515書き物。戦場での・・・・。

古戦場、モードゥナ。
薄暗い天気は時刻を正確には計らせてはくれない。
そして、漂う・・薄紫といってもいいような靄。
瘴気といってもいいのだろうか?臭いは・・・・無い。
いや、ありすぎて無い様に錯覚してしまう。
澱んだ、それでいて確実に浸食されていく。そんな臭い。

「なァ?」
長く綺麗な黒髪の少女は、この場にそぐわない白磁の肌で。
「どいつかラぶっ殺しテやろうカ?」
と、同じくその美貌にそぐわない台詞をさらり、と吐き出した。
「まあ、待て。全てが全て帝国兵ではないだろう?」
同じく黒髪のエレゼンの術士は、あまりにも物騒な少女をたしなめるが。
「威力偵察、っテ、敵を殺して周るンだロ?じゃァいいじゃねェか。」
「若干の違いを感じるが・・・。偵察の方の任務が抜けている気はするな・・。」
「ソレはアレだろ?アンタ・・ええと・・・アル・・?」
「ああ、アルフレートだ。アルでいい。友にはそう呼ばれている。」
「じゃァ、アルフレート。アンタ、この場で一番ヤバイのッテ何だとおもウ?」
「身の危険、だな。何も敵は帝国だけじゃない。魔物だって跳梁跋扈する戦場だ。それに・・。」
北を指差し。
「あれを見ろ。知っているか?」
薄暗いような紫煙のような靄が少しの風で流されて、古戦場と呼ばれる所以となった巨大なオブジェが見え始める。
「ナ、ナンだあれ?」
「ミドガルズオルム。世界樹の蛇と称される竜族の主のひとつ。
かの竜王は帝国の船団と激しく討ちあい、その身をもって帝国最大と称される大戦艦と共にこの地に果てた。
その際にこの湖ができた、と謂われてはいるが・・。」

大きな湖の真ん中に屹立するように、大きな塔が。いや、あれは塔ではなく船、ということか。
そしてそれに巻きつくような奇怪なオブジェこそが、かの竜王なのであろう。
今はまだシルエットしか見えないが、やがてその姿を観れば驚嘆の言葉も出るのかもしれない。

「まあ、こんなヤバイ場所だ。できるだけ穏便に偵察を済ませたい。
君の好戦的なスタイルはキライじゃないが、なんでもかんでも、というわけにもいくまい。
まずはちゃんとしたスタッフと連絡が取れなければ。ついでに言えば、パールでの伝心は俺が受け持っておくよ。
もちろん、君もすればいい。情報は多角的に視て精度の高さが重要視されるからね。」
「アル?だっケ?なンだか堅苦しいネ。僕の彼氏もたまに堅苦しイんだヨ。エレゼンって、みんなそうなノ?」
黒髪の美少女は呆れ顔で。
「いや、そうとも言えないが・・・多分。君の彼がどういった職かは、聞き及んでいるが。豪快なイメージがあったんだけどな・・。」
「嫌われ役で、折衝役の、そのくせソレが好きナちょっと気の毒ナ男。」
「その割にはノロケ話に夢中じゃないか。」
「ナッ!」顔が真っ赤になっている。年頃の乙女と言うのはこの表情がとても素敵だ。
「破壊を命ずる!我ファイアスターター!発火を命ずる者なり!破壊もて、その火を現せ!」
「エ?」
巨大な火球が少女の眼前に現れ、そして転移して爆炎を撒き散らし。轟音と共に魔物を焼き払う。
突然の呪に驚き、そして後ろを振り向く。
「い、いきなリ何すンだ!?」
「いや、ただの最高火炎術式だが。君のすぐ後ろまで近寄っていた魔物がいたもので。」
「あンた・・さっき、穏便とカ言ってなかったカ?」ジト目の少女に。
「いや、まあそうなんだが・・悠長にしてられる時間も少なさそうだ。」
「そうだネ。」
「今の音で敵味方共にこちらに気づくだろう。急がないとな。」
「その音源は誰なンだ?」呆れ顔。
「早いに越したことは無い。敵味方どちらであれ、ね。」こちらは、したり顔。
「僕も相当無茶はしてきたけド・・アンタ程無茶なオッサンは初めて見るかもネ。」
「惚れないでくれよ?こう見えても愛妻家なんだ。娘も君と同年代?かな。」
「いっぺン、死んでみル?」
「勘弁願おう。」


「よし、あれがベースだな。」
「多分・・・アレは大丈夫、だナ。」
「どうして分かる?」
「僕の眼はそこいラのとはちょっと別なンダ。」
「噂通り、か。」
「アハハ。噂以上なのヲお見せするヨ。」
「それは素敵だね・・。」



(陣地に入りました。尚、敵がかなり潜り込んでいます。詳細は後ほどお伝えできるとは思いますが・・。
神勇隊、及び不滅隊の正規メンバーにも裏切りがありました。
この案件は内々で済ませるとして、鬼哭隊や神勇隊メンバーのもう一度の確認をよろしくお願いいたします。)
(わかりました。督戦任務、ご苦労様です。アルフレート。ノフィカ様のご加護をその身に。)
(ありがたきお言葉。この身をもって忠誠の証とさせて頂きます、カヌ・エ様。)

「さテ、いっちょ一仕事なノ?」
「というと?」
「今、報告シてたロ?」
「ああ。それは必要だろう?」
「まァ、そうだけどネ。」
「一仕事、か。私達が現地に着く、これが一応のミッションなんだがな。」
「わっかンねえナ?」
「情報分析は、参謀殿にお任せ、ということだよ。たどり着けば、そこから塹壕工事が始まる。
最低でも第ニ線は築かないとな。敵がここまで来てるとなれば・・悠長にはしていられない。
フネラーレ。君の「眼」が頼りだ。「狩り」を始める。いいかい?」
黒髪の術士は覚悟を求める目で。
「あたぼうヨ。誰にモノ言ってンダ?」
背中から愛用の大弓「コフィンメイカー」を取り出し。
「連中の棺桶、いくつ要ル?」
「矢の数だけ。」


----------コメント----------

工兵車両なんて無いから塹壕は手掘りだよなぁ・・・。
土属性魔法で掘れないかしら?w、むしろ発破するかw
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月21日 08:20

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>マルスCEO、塹壕塹壕手掘りだね~♪
ストンスキンで無理やり土の除去はできるかもだけどw
深さ1メートル、幅2メートル、距離1キロくらいかしら?
最前線用一線の前にニ線掘らないとダメだから、かなりの突貫工事かしら。バリケードは比較的作りやすい、というかすでに組んで(時間あったので)後方に隠してあったというw
なので工兵さん達はひたすら穴掘りに励むのであります。
ちなみに、あたしが帝国の参謀なら、大軍で峡谷を越えようとする連合軍をまとめて始末する策を提案しますねえw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月21日 08:34

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そもそも帝国は制空権取ってるし何とでもなりそうw
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月21日 08:44

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>マルスCEO、ですよねw
なんでこの圧倒的優位を使わないのか。
それは。
「小月」でしょう。
今回の遠征に関しては、おそらく帝国としては時間つぶし。
本気でかかる気がないと感じますね。(もちろん、一般将兵には内密でしょうが。)
船で威圧し、戦闘が月よりも深刻だと思わせ、その実メテオが本命だという。なので、陸戦は必須なのだと。
ついでに制空権を取るメリットは実は威圧ないしは殲滅しかないので、戦術には取り入れてない、とおもわれます!
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月21日 09:10

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この世界では威圧は効果高そうですよね、
現代戦ならAAミサイル沢山来そうだけど・・・。
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月21日 09:44

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>マルスCEO!さすがですw
AAMかあ。ゲパルトみたいな対空弾幕戦車も大好きなんだけど・・。
過去作に登場した、爆雷、というか爆弾落としまくりの船が出てくればそれで連合軍終わっちゃうんだけどなあ。戦略的にはるかにそれを上回る裏技があるので・・。
メガフレアからのギガフレア、そしてテラフレア?の連撃はさすがです。アレ退治できるのかしら?w
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月21日 10:21

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メインストーリーの最後で艦砲射撃してたけど、
威力がAC-130の105mm榴弾の比じゃないって言う・・・。
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月21日 10:31

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待ってました。アルフレートおじ様!
実力の断片を垣間見た感じですなw
こういうキャラこそ怒らせると怖いんですよね~。

にしても、マルスさんとマユリさんの考察が凄まじいな・・・。
ちょっと、ただ楽しみで気楽に読んでるのが恥ずかしくなってきたw
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月21日 10:32

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>フィズさん
考察ってほどでもないですよw
FPSゲームとかもプレイしてるからこんな書き込みしてるだけですw

現代だと対空弾幕もコンピュータ制御でミサイルすら撃ち落すけど、
昔は敵航空機を近づけないためのものだったけな?(手動照準だし)
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月21日 10:39

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>マルスCEO、105ミリ榴弾などw
AC-130の「横からぶっぱなす」的な使い方はできませんがw
ついでに「砲」としては使い捨てに近いので、外したらハイソレマデヨw
シュトゥルムティーゲルや、グスタフみたいな列車砲あたりが出てくれば派手なんだけどなあw
今回の戦場はあくまでも陸戦ですので~。
ただ・・帝国には戦車モドキがいますよね・・・
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月21日 10:44

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動画では黒魔法がATの代わりでしたねw
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月21日 10:55

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>フィズさん、どうか楽しんでくださいねw
ミリタリー系はどうしてもマニア路線を突っ走りますのでw
あたしの兄とその友達なんて、メッサシュミットbf109の「尾翼」だけで、K型とかF型とか語り合える変人ですし。
ちなみにシュトゥルムティーゲルの臼砲ははっきり言って冗談クラスですw150ミリだったかしら・・。
オマケ。戦艦大和、武蔵級の艦載砲、あれって撃ったあとの煙が凄くて着弾したかどうかの確認ができなかったんですって。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月21日 11:02

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>マルスCEO、ですねw
アンチタンク、としては少々派手だけどw
狙われるしw
でもまあ今回のお話での遊撃隊はまさにATで。
この辺は動画を元にお話作りさせていただいています。
でもこのコンビ、意外と強いかも。攻撃特化のNOUKINかもしれないけどw
でも、フネラーレは意外と戦術には長けているし、戦略ではアルフレートは優秀かしらんw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月21日 11:11

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魔法は無反動砲みたいにバックブラスト出無いから味方にやさしい設計w
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月21日 11:27

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>マルスCEO、無反動砲ですかw
あのバックブラストは、平気で味方の顔とか焼きますからねー・・・。
そういう意味では誤射の可能性が少ない魔法はナイスですよねw
でも粘着榴弾とかあったら絶対ソッチ選びそうなあたし・・・。
あと鎧にチョバムアーマー仕込んでみたいw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月22日 00:07

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