428書き物。下宿騒動記 参

夕暮れ前のグリダニア。
閑散とした郊外の広場。差し渡し20メートルというところか。
薄く差し掛かる夕暮れは、その場に居る者たちを紅い影で縫いとめる。

銀髪の青年が黒髪の少女に弓矢を放り投げて渡す。

黒髪の少女は、チラッと見ただけで愛用の装備を手に収める。

広場に二人、対峙しながら。

漆黒の髪に白磁の美貌、黒い革の短衣に、ハイブーツ、大きな弓。
透けるような銀髪に、漆黒の肌そして、紺色のドレスの上から白いエプロンドレス。

真逆のような女性二人がにらみ合い、場に緊張が訪れる。
「いいでしょう。」ぎゅっと、革のグローブを引き締めると、
銀髪の給仕姿のエレゼンはすっと、体を落とす。眼鏡越しの視線は、殺意に溢れている。
「いいゼ。かかってこいヨ。狩ってやル。」応えて黒髪の少女。左手の大弓をすっと前に差し出すように構える。
彼我の距離、おおよそ5メートル。弓、それも大弓なぞ構える間もなく、拳が入るであろう状況で「葬儀屋」は言い切った。
「・・・。」眼鏡の奥の瞳がすっと薄く細められ。給仕の女性は銀髪を翻し、右足を踏み込み、一足飛びに襲い掛かる。
左手に大弓、腰の矢筒から矢を引き抜こうとした動作のまま、黒髪の少女が迎え撃つ。
拳が打ち出されるのと、腰から右手が出されるのがほぼ同時。

がつっ。そんな音が聞こえたかもしれない。

ぽた・・。ぽた・・。紅い雫が地面にいくつもの跡をつくる。

「どうしタよ?驚いたかナ?」右手に大振りのダガーを構え、それで拳を受けきった黒髪の少女、フネラーレ。
とっさに踏み込みをとどまり、拳のダメージを軽減したベリキート。
革のグローブが裂け、少なからぬ出血がある。もし、勢いに任せて拳を出していれば指が何本か飛んでいただろう。
「ええ、少々。・・。癒せ。」薄い青色の光と共に幻術魔法で手の傷を癒す。
「魔法使えるじゃネーか。キーファーには気の毒だったな。」
「彼に使う術式は持ち合わせておりません・・。」
「ひでェな。おい。でもまあ、コレで僕に一つ有利な点ができたナ。」
「何?」
「教えてやらネー。」
「あなたも、剣術が扱える事がわかりました。しかし、この程度の習熟では問題にならないと判断します。
死ぬ前にあきらめるか、あきらめて死ぬか、選択してください。」
「いっしょじゃねェか。」じりじりと間合いを開けていく。

「え、ちょっと?キーさあん?コレ、どうなの?どうなってこうなるわけ?」
茶色のミコッテの少女は、もう意味が解らないとばかりに上司の青年を見るが、こっちは飄々としたもので
「なるようになる、かなあ。フネラーレが勝てば現状維持、ベッキィが勝てば、君はリムサ・ロミンサ行きになるね。」
「ええええ・・・。」ふくざつ・・・・・にゃあ・・・。

ザザザっ 間合いを開けすぎないように、ベッキィは慎重に時計周りに詰めていく。
そして、革のグローブの上から愛用のナックルを装備して、すり足で慎重に間合いを計る。
対して、フネラーレはダガーを腰の後ろに戻すと、弓矢かダガーかの選択肢を相手に選ばせる。
弓での攻撃だと踏んだらダガーで、あくまで間合いをとり、様子を伺うなら速射の一撃で仕留める。来るなら来い、と言うわけだ。

しかし、ベッキィの動きは少しおかしく・・。両手を腰の前に重ねるようにして。来客を迎える給仕のように。そして、大きく、勢いよく両手を広げた。

(マズイ!)反射的に身をそらすフネラーレ。その顔のすぐ前を何かが風切り音を立てて通り過ぎる。
数本の黒髪があっさりと、その小さな暴風に巻き込まれ切り落とされる。戦輪(チャクラム)。
輪状の金属板の外側に刃を付けた格闘武器としては珍しい投擲武器。
達人ともなればちょっとした木の枝どころか、野生のヤギくらい一撃で仕留める威力を持つ。
軌道がムチャクチャランダムなので、受ける側としては何処にあるのかがわからない、という、ある意味弓矢などよりよほどタチが悪い。
射程はその分短いのだが・・。

「ちッ」
身をそらしたわずかな隙を突いて、エプロンドレスを翻しベッキィが迫ってくる。

だが。

ひゅっ。
バックステップをしながら、一矢を放つ。至近距離からの攻撃だったが、読まれていたのか、
かわされる。「・・・。」無言のまま、拳を打ち込みにかかり・・、がくん、と動きが止まる。
「こ、これは・・。」動かない四肢に力を込めているようだが、束縛からは逃れられない。
「おヤ、ご存知でないのかイ? 影縫いサ。」バックステップの後、
かがみ腰で次の移動のための準備をし、とりあえず距離をあける為に反対側までダッシュする。
広場の際まで下がって引き寄せたため、反対側まで行けばかなり有利な距離を稼ぐことが出来る。

森の風がひと凪ぎ・・・。砂塵を吹き流す。
「ねえ!キーさん、ヤメさせてよお!」「俺には無理だね。怪我しないようにこっちに来な。」

きりりっ。今度こそ。大弓に矢がつがえられ、最大にまで絞られる。
「おしまいだヨ。黒いの。」
「貴女に言われるとは心外ですね、黒衣。」
「言うじゃねェか。まァ、食っとけヨ。オゴリだゼ。」ひゅん。放たれる矢。
その矢目掛けて走り出すベッキィ。そして矢が彼女の心臓に中るという刹那、
ふわり、と羽毛のような、重さを感じさせない動きでかわす。
「ヒュウ!」口笛を吹くフネラーレ。
次の矢も構えて・・。そのときにはベッキィがもう目の前まで来ていた。
「貴女の方こそ、おしまいです。」拳が繰り出され・・そうなところで、
スカートの中から華奢ながら、勢いと速度が十分に乗った蹴りが繰り出される。
くるりとスカートを翻し、二撃目の回し蹴りを放つ。
「がっ!」
この攻撃にはさすがに応対できずにマトモに食らってしまう・・。
「っ痛・・・・」地面に転がりながら、漆黒の肌の相手を見る。
(へ、ざまあみろ・・。)
矢を放つ。


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見たことはないのだけど、某ラグーン商会が浮かぶのはなぜだろう(´・ω・`)
Jonathan Jones (Masamune) 2012年12月26日 01:20

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>ジョジョさん、おひさw
ええ、どちらとも言わず、某ラグーン商会に近似していますねw
メイドさんに釣られて、黒髪さんがひっぱられていますか・・。
ベレッタM92カスタム「ソードカトラス」だったらいいのにw
ちなみに彼女の弓の銘は「コフィンメイカー」ですよーwFF11で75キャップ時代の名銃ですwというか、あたしの愛銃ですwま、お話の中で勝手に銘をつけただけ、ってんだけどねw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年12月26日 04:26

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