729セブンス。白黒の姉妹は・・

うーん。
確かこの街のはずなのだが。
白い髪を伸ばし、結い上げた女性。

東方の着物を着て、ゆったりとした足取りで森の街グリダニアを歩いている。
双子の姉がこの街に来ている、とパールで連絡は受けたのだが。

幼い頃、東方で剣技を身につけた姉は「刀の主」という称号とともに、「雨の村雲」という名刀を授かった。
正直、うらやましいな、とは思ったが。

紅い着物を清楚に着こなした彼女は、そわそわと。
そろそろ、夕暮れも近い。
姉を見つけることができなくても、少なくとも宿は必要だ。
白雪は、とりあえずの宿と夕食にありつくべく、この街で一番のカーラインカフェに行く。
初めての街なのでよく知らないが、ここなら間違いない、といわれる店だ。
「いらっしゃいまっせー!」
元気なミコッテの給仕の少女が元気に。「お一人さまですか!」
「ええ・・。」
白髪の女性はしずしず、と店内に案内されて。
「それでは、少々お待ちくださいませー!」
と、席に案内されて(ちょっと、オーア、声でかい。なによイーリス。このくらいしないと!)と、なにやら聞こえてきたが・・。

程なくして、注文をし、食事を終えると今度は次の問題。
宿、だ。
姉が居れば、そこにやっかいになる気だったのだが、なぜかパールに出ない。
仕方が無いので、宿がありそうな此処に来たのだが。
そもそも、実家から出てきたのは、姉が「面白いから来い。」と。そう言われたからなのに。
東方に住んで10年以上を数え、戻ってきたら先の大戦が。
田舎の集落に移り住んで、父が亡くなってからは姉と二人だったが、姉は何を思ったのか、街に出て行った。
父の墓守としてしばらく住んでいたが、3年も経ち、お別れも済まして出てきたというのに、姉は何をしてるのやら。
白雪は頭を抱える。
手持ちもそれほどあるわけではないが、とりあえず今夜の宿くらいはなんとかなりそうだ。
「ごちそうさま。」と言い、宿の話しをする。
「あー、そうですねー。ここの上の宿、とまり木は冒険者さん優待でしてね。ちょっと今、満席なんですよ。近所の宿もたぶん似たような感じじゃないかなあ・・。」
ミコッテの給仕は申し訳無さそうに。
「イーリス!どっか知らない?」
ヒューランの少女は「んー、ちょっと、なー。」
「すみません、心当たりが・・。」
「そうですか。どこかあたってみますね。」と席を立ち・・・・


夜の街を歩いて周る。
そこに、酔っ払いの男が数人。
なるだけ距離をあけて通り過ぎるように。
冒険者だろうか?街中だというのに鎧を身に付け。
「お、ねえちゃん。おもしろい服着てるじゃねえか。中はどうなってる?」
と絡んできた。
(まったく。こういう輩は・・・)
東方の着物だが、腰には鞘。
一振りの刀。
姉は師から伝説とも呼ばれる名刀を頂戴したのだが。
自分も名刀を佩いている。狐に相槌を打たせた、という謂われのある刀。
「小狐丸」
姉の刀は諸刃。別名「草薙の剣」片刃ではないが、「剣」である。
しかし、自分の刀は片刃で、抜刀術には向いている。

無言で鞘走りをさせる。
鎧の留め具が切り飛ばされる。


ちん。

男達は呆気に取られ、大口をあけたまま。
「黙って立ち去りなさい。」
刹那の剣技を見せ付けられて、男達は慌てて逃げ出す。
「ふう・・・。」

「いや、いいものみたー!」
と。
振り返ると、茶色の髪と肌のミコッテ。愛らしい顔つきだが、好奇心旺盛なのも見て取れる。
「似たようなの、見たんだけどねー?もしかして知り合い?」
とか。
「え?」
「ああ、だから、さっきの。なんていうの?」
「・・・居合い。」
「うん、そういうの使う人知ってるけど、何処の技?」
「・・・東方、だけど。それより、どこでそれを?」
「だから、見た事あるって言ったし。」
「わたしの名は、白雪。もしかして、それは姉の黒雪では?」
「あら?やっぱ知り合いかーって、姉妹?じゃあ、いっか。ついておいで。」
「む?」
「ああ、この街は初めて、っぽいね。言い遅れた。わっちはショコラ。街の情報屋だよ。お安く丁寧な情報を提供するのが仕事でね。もちろん、美味しい情報は買わせてもらうよ。」
(あの侍娘と同レベルの・・・いい値段になるね。これは。)

路地を抜け、河原の近くにある一軒家に。
とんとん、コン。
符丁。
しばらくしてドアが開く。
「あ!お姉ちゃん!」飛びつく。
「な、お前。」
「じゃあ、後はよろしくぅ!」とミコッテの女性は去っていく。
「お前、ここに来い、とは言ったが、あくまで表側、として、なのに。いきなり裏側に着やがったな・・。」
「なんのこと?」
「まあ、しょうがない。紹介するヤツがいる。いいか?絶対にバレるなよ?」
「へ?」
「子供だ。わたしは、その子の叔母、という事になっている。だから、お前も同じ扱いだ。ミスるなよ?」
「え?」
「いいから、演技をしろ。お前ならできるだろう?」
「まあ・・。何をしたの?」
「ガキの親をぶっ殺した。その責任を取るだけ。」
「なっ!」
「だから、いきなり裏側に来た、と言った。」
「そんな・・・。」
「まあ、いいさ。親父もくたばったし、二人しかいない家族にもう一人入ったんだ。二人で面倒見てやろう。」
「・・・・・・そうね・・。」

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