534書き物。ある日の夕暮れ。

「いやーマユちゃんとこのお料理って、ほんっと、美味しいよね。」
「ふふーん。あたしもこのくらいはできるんだよ?」
「なぬー!」
「マリーは料理はイマイチなのかい?」
三人の会話が弾む。

フェリードック。
ザナラーンの西端にして、リムサ・ロミンサの玄関口。
そこに屋台を構える父は、この時間になるといつも夕陽を見ていた。
(母さんが心配?・・)そう言いかけて、ぐっと押さえ込む。
当たり前だから。
母さん・・に限って、・・・・・だから・・・。

「あ・・・。」
ふわふわした金髪の少女。マルグリット。親友にして、今となっては義妹になる・・年上だけど。
が。
いきなりうろたえだした。
「うそ・・・。」
彼女の表情は、顔色はどんどん悪く・・・・
「どうしたの?」と聞いてみるが、彼女の言葉は無い。
よく見ると。
リングにつけていたリンクパールが鈍い色になっている。
透明に近い乳白色のパールの中に旗章がある。
これを使い、伝心などをするのだが。
この色は・・。
「ちょっと見せてっ!」
あたしはついつい、彼女の手を掴み。
「これは・・・。」
「なに?なんなの?」と懇願するような表情で金髪の少女。
「マリー?よく聞いて。リンクパールが割れる事って、けっこうあるの。そのリーダーが「ヤメタ」とかそんな理由で割ったり。
メンバーが不適切だと判断して、削除したり。後は・・・・リーダーがお亡くなりになったり・・・。」
呆然とする彼女。
「マユちゃん、冗談がすぎるよ。ないない。それだけは無いって。やめた、ってベルが決めちゃったのかも。
休止するとか言ってたけど。ちょっと忙しすぎて落として割っちゃったのかも。
そうよ、わたしとファーネがまだいるのに解散?それこそ無いって。」
少女は懇願する。

「マリー。」と傍らの青年。
「よく聞いてくれ。」

あたしはこのやり取りを物語でも聞いているかのように・・・悲劇の。

「風見鶏の3人が戦死した、と今。報告がきた。」
「え?ウソでしょ?」
取り乱す彼女。
「いや・・・。俺のパールも壊れた。おかしいと思って確認したんだ。戦地には実家の私兵も入ってる。そして弟から・・。
シュナーベル、ル・シュペヒト、グリュックの死を確認した、彼らの死を悼みます、とさっき、な。」
「あはは、冗談きついよファーネ!」
彼の襟首をつかみ。
「ウソだよね?ウソでしょう?やりすぎよっ!」とそのまま首を振る。
襟首をつかみ、振り回されながら彼は言った。

「マリー・・・。そのくらいにしておいて・・。」
これしか出せる言葉が出なかった。

「そんな・・。無いよ。そんなの!あっちゃダメだよ!」
少女は泣きじゃくりながら。

あたしは声もない。

「今は彼らの死を悼むとしよう・・。マリー?」
「ふぇ?」
「ベルは言ったよな?「LS風見鶏は一時休憩」だったかな?休止だったか。」
「うん・・・。」
「だから休止してるんだ。だったら。俺達で勝手に再開しちゃってもいいんじゃないかい?」
「え?」
「ウェッターハーン再活動。いいじゃないか。なんせリーダーのベルは寝ちまったんだ。起こしに行かないといつまで経っても再開しないぜ?」
陽気に笑う彼にあたしも微笑む。
「だろう?」
彼も微笑みを返し、いや、イタズラを成功させたくらいの最高の笑みだ。
「まあ、とりあえずはウマイ飯を食えたんだ、そこんとこをいろいろ感謝してだな。」
「ありがとうね、言わせてもらうけど、自慢の料理なんだから!」
「さすがだ!」


こっそり・・・
「ね・・・ウルラと母さんの情報って聞いてる?」
「悪い、そっちはまだ聞いてない・・。そのうち入ってくるだろうが・・その場合はいい情報じゃない。
今聞いてるのは戦死者報告だけだからな。3~400人くらいか。その中に君の夫と母君ははいってないよ。」
「そう・・・」安堵と共に不安も。
そして、不安を押しつぶしながら。
「分かったら教えて。どんな事でも、どんな結果でも受け入れるから。知らない、なんてイヤ!だから・・。」
「ああ、了解。・・・・強いな、君は。」
「イジメに馴れただけよ。今回のは最高のイジメだけど。」
憎まれ口を。でも。


でも。そうしないと泣き崩れてしまう。
マリーも卓に突っ伏して号泣している。それを見て、なんだ?みたいな客もいるが、今回だけはその客が恨めしい。

「うん。ありがとうファーネ。あたしは泣かない。だから分かったら教えてね。」
両目から・・・・

「あれ?」

「今は泣いてもいいと思うよ。」優しい言葉。

「あなた、そうやってマリーを口説いたんでしょう!」
「バレたか。」にやり。

溢れ出る涙を拭わず、いや、拭いだらダメだ。この涙は追悼じゃない。
再会のための、切り札だ。
そう。

でも・・風見鶏のメンバーの・・・
そう、これは戦争に従事してしまった全ての人への手向け。
そして、帰還してくるであろう全ての人への。

涙は止まらないが・・・。

「まったく。口説くところが彼に似ているわ。そこがマリーのポイントだったのね。」

「あらま。そいつはおもしろいな。ウルラ君とは楽しい友人になれそうだ。」
「そうね、帰ってきたら気の合い具合にビックリでしょうね。弟クン。」


----------コメント----------

うん・・・きっと・・・悪い冗談だったんだ・・・ソウダソウダヨ・・・。
Fizz Delight (Hyperion) 2013年04月04日 11:27

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>フィズさん。そうきっと・・。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月04日 12:28

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「ふぅ、やれやれだにゃ」
「奴ら行ったか?」
「おう。」

なら、どれだけ良かったことか・・・

で、
「リレイズ入ってるんで、ちょっと待つにゃ」
「お、さすがw」
「おう。」
(´・ω・`)ショボーン
Eraru Control (Hyperion) 2013年04月04日 12:53

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座談会の時に死んだ導師は来てたけど、あれは精霊のおかげ?

作者本人も出てる舞台裏的な話だからもしかしたら死者も登場するかもね。
Marth Lowell (Durandal) 2013年04月04日 13:04

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>エラさん
体の半分飛散してるのに復活もちょっと怖いっすねw

>座談会?
そんな回もあるのか、知らなんだ(´・ω・`)
Fizz Delight (Hyperion) 2013年04月04日 13:16

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マリーとくっついたの、ベルだと思ってた。思わぬ勘違い。
それだったらもっと悲劇になってるよね。
Sanshi Katsula (Hyperion) 2013年04月04日 15:41

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>えらっち。そうだったら・・・・
今回の戦死者としては、ルーは可哀相な最期だったとおもう・・。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月04日 21:34

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>マルスCEO、そうですね。
というか、森の一部になったというべきですか。
存在だけが残ってるという。
座談会では過去の人も、お亡くなりになった人も登場する予定です。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月04日 21:36

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>フィズさん、座談会は・・
実は結構?数回やってますw過去作を是非ご鑑賞くださいw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月04日 21:36

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>三枝師匠、じつは。
マリー的にはかなり焦っていて(周りで年下の女の子が結婚しまくりw)
なのでベルを見た時に、ちょっとときめいたのは本音ですw
でも、あまりの朴念仁っぷりと、ルーの存在がベルとの距離を縮める事に繋がらなかったというw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月04日 21:39

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