436書き物。自己紹介?の顛末~それから。

夕暮れ前。
リムサ・ロミンサ~フェリードック間の航海は順調で、二人の男性はフェリードックまでの数時間を久しぶりに会話で費やしている。
「ねえ、父さんは一緒にリムサに残らなくってよかったの?」
濃い目のグレイの髪を短く刈った青年は、父親に問いかける。
「ああ。・・・んんん・・・。やっぱり、いいや。俺のガラじゃねえ。」
坊主頭のいかつい男は、船乗りらしく日焼けした息子に応えた。
「ふうん、どうして?」
このあたりの機微というか、そのあたりを読めればいいのだが、と思いつつも。
「こんなイカつい親父が一緒に娘夫婦に着いて行くと、こっちが気にするんだよ。何かとな。」
「へぇ、そんなもんかなあ。っと、そろそろ仕事だ。もう行くよ。」
「おう、頑張れよトーラ。」
手を振る。
(しばらく横になるか。)

「ねえ。」リムサの国境となるカウンターを過ぎて。(最近は何かと厄介なので手続きが長かった。)
「どうしたの?」と娘を見やる。
「父さん達来なかったから。何かマズイ事言っちゃったかな?」少女は小首を傾げる。
その隣では、少女の夫の少年が気遣わしげな視線を少女に向けている。
「ああ、そのこと?」ふふっと笑い「あの人なりの心配り、おせっかい、なのよ。照れ屋とも言うわね。」
長年連れ添ってきた女性は、束ねたグレイの髪を揺らしながら少女のように微笑む。
「それで、この後?どうされるんですか?おれは、この街は全然分からないから、是非とも案内がいりますけど・・。」
と金色のクセ毛に手をやり、所在なさげにアチコチを見ている。
「そう?一人でフラッと「迷子になりました」とか言い訳にして、どこか行ったりしない?」
とは、ブルーグレイの髪の少女。いまやコリーナ夫人だが。
「マユ・・。確かにグリダニアでは悪かったよ。でもココじゃやらないって。」
「ふふん?」少女はイタズラめいた瞳で上目遣いに覗き込んでくる。
「はいはい、イチャイチャするのは二人だけのときね。」あきれ口調のレティシア。
「イチャイチャしてないもん・・・。で、どうするの?まだ夕飯までには時間あるよ。」
「そうね、今夜の宿は手配しておくから、夕飯時まで二人で散策しておいで。マユ、ちゃんと案内するのよ。」
「はあい!」「頼むよ、迷子にならないように。」「ちょっと!ウルラ!」

(さてと、バデロントコでも行っとくか。スゥのところもインタビュー終わってるかな?)
「じゃあ、あたしは溺れた海豚亭に寄ってから、ビスマルクでお茶でもしてるわ。何かあればパールでね。」
「はい。」「はーい。いってきまーす!」 娘夫婦に手を振り酒場へと。

「あ、マユ。ちょっといいか?」「なに?」「マリーに土産の一つでもね。」
「いいわね、小物とか貝殻使ったりしてかわいいの一杯あるんだよ。」




「マリー?」パールから兄の伝心が。
グリダニアのカフェ、カーライン。ついさっきまで不思議な一人の女性と同席していたのだが、
小一時間もせずに別れてしまった、というか彼女が席を立ったのだ。
なので、彼女がオーダーしてくれたワインをちびちびと飲んでいたのだが、もうグラスは空になり、
さてカウンターに席を移すか、このままテーブルで夕飯までの時間をオススメケーキセットで愉しむか、悩んでいたところだった。
「どうしたの?お兄ちゃん。」今頃は確かマユの実家か、船の上じゃなかったか?
リムサ・ロミンサに旅行に行こうと兄妹揃って誘いを受けたのだが、さすがに新婚夫婦の邪魔を兄妹とはいえするわけにもいかず・・。
「いや、今さっきリムサに着いたところなんだ。それで、お土産に何か買って帰ろうと思うんだけど。何か希望があれば、と思って。」
「あ・・。それなら・・うーん。そうね・・パールに付けれそうな装飾があれば。」
「わかった。そっちは変わりないか?」
「うん、お兄ちゃんも楽しんできてね。マユちゃんにもよろしく。じゃね。」
「ああ。じゃあな。」
パールの伝心を切ると「すみませーん。オススメケーキセットくださーい!」
「はあい!」と元気なミコッテの少女「イーリス!セット1、3番ね!」「オッケー。」



「よし、今日の鍛錬はこれまで。各自、片付け!」凜とした女性の声が稽古場に響く。
「はいっ!」と隊員や、ギルド見習い冒険者達が掃除や、武具の手入れなどを始める。
その中にオレンジの髪のミコッテの少女と、茶色の髪の少年も居る。
「シャン、ネルケ、片づけが終われば、両名執務室まで来るように。」
「はいにゃっ!」「はい!」
スウェシーナは監督を他の者に任せ、先に執務室に向かう。

「ちょっ!レティ!いきなりなんなのよっ!」パールに向かって念を送るが、声にも出ていたかもしれない。
「今から3人でリムサ・ロミンサに来いって!?」

「あれ?まだ稽古中だっけ?」とは最大の悪友。
「さっき終わったところよ。今からだと・・、そうね。早くても2時間くらいは見てくれないと。
今は・・ちょうど夕陽が残ってるくらい・・っても空が赤い程度だから。夕飯、というより晩飯だよ?」
「まあ、できるだけ急いで。」
「いっつも、急なんだからっ!アンタは!」  こんこん。「失礼します。」
(あ、また後で。)「どうぞ。」
執務机の方ではなく、応接用のソファでパールのやり取りをしていたせいか、少しくだけた姿勢、というか、
ぶっちゃけビシっとしているとはいえない姿勢・・少し溜め息をついて、「二人ともご苦労様。まあ座って。」とオフな口調。
「いえ。って、その・・。」「ああ、普段でいいわよ。ネルケ。」「どうしたんです?母さん。」「にゃあ?」
「突発的任務?とでも言うのかしら。レティ、レティシアが私たちにリムサ・ロミンサまでおいで、というか、来いというか・・。」
「はぁ?」「にゃ?読めないにゃ・・・。」
「二人とも、準備って時間かかる?かかるにしても最速でわたしの家まで。
水浴びと着替え程度でいいわ。多分食事会だと思うから。わたしも一旦家に帰らないと・・・。」
「了解にゃー!」「はい!」
善は急げと二人を追い出し、自身も準備のために最速で雑務を必要分だけ済ますと、
夜の部の練習監督は引継ぎを任せ、「悪いな。少し私用ができた。」とだけ。
「まったく・・あの魔女め・・。」悪態をつきながらも、何を着ていくかはしっかり考えている。




「ふん♪ふふん♪ふんふーん♪」
どこか弦楽器を思わせるような、それでいて儚いような、そんな歌声。
歌詞はなく、口から出るに任せたその歌は。

ちょっと耐えれないくらい音程をハズしてた。

少し時間を遡り、「家」に来訪者が来る前。

「ね、ね?ベッキィはどーおもう?」と茶色の髪、褐色の肌のミコッテ。
「そうでございますね、さすがはお嬢様の腕前かと。」こちらは給仕服のエレゼンの女性。
「・・・・・ン・・・・・。」黒髪の少女は、自分が着せ替えのモデルにされているのが、
いかんともしがたく、声がでないものの、押し殺しているのがヒシヒシと伝わってくる。
「ね、ベッキィ、さっきの純白のがいいかなあ?今のピンク?」お針子さんよろしく着付けながら、いろいろチェックをしている。
「ワタクシとしましては、やはり先ほどの白がよろしいかと。しかし、お嬢様のご判断にお任せを。」
「やーっぱ、さっきの白だねー。うん、白にしよう!」「はい、お嬢様。」「・・・。」
「あ、ベッキィ!リビングにクッション用意しといて。あの大きなヤツ。」「かしこまりました。」黒髪の少女の寝室から出て行く。
今や彼女の寝室はちょっとした衣裳部屋と化している。大きな姿見を持ち込み(この部屋の主は、鏡を好まないので)
ピンクのドレスをばっさり脱がせ、先ほどの純白のドレスをあつらえていく。
フリルのたっぷり付いたスカートに、大きく肩を出し、胸元を強調させるようにピンクのリボンを添えて、
足元は高すぎないヒール、敢えて素足で色白なところをアピール。
髪のセットは、もともと絹のようなサラサラした髪質なので、ブラシを数回とおすだけにして、
コサージュにするかどうするか・・小さいハットを用意してピンクの生花を横に添える。
「うん、こんなものかなぁ。どう?フネラーレ?」と、もう既に動きを停め等身大人形と化している少女の前に姿見を持っていく。
「・・・・。」返事は無い。そこに。(おい、そろそろ着くぞ。いいか?)と、銀髪の青年からのパールの伝心。
(りょーかーい。キーさんも見ればビックリなのだ!)(何だよそれ、後でとばっちりだけは勘弁だからな!)
「ベッキィ!そろそろだって。運ぶの手伝ってえ。」「はい。お嬢様。」
リビングに用意された大きなクッションに埋もれさせるように、「お人形」と化した少女を「設置」して、ショコラは満面の笑みでフネラーレを見る。「似合ってるよ。」
「うっせェ。」不機嫌極まりない返事だが、先ほどの姿見を見たとき、確かにこの少女は頬が赤くなっていた。
「それではお嬢様。ワタクシはお迎えの準備に行ってまいります。」と、エレゼンが出て行く。

「素直じゃないねー、フネラーレ♪」端に寄せたテーブルセットで椅子の背もたれを抱くように座りニコニコするミコッテ。
「ショコラ・・。あァもういいヤ、後でブッコロス。」しかし、頬は赤いままだ。

「まゆり様をお連れいたしました。」

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