563書き物。第七霊災 続き四

はじめ見た時は信じられなかった。
赤毛の女性に背負われ、意識を失った親友の姿が。
天魔の魔女といわれ、その名を各地に馳せたその姿が。

「レティ!」
司令、こと中央隊、そして鬼哭隊隊長のスウェシーナは背負われたグレイの髪の女性を受け取る。
この時に左腕が骨折しているのに気が付くが、痛みなどなんとでもなる。

「じゃあ、届けたよ。」と黒髪のミコッテと赤毛の女性は去っていく。
「あ、ありがとう!」とだけしか言えなかった。
しかし・・・。
傷は癒されたようだが、目を覚まさない。
ウルラ君も気になる。
「ちょっと!レティ!目を覚まして!」泣きながら声をかける。
「あんた、魔女なんでしょ!?今すぐウルラ君が何処にいるか教えてよ!」
沈黙で応える魔女と云われる女性。その体はぐったりとして、呼吸と鼓動だけが生きている証といえそうだ。
「司令!帝国軍が撤退の準備を始めたようです。」
涙で顔をくしゃくしゃにしながら、親友の女性を抱きしめた司令は。
「よろしい!わが軍も撤収する。怪我人を優先的にだが、撤退のための先陣を左翼に依頼しろ。
後衛部隊は中央に配置、怪我の治療をしながらだ。わが鬼哭隊は殿を務める。」護ってナンボの鬼哭隊だ・・・。

「はっ!」部下が伝令役の息子に伝えに行った。

しかし・・・。
「ウルラ君・・・。」親友の娘婿が心配でならない。捜索もしているはずだが・・・。
そして、腕の中の親友。
厚手の布鎧は血にまみれ、腹部に大きな穴が開いている。
「まさか、とは思うけど・・・。こんな傷で戦場に突っ込んだの?」
見慣れた傷、というか。槍だ。重さもかなりあるであろうこんな武器を腹に穿ったまま?「あんた、本当に魔女だよ・・・。」抱きしめる。

「司令!準備が整ったそうです。」
息子、ネルケ。
「あ、かあさん・・。その人って・・・まさか。」
「いいわ、了解した。そしてこの人を怪我人達と同じグループで。そして、あなたが運んでちょうだい。」
「はい!了解しました!」
その時、オレンジ色の髪のミコッテが。
「ネルケ、どうかし・・・きゃあああ!レティシアさんっ!!!」
口元に手をあて叫ぶが。
「馬鹿者!ここは戦場だ。撤退戦で余計な不安を掻き立てるな!」
叱責する。
「はいにゃ!司令!」
「とりあえず、全軍建て直しが出来次第、退くぞ。左翼のマナはなんと?」
「はい・・。とりあえずは引き受けてもらいましたが・・。アレが・・。」
上を指さす。
「確かに。それで?」
「自分が殿で勤めたほうがよくはないかと。」
「いや、先陣を頼む。とりあえずは今必要なのは時間だ。先陣に魔物共を駆逐してもらい、後衛は回復を。そして我等は崩されること無く。」
「はい。」
「守り抜く。それが鬼哭隊だ。」
息子夫婦がそろって返事をし、改めて伝令に走っていく。
「ま、あいつもそれなりにはなったか・・・。」
しかし。親友はいまだ目を覚まさない。
「レティ・・・・。」そして金髪の青年・・・。


その時。凶龍がまたしても咆哮を・・・・。

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