442書き物。それからの続き。3

3大都市の中でもグリダニアは比較的迷子になりやすい。
しかしながら、他の2都市とて迷子にならない、とは言いがたいのだが、ウルダハ、
リムサ・ロミンサは高低差があり、それ故迷いやすいと言われれば納得もできようものだ。
が、グリダニアにはほぼ高低差が無く、平坦な町並みなのだが。
市街の道が恐ろしく複雑なのだ。
森との共生、それこそが第一なので、獣道やちょっとした広場を元に造られた。
なので、平坦ながら迷路じみたややこしい町並みに。

「・・・ワタクシ、やっぱりこの街はよくわかりません・・。」
漆黒の肌、透き通るような銀髪を後ろでまとめ、給仕服を着た少し小柄なエレゼンの女性。
「水車四辻」といわれる目抜き通りまで来たはいいけれど、正直この後どっちに向かえば有力な手がかりが入るかわからない。
「ボンボンを探せ。」彼女なりに単純に「目標」をそう捕らえている。
正確には、彼女を含め数名の住居者や仲間の「家」を用意している、
お偉い方のご子息の保護。気が乗らない話ではあるが、立場上やらざるを得ない。
パールを取り出すと「こちらベリキートです。
水車四辻まで来ました。人通りは少なめですので、見逃す、
ということはありえませんが・・正直、大通りに居れば捜索以前の問題かと。」
「ご苦労、ンな事はわかってル。ただ立ってるだけデ小物はビビッて意識しちまう。そういうのをチェックすンだよ。」
(もちろん、給仕服などという目立つ衣装だからだ、とは心の中でだけにとめておく。)
「わっちの網だとね、名前はファーネ、ミッドランダーの男性、
年は17~20、こげ茶色の髪で中肉中背、見た目は派手じゃない、らしいねえ。」
「おイ、キーファー。この情報の書類と名前違うじゃねェか!しらじらしい偽名つけやがッテ。
探してほしいのかブっ殺して欲しいのカ、ちゃんと聞いとケ!」
「え、そんな・・おい、ショコラ?そっちの情報は間違いないのか?」
「わっちの情報は常に鮮度が高いのが売り、なのはキーさん、知ってるでしょ?」
「なるほど・・。あちらさんにも事情がありそうだ。ベリキート、どんな感じだ?」
「こちらには、適合するお方が十数人ほど居られます。一人づつ拉致しますか?」
「いや、それは問題があるな。逆にソコに居る連中は無視か・・。」
「ワタクシに提案が。お嬢様。その御仁は派手ではない、しかし遊んでいる、と。
そして、キーファー氏。本当に行方不明なのですか?
ただ単にお金持ちが道楽の放蕩息子を「しつけ」のためにワタクシ達を使ってお仕置きめいた結果が欲しいのでは?
ならば、多少手荒でもよろしいかと。」
「まあ、やむなし、か。ベリキート。残念ながら君の提案に賛成だな。
彼には少しばかり反省が必要な人物みたいだ。
方針も決まったことだし、一旦戻って休憩といこう。」
「わっち、あの串焼きの屋台がいーなー。」
「ショコラ、アレ、か?」
「うん、フネラーレの大好物。」
「お嬢様。ワタクシはどちらへ?」
「その通りを東に行って、黒檀商店街を抜けてすぐ。」

数件の屋台を回り、今日はこれでいいだろうと。
情報はまだ出揃ってはいない。
似顔絵くらい早くだせと、キーファーが槍玉に上がったのは言うまでも無い。

翌日朝。
「今日が決め手だナ。」寝台から抜け出す。
まだ陽も上らないうちから。
「ヲい、ベッキィ。起きてるカ?」
寝室は別に用意してある・・元は空き部屋兼物置だったのだが。
「はい、おはようございます。フネラーレ。」ドアから出てきたのはいつもの給仕姿。
「ベッキィ、お前ェその格好で寝てる、ってわけじゃねェンだろ?」
「はい。寝着はいつも用意しております。」
フネラーレは自分を省みて・・下着の上に薄いペチコート。
「ま、いいや。宿屋、とまりぎ辺りを見てきテくレ。なんとなく、居そうナ予感ダ。」
「はい。では。」「僕は鬼哭隊の方を見張っておくヨ。連中が動き出せば、情報の信憑性も出ルからネ。」
「解りました。お嬢様は?」「ショコラなら、勝手に動き出して情報をだしてくれるサ。」


宿屋とまりぎ、にて。
アレか・・?
給仕姿の女性は、遠目にでも解りやすいいでたち故、外から見ている。
こげ茶色の髪の男性。ここまでは確かに情報通り、しかもフネラーレの勘も当たっている、といえそうだが。
横に女性がついている。おそらく同年代らしき金髪の女性。
ふわふわとした金髪は特徴的だ。二人して宿、というかカフェから出てくるのを目撃し、パールで伝える。
「おそらく、見つけました。確証はとれませんが・・。今から仕掛けますか?」
「ふぁ・・。あ?ベリキート?え?仕掛けっておい、待て!」
寝ぼけた声というか、伝心なので雰囲気だけだが。
「まさか・・ナ。」知った顔が思い浮かぶが・・。
「あ、ベッキィ。丁度ナイスー!たぶんそいつ。急いでふんじばって。」
「はい、お嬢様。」

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