476書き物。冒険者達の日常・・・。戦果。

「マリー!頼む!」
こげ茶色の髪を伸ばし、最近は少しニヒルな笑みよりは、ワイルドな笑みが似合いそうな青年は、傍らの少女に加護を頼む。
「はい。護りの空よ!」少女の呪に精霊が応える。
蒼い光の下、キンっという音がして、光が収束していく。
「ありがと!」
青年は剣を振りかぶり、鎖鎧の重さなど気にせず敵に突っ込む。
「恵みの岩よ!」さらに呪を紡ぐ少女。ふわふわした金髪は逆立つように波うち、やがて精霊の加護を青年に施す。
その頃には青年は一匹目の魔物を屠り、次の的へと剣を構える。
「ファーネ!危ない!チカラの風!」局地的な暴風が青年を襲う寸前の魔物を切り刻み、足止めをする。
「おい、マリー!無茶しないでくれよ!」と青年は振り返らず、
相棒のフォローに言葉一つで感謝すると、今にも少女の方に向こうかとする魔物に剣を叩き込む。
「おいおい。相手間違えたらダメだぜ?」
二匹相手でも一歩も引かない青年に、「癒しの手!」と回復術式。
さらに、「チカラの暴風!」と高位の風の精霊術。魔物一匹が吹き飛ぶ。
「フォロー、ありがとーな!」青年は残った魔物に剣を突き立て。
魔物達は掃討された。


此処は森の中。キャンプ・エメラルドモス周辺。
リーヴを終えた証である、控えめなエーテライトを見ながら。
「マリー、助かるよ。」と青年ファーネ。
「ファーネさんも、すごいです。もう素人なんて言えませんからね?」
「あらら、張り切りすぎたかな。」ぽりぽり、と後ろ頭をかく。

昼食休憩の後、いくつかのリーヴをこなし。
連携も十分できるようになってきた、という事なのだけど。
「それじゃあ、陽も暮れる前に帰るとしようか。俺も久しぶりに体を動かしたから疲れたよ。」
「あ、そうね。うん。じゃあエーテはほったらかしで、テレポしちゃうね。グリダニアのエーテにはまだ触ってないでしょ?」
「うん。そうなんだよ。灯台もと暗し、ってリムサの格言だっけ?」
「たぶん・・。わたしも・・リムサって、リムサ・ロミンサだよね?行ったこと無いから、わかんないけど。」
すこしションボリ。兄夫婦は楽しくやっているだろうか。
「ま。すぐに行けるようになるさ。まずはカフェでメンバー達とおしゃべりでもしに帰ろう。」
「うん・・。テレポ!グリダニア!」淡い蒼の光に包まれ・・。

「おー。こんなトコだったのか・・。触っておこう。」青年は石と契約を済ませ。
「じゃあ行こう。」
陽はそろそろ落ち始めている。


カフェでは。
「ねーねー、カーナールー。どう思う?」黒髪ミコッテの給仕の少女オーアが、オフだけど、
なんとなく来てしまったエレゼンの少女を捕まえてニタニタしながら聞いてくる。
「さあ?当人同士なんじゃないの?」とそっけない。
そこに。
「オーアちゃん、カナルちゃんの言うとおりだにゃー。」と銀髪の白魔道士、ルー。
「あ、ルーさん、そんなコト言ってると逃しちゃいますよー?」
「オーアちゃん?言っていい事と、言うとヌッ殺される事があるのは知っておいたほうがいいにゃ。」
にこにこ。但し、目は全く笑っていない。
「は、はいにゃあ!」尻尾の先まで震わせながら失言に後悔している少女に。
「ルー、止めときなさいよ。ここではそういうのはダメだからね?」とミューヌ。
「ご、ごめんにゃあ・・・。」今度はこちらが尻尾をぺたり。

そこに。
話題の種の二人が。

「ただいまー!」と元気な少女は、普段とは違うローブ姿で。
「どうも。」と鎖鎧の青年も、いつもの皮肉っぽい笑み。

「おかえり。どうだった?」とミューヌ。
「いや、充実した経験でしたよ。これで少しでもLSの足しになれば、なんてね。」
「うん、十分だよ。」と金髪の少女。
「どこまで行ってきたのかにゃ?」ルーの質問に、
「モスまで。」
「にゃるほど。じゃあ今度はムントゥイまで行こうにゃ。」
「大丈夫?ルー?」
「大丈夫にゃ。私もムントゥイは探索進んでないからにゃ。
それに熟練で言えば、私はそれほど高くないからにゃ。修行メンバーに入れて欲しいからにゃ。」
「そうなんです?」青年の問いに。
「うにゃ。メンバーの中だと一番熟練が足りてないのにゃ。」と少し悲しげ。
「ルー、そんな顔しないで。みんなで行こうよ!」
「そうだね。ところでその、ムン・・トイ?ムトイ?ってなんなんだ?」
「ファーネちん、グリダニアの出身なのに知らないのかにゃ?」
「ああ、何と言っても館の外の話と言えば、外交だの、政権だの、まあそんなところだったしね。」
「なるほどにゃ。マリーは知ってるかにゃ?」
「ぜーんぜん!」と胸を張る。
「そりゃそうだにゃ。」と、説明を始める。


「なるほど。廃棄された酒蔵が魔物の巣窟になってる、ってことか。」
「そうだにゃ。ノートリアス(悪名高き)モンスターも出るからにゃ。」
「ほほう。」
「マリー?」「はい?」
「聞いた話だと、マユさんがウルラさんに惚れたトコらしいにゃ。」とにやり。
げ。そうだったんだ・・・。
「というわけで、LSの次のツアーはムントゥイで決定にゃ。ベルとグリュックにもつたえて置くニャ。」
「いきなりですね。」青年に応え、
「LSウェッターハーンの参謀の私、ル・シュペヒトが決めたら、後はリーダーのシュナーベルの承認で確定するにゃ。」
ふふん。と胸を張る。

「うん、じゃあ楽しみにしていよう。」「そうね。」
「それじゃあ、まずは。」青年。
「俺達の帰還祝いに、一杯奢ってもらおうかな。参謀殿。」
「え?」
目を白黒させる参謀のミコッテ。

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