489書き物。賢人達。

「やあ。」
黒髪のエレゼンの男性はカフェで待っていた二人のルガディンの旧友に挨拶をし。
「おお、遅かったな。アルフレート。」
「悪いな。家事に追われていてな。」
赤毛と、白髪のルガディン達は呆れ顔で。
「お前なあ・・・。」と。
「まあ許せ。旧友に逢えるのはこれとなくいい話なんだがな。娘を任せる、となれば話は違う。期限は明日の夕方だったか?」
「ああ。」と赤銅色の肌を持つルガディン。「教授」の称号を持つ。

「お待たせしましたあ。」とミコッテの少女がワイングラスを置いていく。

そのグラスに口をつけ、エレゼンの術士は苦虫をかみつぶしながら。
「しかし、またなんでそんな話になったんだ?」
「まあ・・。知っているとは思うが、ルイゾワって爺さんだな。」レーゲンはグラスに一口、口をつけ。
「ああ、あの、な。」
「それとだなあ。アル。帝国討伐戦の話は聞いているかあ?」白髪のルガディン、ユパ。
「ああ。知っているさ。こちとらお前達と違って双蛇党に入っているからな。
カンパニーの意思、ひいてはカヌ・エ・センナ様のご意思とあらば、馳せ参じる以外にあるまいよ。」
「娘御はカンパニーの事は知らない、か。」
「ああ。教えればまたぞろ何を言い出すやら。」
「とりあえず、世界は動き出した。これだけは言える。」
「みたいだ、な。」
「で、だ。どうする?一介の街娘でもおいらはいい、と思える。だが逆にいい機会だとも。
確か今日はその娘御の誕生日だろう?おいらも早く返事は聞きたいが、こうなってしまうとなあ。早く帰って祝ってあげて欲しいんだが。」
「まあ、な。実はケーキを嫁に頼んであるから、大丈夫だとは思うが・・。」
「やはり、父親としての責務、というのがあるだろう。じっくり話を聞いてやって、それから、ならばいいんじゃないか?」レーゲンの言葉に頷きつつも。
「ああ。そうなんだ。だがな・・。」言葉に行き詰る。
「あの子は聡い。恐らくお前よりも上をいくぞ。」と教授。
「ひどい言い回しだ。だがそれなら。ユパ。いや、プロフェッサー。」
「どうした?」
「あの子を頼む。」
「まかせておけさ。」深くお辞儀をする。
「お前になら安心して預けられるよ。」深くお辞儀。
「そういや、一人ヒューランの子を預かっているんだってな?」導士レーゲン。彼もまたミコッテの女性を預かる、というか、なんというか。
「ああ。今は宿にいるはずだなあ。それがとてもお転婆でなあ。微笑ましいんだが、たまにやんちゃが過ぎるので困ったもんだなあ。」
「それを正すのも教導の一環、とか言わなかったか?」アルフレートは意地悪な笑みを浮かべ。
「まったくだあ。」と頭をかく教授。
「さて。アルフレート。ユパに任せるのか?」
「ああ。あとは彼女次第、かな。」
「おいらの予想だと、やはりあの子はおいらについてくる。いいな?」
「ああ。世界の果てでも通用する子に育てて欲しい。俺にはそこまでの才が無かった。人任せにするのは忍びないが、お前になら任せられる。」
「わかった、戦友よ。」
「では、そろそろ誕生パーティが始まる。悪いがここらで退散させてもらうよ。」
「ではな。」「またな。」「ああ、レーゲン、ユパ。今日はいい日だな。」
「お前、帝国との戦いで・・」「やめとけよ、レーゲン。」
「そうそう簡単にはくたばらんさ。」笑顔で手を振る。

エレゼンの術士とルガディン二人との邂逅はこれが最後だった。

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