688セブンス。こんな二人。

深緑に囲まれた都、グリダニア。
その中でも有数の、いや、一番有名とでも言っていいカフェ。
カーライン。
そのエレゼンの女主人に対し。
緑の給仕服のミコッテ、ナオは。
「ご主人、最近ヒマですね。」と率直な意見を。
「ナオ、そういうな。僕でもそれは感じている。ただ、こういう時にえてして来るんだよ。」
「はあ?なにがでしょうか?」
「事件だよ。」
「そういうものでしょうか?」
ミコッテの少女はかなり冷めた視線でものを言う。
それもそのはず・・・・
彼女は。
先の第七霊災で家も家族も全て失ったのだ。
着の身着のまま、このカフェに逃げ込んできて。
今はカフェの主人のこの女性の家に間借りしている。
内縁の夫もいるが、普段は別居のため女二人での生活。
ただ、この子は潔癖症なのか、掃除や洗濯の類は自身でやらないと気がすまないらしく。
今までは当然の如く済ましていた仕事を取られている。
「ご主人、今日の買い出しはオーアさんと行って来てもいいですか?」
意外とオーアとは仲がいい。
ハデに殴り倒しているわりには。
(よくわかんない。)
年頃の少女とは、そういうものか、と。
「そうね、ランのとこにも行ってきて。」
「災厄」の名を持つミコッテだが、それは「超」が付くほどの天然ゆえだ。決して人当たりは悪くないし、悪人でもない。ただ、その「超天然」が巻き起こす災厄ゆえの「カラミティ」なのだ。
「はい。オーアさんが来ればすぐに。」
カフェはのんびりとした時間を。




「ミー?」
黒髪の女性。
髪は短めに刈っていて、その態度からも男性っぽさも。
言えば当人は怒るだろうが。
「ん?」と。
光の加減で髪がオレンジから赤色に変るエレゼンの女性。
今は夕暮れに近いので、どちらかと言えば赤い。
ウルダハの街並みを二人して歩いていたのだが。
「どうしたの?」
「今日の宿なあ、違うトコにせえへんか?」
「は?」
「声、小さしいや?」小声。
「へ?」
「つけられとる。」
「え?」
「だから小させえ。」
「ああ、ごめん。」
エレゼンの女性は本当にこういう事にうとい。
エレディタは、まあ、しょうがない、とは思っているが。
彼女はスラム出身だけに、こういう危機には聡い。
自分がしっかりしなければ、この相棒は今すぐにでも娼館に連れて行かれる。
さすがにそれは寝覚めも悪いので、目を離さず見ているのだが。
そして、自らを「情報屋」とのたまっているヒューランの男に会いにいく。
ワイモンド、と名乗るヒューランの男だが、怪しいことこの上ない。
ブルーのサングラスにグレイの髪と、目立つこと請け合いだ。
ただ。
クイックサンドの女将と違うところは、彼は買った情報を「売らない」ということだ。
女将は「買った情報」すら商品にしてしまうが、彼は守秘を通す。
そういう意味では信用はできる。
「今夜の宿、どこがええ?」
「つけられてるからか?」
「話が早いやんか?」
「砂時計じゃダメか?」
「たぶん、そっち狙いやわ。」
「砂時計で悪さしたら、この街じゃ生きていけないぜ?」
「逆ね、誘い出したいってコトやわ。」
「なるほどね。で?」
「で?とは?」
「後ろの男の名前とか知りたくない?」
「お値段は?」
「まあ・・・100ギル、ってところかね?」
「しょうーがないわな。で?」
「で?」
「宿は?」
「ああ、そっちかい。こっちも100ギルでいいぜ。」
「まとめてだしたるわ。はよ抜かせ。」
「男の名前はアイルバート。グリダニア出身のちょっとした有名人さ。ま、あんたら相手だと正直相手にならん程度だと思うがね。」
「ほんで?」
「宿は・・女性にオススメしていいのかね、こんな襲いやすい宿を。」
「いいから、言えや。金はだしたやろ?」
肩をすくめながら情報屋は。
「アヒルの庭亭、だね。安宿の中じゃあ一番拉致が多いって評判だ。ま、新入りの冒険者が一番のカモらしいけどな。
いっそのこと、アヒルじゃなく、カモにすりゃあ分りやすいんだがな。ちなみに拉致られたヤツは「商品」として売られてるからな。気をつけろよ?」
「うちらが商品になるわけないやろ。まあ、おおきに。」
「売られてたら買いに行くぜ?」
「そりゃまいど。ミー、いくで。」
「え、すんだの?」
エレゼンの女性はサッパリな会話についていけず・・・

ヒューランの相棒は手を掴むと移動術式を。
「え?」

グリダニアへと。
「アイツが追いかけてくる、ていうのも想定内やな。」
「へ?え?」
「カーラインの止まり木もええけど、迷惑かけれへんしな。ハーストミルあたりにしとこうか。」
「え?えええ?」
「ミー?うちら、賊に目つけられてんねんで?わかってる?」
「なんとなく。」
「せやさかい、わざわざ情報屋に行ったんやんか。後ろに賊がおったから。」
「?」
「わざと聞こえよがしに宿の話までしてや、そんなトコ泊まるワケあらへんやろ?せやさかいや。グリダニアまで跳んだんや。
相手もヤル気やったらついて来るやろうしな。そうなったら、返り討ちにしたるだけやけど。ミーももうちょいっと考えんとあかへんで?」
「う、ごめん。」
「まあ、そこがミーのええとこでもあるんやけどな。」


ハーストミルはもうすぐだ。

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