694セブンス。邂逅の手前。

「なんやて?」
黒髪を短く刈った女性。
スタイルもいいし、今の怒ったような顔つきではなく、笑顔でいれば魅力的だろう。
もっと言えば、髪を伸ばせばさらに。
だが。
「ミー?」
今の彼女はご機嫌ナナメだ。見た目がいいだけに、怒ると迫力がある。
「いや、その。エリ?」
返した女性はエレゼン。
フォレスターらしく、明るい髪と肌。
光の加減でオレンジから赤色に変る、同性からみてもうらやましい髪。
以前は長く伸ばしていたのだが、今は短く首筋あたりまで切ってしまっている。
相棒のエレディタとしては、もったいない、とは思うのだが、「覚悟、よ。」と、バッサリ切ってしまわれては文句のつけようも無い。
だが、今回は文句をつける。
「ミー、そのね。依頼を受けるんはええ。かまへん。でもな。」
一呼吸。
「不審者を見つけてくれ、なんて、なんの情報もあらへんやんか!」
「そういわれても。」困った顔で返され。
あきらめた顔のエレディタ。

バノック練兵場。
グリダニアの少し南部に位置する鬼哭隊や、神勇隊を育てるための施設。
たまたま近寄る仕事(荷物のお運び)があり、済ませてしまってから。
エレゼンの女性が隣から居なくなり、ん?と
視界をめぐらせると、小屋のすぐ手前で鬼哭隊?(仮面をつけていた。)の男性と話をしている。
そして、戻ってきて、開口一番こうのたまったのだ。「森に不審者がいるらしい。見つけて捕らえてくれ。ってお願いされちゃった。」笑顔で。
目眩がした。
クラッと一瞬。
このエレゼンの女性騎士は、正義感と義務感が強い。
だからこそ、騎士なんてジョブを選んだのだろうが。
ただ、温かい家庭に育ったせいだろうか?どうにも世間知らずだ。
冒険者として、それなりに場数は踏んでいる。
でも、この性格というか・・・これは、一向に改善されていない。
自分はスラム暮らしだったがゆえに、常に相手の裏の顔を見てきた。
イヤな言い方だが、まず相手を疑うところから。
ただ、最近はこの相棒の影響か、少しお人好しになった気もする。
そして、この相棒は掛け値なしに「いい人」だ。裏なんか無い。だから、自分がしっかりしないと、この相棒はいつの間にか娼婦にされているだろう。
「ミー?」
「なーに?エリ。早速探しに行こう!」と。元気よく。
「お前な、もうちょっと。ちょっとだけでええ。よー考えや?ええか?不審者なんて、そんな曖昧なの、見つかるか?
言っとくけどな、うちらも不審者やで?ミーはまだ実家があるさかい、親もおるやろ。あのおっさん。
せやけど、うちはリムサのスラム育ちで、親も誰やかわからへん。
あの鬼哭隊のオッサンもミーの見かけだけで冒険者や、なんて、思っとらへんで?べっぴんが来た、くらいはおもっとる。
仮面で表情がわからへんけどな。そんな程度の依頼、うちに相談も無しに受けんなや。」
「あ!ごめん!エリ。今度から気をつけます・・・・。」うなだれる女性騎士。
「まあ、しゃあないわ。受けた以上はやらんとな。それが冒険者いうもんや。」
「うん。ありがとう。」
「もう、ええさかい頭下げるんはやめや。うちらは相棒やろ?ちゃうか?」
「うん!そうだね!エリ!頑張ろう!」
「せや、ミーは笑とるのが一番似合とる。いつでも笑いや?」
「よっし!」
「まずは情報集めやな。しかし何から集めたらええんやろな。」
「うーん?さっきの鬼哭隊のガルフリッドさんが言うには、もうちょっと南東?だったかな?で、見かけたって話しがあったんだけど。」
「それ、はよ言いや。どのへんや?」
「んーっと、川があって、その源流?が滝なんだって。その裏にある広場らしいよ。」
「滝、ね。ちょっとそそるわあ。」
「へ?」
「いやあ、水浴びしたくならへんか?」
「う、それは。」
「グリダニアの宿は水浴びし放題やけんど、他の街は公共浴場あたりやないとできひんやろ?」
「そういや、ウルダハの浴場ってけっこうお値段するよね。ビックリしちゃった。」
「ただまあ、その川に魔物がおったり、通りすがりの冒険者がおったら、見物料もらわんとあかんな。」
「あー・・・・それは・・・。その。いるっぽい、よ?」
「は?」
「何種類か。」
「なんやそれ。」
「討伐手帳にある、エフト族とか、それなりに。で、当然だけどそれ目当ての冒険者も来るみたいだから・・・。その・・・」
「素っ裸で水浴びしてるのは只の阿呆って事やなあ・・・。」
「そうなるわね。はぁ・・。」溜め息。
「溜め息ついとっても仕事にならへんで。さっさとやってまおう。」
「うん。」

二人は地図を頼りに進んでいく。




「なあ、イダ。どう思う?」モノクルをかけたララフェルの術士。
「うーん?どうかなあ?クコロ・コップは?」白いシャツの陽気な口調の格闘士。
「ボクではなんとも言えないクポ。」白い妖精。

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