709セブンス。いけ好かない仕事の後に。

グリダニアにある弓術士ギルド。
神勇隊の詰所もあり。
そこからの依頼。
銀髪の青年、キーファーは少し面倒な仕事、か。と。
今からこの依頼を届けに行かなくては。
彼女のいる「家」までは、それほど遠くは無い。

「家」とは、グリダニアの暗部組織で秘密裏の仕事、主に汚れ仕事だ。
だが、今回の仕事は公にも公開されていて、どちらかといえば冒険者連中に任せておけばいいのに。
なのに。
「連中だけでは安心できん。」
などと。
もともとこの「家」は神勇隊所属だ。
「家」には所属がいろいろあるが・・・・
直属からの仕事は請負うしかない。


はぁ・・・。
溜め息は幸せの精霊を殺す、と伝承があるが、「家」に向かう間に幾つ殺しただろう。
依頼の面倒さもさることながら、ベッキィの話しではショコラが持ち込んだ依頼?をこなせず、落ち込んで寝込んでしまっている彼女に、だ。

それも昨日。

そんな状態の彼女にこの依頼とは・・・。
いつものペイアップの裸体とか、そういうのを期待しているワケではないが、むしろその逆で逆鱗に触れかねない。とても気分屋な彼女は時に矢を死ぬほど放ってくる。
正直、あれで死ななかった事自体が奇跡と言ってもいい。
一度なんて、身体の形、まさしく人型に矢を中てられて。
動いたら本当に中る、的な。
そんなのでも、彼女に言わせれば「寝ぼけてた」クラスだ。
同僚のベッキィの話しだと、まだ寝ているらしいから、かなり恐ろしい。
「仕方ない、か・・。」アキラメと共に。
銀髪の青年はトボトボと足を向ける。



「フネラーレ、起きていらっしゃいますか?」
銀髪、漆黒の肌、オレンジの瞳。さらに給仕服と、外に出ればかなり目立つエレゼンの女性。
態度は丁寧だが、ある「キーワード」に触れると怒り狂う。
「ア?」
寝台でシーツにくるまっている女性。給仕のエレゼンとは真逆で、漆黒の髪、白磁の肌。
「もうすぐキーファー氏が来ます。お召し物を。」
素っ裸で寝ていた女性は、「んー?」と言いながら。
「別にイイじゃなイ。ペイ上げろ、ッテ言うだけだかラ。」
独特のイントネーションは彼女がグリダニア、いや、海賊育ちのことで、訛りが抜けないからだ。
「いけません。すぐに用意いたします。」
実は豪腕な給仕娘は、普段愛用している服を一式用意して、出迎え(着替えるまでの時間稼ぎも兼ねて)玄関に。

コンコン。とん。

独特のノックの符丁。
ドアを開け。「どうぞ。」と銀髪の青年を迎え入れる。

「あの・・・。フネラ-レは?」おどおどとした感じ。
「ええ、寝室に居ます。もうすぐリビングに出てくるので、済みませんがリビングでお待ちを。」
「あ、そっか。いやなあ、ベッキィ?」
向うの方から時間稼ぎを、と心の中で拍手。
「はい?どうかいたしましたか?」
「それがなあ・・・。」はぁ。溜め息。また一つ幸せの精霊が・・・
「なにやら不穏ですね?今回の案件はそれほどなのでしょうか?」
「そうともいえる、か。」はあ。さらに溜め息。
「お疲れみたいですね。お茶の準備を致します。どうぞ、リビングへ。」
「いや、構わない。カップが割れる音と火傷を負う君を見たくは無い。」
「なかなか、言いますね。」
「とりあえずリビングには行くよ。フネラーレはそろそろ起きてるのかな?」
「起こしておきましたので。後はちゃんと着替えてくれているか、だけですね。」
「ほい。」(やっぱ、期待はナシか。)


リビングに入ると。珍しく?いつもの黒いチュニックにロングブーツの彼女。フネラーレ。
卓につき、自身で淹れたのであろう、香茶をすすっている。
「なニ?」
その分、剣呑な空気が・・・・・

「いや、その。依頼です。」
「知ってル。」
「では・・。森の北にイクサル族が侵攻してきまして。」
「デ?」
「その隊長、ネズル・カットラン、なる者の狙撃です。」
「はァ?そんなの、冒険者に任せろヨ。」
黒髪の美女は不機嫌きわまりない。
「いつかラ僕は街の便利屋さんニなったンだ?」
「いえ、それが・・。目標は常に配下をはべらしていまして。斥候と近衛とを。しかも、どこで覚えたのか、「精霊結界」を用いて実力を下げる、という事まで。
どうにも討伐に失敗した冒険者がそれなりにいまして。こっちに依頼が来た、という事です。」
「冒険者どもニやらせとケ。」お茶を飲み干す。
「いえ、これは神勇隊ないしは弓術ギルドからの正式な依頼です。断ることはできません。」
「チ。」
不機嫌な彼女はもう一度寝室に戻ると大ぶりの弓とダガーを腰に。
「ショコラに言っとケ。ついでがあレば取ってきてやル、って。」




森の北。
あれカ。
イクサル、と呼ばれるトカゲにも似た連中。
そこでは冒険者達が戦いをしている。おそらく斥候だろう、数体がバラバラに動いている。
そしてもう少し奥に。
すると。
身体が急に重くなる。
これガ結界!
フネラーレは重い身体をできるだけ柔軟に活用しながら。
木々を縫い、標的を見つける。
「侵奪」なんぞという偉そうな名前の一際大きいイクサルを見つけ。
「見つけタ。」
金色の瞳で「ターゲット」する。もう、終わりだ。

強弓「コフィンメイカー(棺桶製造者)」を構え、弦を引き絞り。
放つ。
胸に一撃。
膝を着く的の頭に一撃。

「まったク。この程度、冒険者で十分ジャないカ。」
移動術式を使い街に帰る。

そこから「家」に戻り、文句を垂れ流す。


「あ、ソレかラ。ショコラに土産。」と、途中で仕留めたキノコをいくつか。
「ご苦労様です。フネラーレ。」
「あのボンクラにはペイアップを言っテおいテ。僕は疲れタ。寝ル。」
まだ陽も高いのだが・・・

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