだろう。事前にキャラバンと交渉も必要だ。そして長に頼んでパールを用意してもらわなければ。
やることは一杯ある。考え事をしながら足を進めていると意外と早く着くものだ。

もうすぐ集落が見えてくるはず。
「ん?」炊事をするには少し早いような・・陽は山の稜線に差し掛かる手前だ。
煙が立ち上っている。それも、かなり・・・
大体、陽が半分ほど沈むくらい、がボレーズ・マルクバージュ家の炊飯の時間なのだが・・
胸騒ぎが。知らず駆け足になる。
「姉ちゃん!タリア!義兄さん!」集落の半数に上る家から火の手が。
近くに倒れている人達。
「おい、おっちゃん!大丈夫か?」
「ああ、ユパ・・か・・賊が・・・・」
「姉ちゃん達は?」
「最初に・・・・抵抗して・・・見せしめに・・・火を・・・・。」
「で!?どうなった?」
「エテが・・・娘を抱いて・・・・」
「姉ちゃんは?一緒に出ようとしなかったのか?」
「エテと・・・娘が盛んに・・・呼んでおった・・・・が・・・。」
「なんてこった・・・姉ちゃんは火が怖いんだ・・・親の「火渡り」を子供の頃に無理やり付き合わされて大火傷を負ってから・・・炊事ができるようになったのも、
おいらにちゃんとしたご飯を食わせたいからって、克服したとおもってたんだ・・・けど・・・」
家を見る。半分が焼けているが、まだ半分は残っている。
「うおおおお!」荷物を放り出し、壁を突き破る。
「姉ちゃん!大丈夫か!!」
「ゆぱ?」まだ火の気が無い所から声が聞こえる。
「姉ちゃん!」
走りよる。
「いや!見ないで!」「な、どうしたんだよ、早く逃げないと!」「もう。いいの。」
覗き込む。右肩から肘にかけて、そして右の頬から顎にかけて酷い火傷を負っている。思わず目を背けたくなるほどの重傷だ。
だったら、なおさらグリダニアにあるという幻術士の集うという瞑想窟に連れて行かねば。
「姉ちゃん、そんなの治るよ。早くでないと義兄さんや、タリアが心配するよ。」
「いやよ!こんな姿、あの人に見せれない。きっと嫌われてしまう。」
「そんな事無い!あの人は見た目で判断するような人じゃないのは、一番判ってるんじゃないのか?さあ。」「うん。」
火傷を負っていない左手を持って火が周っていない壁を蹴りぬく。(ボロ屋でよかった、とは不謹慎かなあ?)などと考えながら、逃げ道がすぐにできるのはいい事だと思うようにした。
とりあえずの応急処置として、火傷に利く薬草を貼り付けて、包帯で巻いていく。
「姉ちゃんは岩陰に隠れてて!義兄さんとタリアを探してくる。」
「ユパ、ありがとう。気をつけてね。」
「ああ、任せてくれ!」駆け出す。

火の手と、喧騒、逃げ惑う人の波。
「くっそ、こんなんじゃわかんねえ・・・」
「あ、いた!ユパ君!大変だ!」
「あ、おじさん!なに?」
「モニカちゃんの旦那さんがあっちに走っていった!賊を追いかけてるみたいだった。」
「ど、どういうこと?」
「わからん・・。いや、まてよ?名前を叫んでた、な。確か・・・タリア?か?もしかして、モニカちゃんの娘さんか?」
右手で顔を覆う「なんてこった・・・。いつぐらい?」
「細かい時間はわからん、が、ついさっきじゃなく、少し時間が経ってるな。急げ。ワシも行きたいがこの歳では走るのもツラくてな。ユパ君を探しとったんじゃ。」
「そう、ありがとう!」


しばらく行くと、見たことのある服の男性が倒れていた。
「義兄さんっ!!」駆け寄る。仰向けにする。「うっ」これは・・。
「あ、ああユパくん・・・・すまない・・・俺が居ながら・・・・。」
「喋らないでください。傷に響きます。」(これは・・・もう・・)青年の腹からは・・・
「いや、いい。・・・冒険者時代に・・・・こんな光景は・・・・いっぱい見てきた・・よ。」
「そんな・・・いえ、なんとかしましょうよ!」
「俺は・・・もういい・・・・この・・数年・・・・とても・・充実した・・・暮らしだった・・・最期は・・・なんとも・・・な。ははは・・・。」
「そうだ、タリアはどうするんですか?姉ちゃんは?」
「タリア・・・賊にさらわれ・・・てしまった・・・・すまない・・・・モニカに・・・代わりに謝って・・・くれ・・・・。」
「自分で謝るっていうか、謝らなくてもいいように助けに行きましょうよ!」
「そう・・・だな・・・。がぶッ!ごふごふごふっ!」大量の血が吐き出される。
「エテ兄さん!」
「うれしいな・・・そう呼んでくれるなんて・・・。」
「兄さん!」
「そろそろ・・・お別れだ・・・これを。」一振りの剣。
「これは?」
「グラディウス、俺が・・冒険者・・時代に使・・ってた剣・・だ。つかっ・・・・・てくれ・・俺も・・一緒に・・・居る・・・か・・。。。。。。。。。。。。。。」
「兄さん?おい?返事してくれ!おい!おいってばよお!!姉ちゃんに謝るんだろお!タリアをさがすんだろおお!!」
事切れた兄は何も言わない・・・・・
もう周りには賊の影は無い。
のそり、と身を起こすと剣を腰に吊るそうとするが、やり方が分らない。仕方が無いのでベルトに挟み込む。のろのろと現実というものを整理していく。うまくいかない。
周りを見る。小さな祠が山際の崖にあった。その横を掘り返していく。爪がはげおち、手は土と血でよごれ、やっと一人分の穴が掘れた。もう月が中天に差し掛かる頃か。
物言わぬ兄の身体を引きずらないようになんとか背負う。そして穴の中に横たわらせ、両手を合わせ、ザル神に祈りを捧げる。
そして掘り返した分の土をかぶせていく。「さようなら、エテ兄さん。」
最後に、大き目の石を乗せて塚が出来上がる。そして剣を引き抜き、掲げる。
「おいらはこの剣に誓う!兄の無念を必ず晴らしてみせる!」


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変換するの面倒なら一つ書いてコピペすればいいのにw
Marth Lowell (Durandal) 2013年11月08日 17:35

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づる 出る ヂル
ダ行変換活用。

双子の父ちゃん、こんなとこにまで?w
Ephemera Mitoa (Durandal) 2013年11月08日 21:48

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>マルスCEO、そこはネタってことでw
マトモに返されたらリアクションしずらい~www
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年11月09日 00:48

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>エフィたん、$っすね!ヽ[゜。゜]ノプッチョ!
双子・・・もしかしてユーニ(6月)、ユーリ(7月)?彼女達は年子ですえw
ちなみに、その相方は通り名じゃなく、本名で呼ばれてイラってしてますねwええ、彼ですw そして、ミーの両親も名前だけwぷちおーるすたーw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年11月09日 00:52

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思わず仰け反ったけど
考えたら、この位の事がないと
狩人が冒険者にはならないと思うw
続きを楽しみにしてます(^ ^)
Yupa Boleaz (Ragnarok) 2013年11月10日 18:03

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>ユパ様、結構ハードな過去にw
小剣、短剣をリーチで使い分ける、とかどこからヒントを得た、とか、そういう伏線の回収なんかも楽しんでいただけましたらw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年11月11日 00:15

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