708セブンス。女子会その後。

「えー!?」
素っ頓狂な声を発したのは魔女こと、レティシア。
グリダニアのカフェ、カーラインにて。
「あ、あの?」と。
ステンドグラスの淡い光の下、オレンジ色に光る髪のエレゼンの女性が。
「そ、そんなに、ていうか、そこまで?」
「ミー。今の今まで男性経験が無いのはまあ、ええ。でも恋愛経験が無いのはやっぱ、寒いで。」
「そうかな・・・?」
ミーランはなんだか凄く落ち込み。
「うぐ。」と、ハイランダーの少女も落ち込む。
「なんや、ユーリもそういやあらへんかったな。」と姉。
こちらは10人以上の経験が。
なんせハイランダーの女性は少ない。それゆえモテるのである。特にユーニのような小柄な女性は稀なうえ、性格はともかく見た目が可愛いのでなおさら。
妹のユーリはハイランダーらしくしっかりした身体つきで、顔は愛らしいのだが奥手なため、言い寄られても中々応じれなく、恋愛には至っていない。
「君ら、恋愛はしないとねー。」と、魔女。こちらは早々に結婚しているので旦那しかいないのだが。
「そうねえ。」
こっちも同じく。隊長スウェシーナ。
「うんうん。」と赤毛のエレゼン、ナルヴィまで。
「ほんまやな。」とは、黒髪のエレディタ。
彼女は元々ストリートチルドレンのチームリーダーの恋人だったが、ふとしたことで彼をチームから追い出してしまった。理由は聞いてないが・・・・・
「うちは。まあ。」実は結構、尾を引いているらしく次の恋愛には至らない、というか、追い出した彼を探しているような。

そんなこんなで女子会は進み。

結局,解散するまでミーランとユーリはイジられつづける事に。


「うー。」
「まあまあ、ミー。そのうち見つかるって。」と相棒が。
半泣き。相棒に慰められ。
「いいもん。このままでも。」と意固地に。
「そんなんやから、あかんにゃで?」
「うん・・・。」


「お姉ちゃん・・・・。」
「なんや、ユーリ?」
「その・・・。どうやったら?」
「簡単や。「うん。」て返事したらええ。」
「え?」
「向うから来て、自分が気に入ればその返事だけでええ、て言うてんのや。」
「そ、そんなもん?」
「せや。でも、誰でも彼でも「うん」言うとったら、ただの娼婦やで?その辺はキチンとせんとあかん。」
「うん。わかった。」


「あの子達、かわいいわね。」
「レティ、イジりすぎ。」
「そう?スゥも結構突っ込みいれてたじゃない。」
「わ、わたしは、その。いい相手が見つかれば、っておもって。」
「ま、確かにね。ウチの娘もあんたんとこも、いい伴侶が見つかったことだしね。」
「そうね。」
「まあ、ウチの息子はいまだゼロだけどね。」
「あー・・。ナトゥーラ君ね・・。」
「あいつは女性の機微、というか、空気読めないから。おそらく無理。」
「ヒド・・。」



「ただいま。」
「おかえり、ミー。」
「おじゃましまーす。」
「どうぞ、エレディタちゃん。」
メーヴェが出迎える。
アルフレートの家は今のところ借家で。
部屋自体が足りないので(リビングと寝室が一部屋)、二人は寝るため、というよりも食事に立ち寄っただけ。
食事の後は「とまり木」に寝にいく予定なのだ。
アルフレートは用事があるらしく、食卓にはいなくて。
「お父さんは?」
「ああ、まあ、ね。」と母。
少しでも稼ぎに、とはちょっと言い出しにくい。
「ふうん。」と娘は小首を傾げる。
(この仕草だけでも、十分男ウケするやろうにな。)と思い相棒はもったいないなあ、と。
そして。
かつての恋人を思い出し、少し沈み込む。(グラナート・・。)
オレンジ色の髪、瞳をした快活な少年だった。
名前の由来ともなるガーネット色。
恋に落ちたのはチームに入ってすぐ。
当時は黒い髪は長く、今ほど皮肉っぽくなく素直な少女だった。
だが、一件の事件があり。
今から思えば、自分が短絡すぎたのだ、と反省している。

チームのひとりが海賊に連れ去られて。
その娘を取り返しに行こう、と。エレディタは言ったのだが。
「だめだ。皆を危険には晒せない。残念だがあきらめよう。」と言われ。
「それでもあんたはリーダーかっ!」激昂し。
「リーダーだからこそだ。」
「なんやてっ!勝負せえっ!」

結果。勝ってしまった。いや、勝たされた、か。
彼はそのままチームを去り、行方は分らない。

その後すぐに海賊相手にケンカを売りに行ったが、そもそも何処の海賊なのかも分らないまま引き返すハメに。彼の言い分は正しかったのだ。
ヘタに別の海賊相手なぞしていたら、少年少女だけのチームでは到底、話しにすらならないだろう。
スゴスゴと帰り。
自慢でもあった黒髪にハサミを入れた。
バッサリと切って、教訓にした。
自分がリーダーになったのだ。この事を忘れることが無いように。と。

「エリ?大丈夫?」
「ん。ミー、ちょっと思い出してなあ。気にせんといて。ありがとな。」
心配げな相棒に微笑を返し、言葉を続ける。
「明日はもう一回練兵所に行こうか。なんや、依頼とかまたあるかもしれへんしな。」
「うん。そうだね。」
「ふたりとも、仲がいいわね。」とメーヴェ。
「もちろんよ。」
「せやな。」
食事の後、とまり木に向かいながら。
「エリ?」
「ん?」
「明日はがんばろう!」
「ああ、せやな。」
拳をあわせる。

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