430書き物。下宿騒動記 五

黄昏を過ぎ、そろそろ夜の帳の降りる頃。
グリダニア郊外にある安宿に足を向けながら、今更のように足と腰に傷を負っているのを思い出す。
傷の痛みなど、気にならないくらい意気消沈していた彼女はボソリと。
「・・癒せ。」回復術式。淡い光に包まれ傷口がふさがっていく。
「お嬢様・・・。」
漆黒の肌に、透けるような銀髪、燃えるようなオレンジの瞳のエレゼンの女性は、ふらふらと宿泊していた安宿に足を向ける。
「ふぅ・・」溜め息と共に何か大事なものが流れ出しているような気がしてくる。

からん。

宿のドアを開け、主人に一声をかけ2階に上がる。上がったすぐ先が借りていた部屋だが、それも今日までのことだ。
まずはパールで今日の事を報告せねばなるまい。気が重いが、まずは中に入らないと。鍵を使いドアを開ける。
「なっ!」信じられない物を見て、思わず声を上げる。
部屋には灯りが燈され、先客がいたからだ。
「よゥ、ベッキィ、遅かったじゃねェか。」黒髪、白磁のような肌、挑戦的な表情だが、人形を思わせる面貌は美しい。
「やっほー、ベッキィ。鍵、開けちゃったからあ。」こちらは茶色の髪、褐色の肌に蒼い瞳がコケティッシュなミコッテの少女。
先のいざこざで服を穴だらけにされてしまったので、今は違う服を着ている。
そして、銀髪の冴えない顔の青年。「やあ。勝手にあがらせてもらっているよ。」
黒髪の少女は狭い客室の真ん中に置いてある丸いテーブルとスツールを一人で占拠し、さらに持ち込んだのだろう、ワインをあおっている。
ミコッテの少女は寝台に寝転がり、十分くつろいでいる。
そして銀髪の青年は窓際に腰をかけて、こちらを見ている。
「な、な、なんで・・・?どういう事でしょう?お嬢様・・。」
「いやあ、ベッキィがさあ。すんごくションボリしながらフラフラと歩いてたからあ。
これは慰めてあげようかなあと。部屋には先回りしたっていうより、ベッキィが遠回り過ぎたんだね。
あ、あとね。鍵はちゃんとしたヤツがいいよお。」
自らピッキング対策の錠を用意するくらいなのだ、このミコッテは。当然、ピッキングはお手の物、ということらしい。
「それは・・・・。ありがとうございます。お嬢様。しかし・・。何故この者達まで?」
「いやァ、僕はどっちでもよかったンだけどネ。そこのポンコツクソ野郎が、いいからついて来い、なンていうからサ。」
と銀髪の青年を振り返りもせずに親指を向ける。
「キーファー氏、どういうことですか?」
「ああ・・。その、なんだ。ショコラだけだとほら、寂しいだろ?そうおもって。」
「空気読みませんか?」オレンジ色の瞳に殺意に近い怒気を込める。
「ハッキリ言えヨ、ポンコツ。一人で行かせたらそれこそ拉致られるッてナ。」
「・・・・。」
「ワタクシはそのような事は致しません。軽く見ないで頂きたい。」
「まァ、それで護衛も兼ねて誘われちゃっタんだ。でもまあ、せっかくだかラ、お前も飲めヨ。」
差し出されたグラスにワインが注がれる。
「・・・・。」ぐい。一息にあおる。
「イイネ。」
「ベッキィ、帰っちゃうのお?」ミコッテの少女が枕を抱えながら聞いてくる。
「はい、御当主様に報告差し上げなければなりません。お兄様、クォ・シュバルツ様も大層お気にかけていらしましたので・・・。
残念な報告をお伝えするのは、真に身を切る思いでございます。」
「で、だ。ベリキート。君はその後どうするんだい?」
「キーファー氏。それは・・・。」
「何か沙汰があるんだろ?まあ、クビは確定なんじゃないのかな?」
「・・・はい、おそらく。御当主様は厳しいお方です。お兄様の口添えを頂けたとしても・・・。」
「じゃあさ。当初の予定通り、ココで働かないか?」
「っ!」じろり、と銀髪の青年を睨む。
「ベッキィさえよければ、わっちは歓迎するよー。」パタパタと尻尾を振る。
「お人よしの集団だナ、オイ。」

「しばらく考えさせてください。」
「おう、わかった。じゃあ、邪魔したな。皆帰ろうぜ。」
「ナニし切ってンだ、コイツは。」綺麗な脚線美を誇る少女のつま先が見事な弧を描いて青年のわき腹に突き刺さる。「ぐはあ!」
「じゃね!ベッキィ!」ウインクひとつ。尻尾を振りながらドアから最初に出て行くミコッテ。
「お嬢様・・・。」
「じゃあナ、ベッキィ。リベンジしたけりゃ何時でもイイぜ。」手を振り出て行く少女。
「・・いたた・・・、まあ、いい返事を待ってるよ。ベリキート。」

パタン。ドアが閉まり珍客は帰って行った。
「ワタクシは・・・。」
一人寝台に腰をかけ、物思いにふける・・・そして、枕元に「さしいれ」と書かれた紙袋にミートパイが入っていた。
「お嬢様・・・・。」しらず、涙が零れ落ちる。




翌朝。
ノックで目が覚めたフネラーレは、ドアを開けると珍客をもてなすかどうするか、刹那の時間考えた。

「よォ、下宿先はココでいいのカ?」
「はい。よろしくお願いします。」
「仕方ねェな。暴れるなヨ?」
「はい。お世話になります。」
以前のような、張り詰めた空気は無く、自然に笑みを浮かべる漆黒の女性にしてやられたかもしれない、と思いながら。
「ま、仲良くやろうゼ、ベッキィ。」握手をする。
「ええ、フネラーレ。」


同居人ができた「家」の家事はコイツにはやらせないほうがいいナ。
フネラーレはとりあえずの結末に一応の納得をした。


----------コメント----------

どうも、あとがきプラスお知らせ~
とりあえず年内に一本仕上がりましたwパチパチw
ショコラがメインなハズが・・いつのまにやらwまあ、イキオイで書いてますゆえw下宿騒動記、以上です。お楽しみいただけましたでしょうか?
そして、お知らせなのですが・・。芳しい話ではありません。
実は前に回線が断絶されてしまいまして、プレイヤーIDが今までのものだとエラーを食らうというハメに。そして、時を同じくしてPCがイカれちゃいまして・・。
新規IDのメールが着てるハズなのですが、そのメールが見れないという不測の事態なのであります。
いまのロドスト更新は、ID変更前からつけっぱなしだったので(今も24時間つけっぱ。)なんとかできているのですが。
こっちもWinの更新とかで自動的にログアウトされちゃうとインできないと予想されます。
なんとか対策を検討中ですが、年末年始サポセンが機能してなさそうなので、もし更新が途絶えたらそう言う事でしばらくインできないってことに。
なんとか年越しまではこのままつなぎっぱで行きますネ。
では、もしものために「よいお年を。そして先あけおめ!
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年12月27日 11:07

----------------------------

良いお年を!
小説内ではどのように終焉を迎えるのか楽しみに待っていますw
Marth Lowell (Durandal) 2012年12月27日 11:36

----------------------------

>マルスさん、よいお年をw
小説内、では新生の手前までは現状の立ち居地の予定ですw
大晦日あたりにキャラの座談会を考えていますwインできていればw
落とされていないことを願いつつ、新しいネタも考えないとナ、な年末でありんすw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年12月27日 11:47

----------------------------

追記

新生前に今まで登場したキャラクターの設定集?を見てみたいです



名前
性別
年齢
種族
誕生日
守護神
取得クラス/ジョブ Lv

このような感じでw

このキャラの場合は
名前  マルス ローウェル
性別  女
年齢  /
種族  ミコッテ / サンシーカー
誕生日 星5月(9月) 3日
守護神 リムレーン
取得クラス/ジョブ Lv
ALL50

もちろん設定されていない項目もあるでしょうから
設定されているところだけで大丈夫です。
よろしければ、お願いいたします。
Marth Lowell (Durandal) 2012年12月27日 11:54

----------------------------

うぉw、追記書いてる間にレスきてたw
Marth Lowell (Durandal) 2012年12月27日 11:55

----------------------------

完結おめでとうじゃよ~w
ID&PCはやくよくなるといいんじゃよ~w

なにげにキーファが一番したたかな気がするんじゃよ~w
Syakunage Ise (Hyperion) 2012年12月27日 13:23

----------------------------

>マルスさん、設定ですねwりょーかいw
あと、速攻レスはたまたまですw出勤前に見たらw
以前に「こういう人」みたいな紹介はしてたのだけど、具体的には書いてませんでしたねw少し変則的な紹介をしていこうかなw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年12月28日 01:24

----------------------------

>王様、どーもーw
PCとかの件は年越しにしようと思ってます・・。忙しいし。いろいろ。ご心配かけますね。
今回のキーファーは、ネゴシエーターとしては及第点に行かなかったけど、結果オーライでしたwそういう人ですw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年12月28日 01:29

<<前の話 目次 次の話>>

マユリさんの元ページ