706セブンス。あるミコッテの日常。

森の古都、グリダニア。
その玄関口にあたる場所にはカーラインカフェという冒険者のたまり場があり、その階上には「とまり木」という宿が。
しかしながら、冒険者ならば優待される宿だけに、一般人ではなかなか。
それなりのお値段が。
しかも、ちゃんとした設備だけに文句のつけようはないのだが、さすがに毎日そこで暮らそうとすると、普通にアパルトマンを借りて月払いの方が経済的ではある。
設備に文句さえつけなければ。

「ふぁ~ぁ。」
大きなアクビと共に大きく伸びをする。
尻尾もついでにピンと伸ばし、ミコッテの女性は眠気の残る目をこする。
茶色い髪、茶色い肌。碧眼の彼女、ショコラは遅めの朝を迎える。
ここ最近は仕事が減って(いや、実際は増えたのだが)いまだボゥっとする頭を振りつつ。
寝台からもぞもぞと抜け出し、目を覚ますために顔を洗いに。
ついでに水浴びでもしてこようと思い、ふと。
「あ・・・」
ここは安宿でアパルトマンではない。
水浴びがしたければ、別料金で共有の水浴び場に行かなければ。
「裏」の情報屋である彼女は、あちこちの安宿を日替わりで使っている。
同じ宿でも、毎日部屋を変えるほど。
「あー・・・。」
今の宿はそういうシステムなので、「家」で水浴びさせてもらおうと。

実はもともと豪商のお嬢様だったのだが、結婚の材料としか思われていない事に気がつき、家を飛び出して、その類稀なる記憶力を活かして情報屋に。
腕っ節があるわけでもない、術式など習ってもいない自分が生き抜くにはコレしかないと。
というわけでグリダニアでもっぱら活躍中なのである。
ただ、「裏」稼業なので常に身の危険も配慮が必要というわけで宿を入れ替えての活動に。
おかげでピッキングや逃げ足などのスキルは上がっている。うれしくは無いが。
まっとうな情報屋、としても良かったのだが、やはり報酬が別格だ。
趣味と実益を兼ねた屋台探しなんかも、先立つものがいる。もちろん宿代も。
そういうことで顔を洗うと、服を着てカバンひとつの荷物を持ち。
宿を後に。

「家」に行く前に軽く朝食を屋台で。
ソーセージを挟んだパンとコーヒーを食べながら、屋台で売っていたゴシップ紙を買い片手間に眺めながら。
「ふうん。」
わっちが売った情報ばっかり。
そこで売っていない情報を見つけ。
「を!」
その内容とは。
「黒衣森の美味しい食材!」と題されたコラム。
いろんな食材がリストアップされていた。
「こ!・・・コレは!」
美味しいものに目が無い、さらに美味しい屋台を探すのが半分ライフワークの彼女は目が釘付けに。
だが、肝心な事。
それは森に入って食材を探し、あるいは魔物を倒し、または回避し、と。
かなりハードルは高い。
戦闘が出来ない彼女としては、この記事はとんでもなく魅力的だが、自分では到底こなすことはできない。もちろんバザーや冒険者から買えば何とかなるだろうが。
こんな記事が出ている以上、値段は跳ね上がっているだろう。
「こうなれば。」
もはや一択しかない。
「家」に居る彼女フネラーレに頼むしか。
他にも「家」はあるが。
やはり馴染みの相手に頼むのが一番かと。
「いよっおし!」
パンの最後の一切れをコーヒーで押し込み、勘定を払うと尻尾を振りながら「家」に向かう。

この「家」というのはグリダニアの暗部といってもいい。諜報から暗殺、破壊工作やその他。
公にはできない事を一手に引き受ける集団。だが、「家」同士はお互いの顔や名前すら知らない事がほとんど。だが、マネジメントをしている青年と、このミコッテは全部を知っている。
本当はただの情報屋が知っていてはいけない情報なのだが。

「フネラーレ、いるかなあ?」
ドアをノックする。
特別な符丁でもってノックしなければならないが、お手の物だ。
ドアが開き、銀髪、漆黒の肌のエレゼンの女性が出迎える。
「お嬢様。おはようございます。本日はどのような御用でございますか?」
給仕服の女性は丁寧に。
元は彼女の家に仕えていた女性。兄に救われ、その後自分付きに。
ひょんな事から、この「家」にやっかいになっている。
「あ、ベッキィ。ちょっと水浴びに。それと、フネラーレにお願いが。」
「かしこまりました。お嬢様。ご用意いたします。それと、フネラーレに案件とは?」
「うん、ちょっとコレ見て。」と、ゴシップ紙を
「はい。こちらの調達でございますね。伝えておきます。では、どうぞ中へ。」
案内され、水浴び場に。その間にさっきの件をフネラーレに伝えているだろう。
水浴びを終え、タオルで身体を拭き終えると服を着替え。
「ベッキィ、んじゃよろしく。」
と出て行く。
「いってらっしゃいませ。お嬢様。」
見送られ、「家」から出て・・・
「んーむ。どうしようかなあ?」
とりあえずは、情報収集かな。
本来の業務に。
まずは、最近評判になっている蛮神の攻略か。
どうにも「真」といわれる蛮神の本来の姿の目撃が相次いでいる。
今更、かもしれないが情報は多いに越したことは無い。
「お仕事、お仕事。」
ショコラは尻尾を振りながら冒険者の噂を探しに行く。


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なるほどホントにただの食材探しw
フネラーレご苦労さま。
Ephemera Mitoa (Durandal) 2013年09月22日 07:45

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>えふぃたん、ホントにw
そんでもって手ぶらで帰ってきたフネラーレにベッキィがブツブツ言うという事にw
「フネラーレ、あなたがそこまで無能だとは知りませんでした。」
「うッセ!じゃあお前ガ行け!」
「ワタクシには様々な用事がございます。」
「あァ、皿を割ったり、カップを割ったりダろ?」
「失敬な。」
「ゴミばっか増やしやがっテ。」

などw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年09月22日 10:50

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