426書き物。下宿騒動記

ひっそりとした、木賃宿。
その日暮しや、得体の知れない宿泊客が、入れ替わり立ち代り部屋を借りていく。
そしてこの一室でも・・。


ここはグリダニア。緑溢れる大地にて、精霊の祝福と豊穣の女神ノフィカの加護もて、その麗しい自然との共存をしている街。
だが。
やはり、何事にも光りあれば、影はついてくるもの。全てを照らすことあたわぬ、人の身なればなおさらのこと。

「ふぁーーぅ・・。」
その木賃宿の一室で寝台に寝転がり、奇妙なアクビとも、ため息とも取れる音を少女がクチから紡ぎ出す。

その一室には、寝台意外には簡素なテーブルとスツール(どっちもボロだ)と、
洗顔用の水鉢、荷物置きのための棚が一つ(それも狭い)クロゼットらしきモノもあるが、あくまで「らしき」ものである、といわざるを得ない。
ものの数歩で端から端まで行けてしまう手狭な空間だが、寝台のプリンセスは気にせず惰眠という名の悦楽に浸っている。

小さな窓からは、陽の光が一日中入ってこないため、とりあえず何時まで寝てても罪悪感を感じないのがこの宿のいいところだ。
ノフィカ様あたりが耳にすれば、この宿だけ一日中陽光が刺さる様にてりつけるんじゃないか?みたいな事も、つい言葉にしてしまい・・・。
酷く小言も聞かされたものだ・・。

「にゅう・・。」枕に顔を埋め、うつ伏せで眠る少女だが、シーツが乱れてくると無意識に尻尾でシーツの位置を調整する。
ミコッテならでは、か。
固い寝台と、薄っぺらなシーツ、すえた匂いのする枕。今では定番というか、安らぎすら覚える。
「もうひょっとにゃ・・。」くた。
茶色い髪に、同じく茶色い耳を髪の中に埋もれさせ、さらに惰眠を甘受しようとする。



「かしこまりました。お嬢様。」

「!!!!!!!!!!!」
跳ね起きる。
「ちょ、ちょっと!?」
「おはようございます。お嬢様。今朝のお具合はいかがでしょう?
いま少しお休みになられると伺いましたので、朝食は後回しにすべきか悩んでいたところでございます。」
寝台の横に、給仕姿のエレゼンの女性。
漆黒を思わせる肌に、透き通るような銀髪。そして、今は伏せ目がちなので見えないが、燃える様なオレンジの瞳を持つ。
小柄ながらスタイルもよく、黙っていればいいのに。と本気で思う。いろんな意味で。
寝台から半身を持ち上げ、げっそりとした表情で彼女を見つめるショコラだが・・。
「あのさあ。ベッキィ。わっちの部屋の鍵、どうやったの?」
「はい。解錠いたしました。この程度で鍵などと・・。宿の主人にきつく言っておかねば。」
(まてーい。たしかにこんな安宿だ。たいした鍵じゃないのは分かりきってるから、
二重三重に、ピッキング対策した自前の錠を施したはずなのだが。)
「いやいやあ、ベッキィ、ソレはちょっとヤメといてね・・。」
「はい、お嬢様。ですがやはり、御身の安全を考えますと。」
「う・・。」

安宿の狭い寝台の上、下着の上に貫頭着というシンプルな寝着のミコッテの少女と、それにかしずくエレゼンの給仕。

「お前ラ、おもしれェなア。」いつのまにか戸口に立っている少女。
こちらは闇に身を溶かしたかのような容姿に、白磁のような素肌の。その容貌はどこか人形めいて見える。
「フ、フネラーレ!?」ミコッテの少女はさらに驚き、「ンだよ。居ちゃ悪ィか?」
「ややや、そうじゃなくてえ!どうしてここに?っていうかあ、ベッキィも!」
「あン?どうして?か。いや、キーファーの野郎がどうしても連絡つかねェンだよ。
仕方ねェから、野郎ントコ行ったら「外出中。探さないでください。」なんてユカイな札があってナ。後は分かるナ?」
「はあ・・。キーさん、溜め込んでたんですねえ・・。」
「裏稼業、みたいな仕事場の割りに、女に囲まれテいいご身分じゃネェの。」
「で、その。話を少し戻しますよお? 何故 この部屋が分かったんですかあ?」
「そりゃ、お前。大体の場所は聞いてたかラ目星をつけた宿に行ってみレば、この給仕がドアの前で正座してやがルしよ。
用事があル、って言えば、香茶一杯飲むくらいの時間で鍵あけちゃってネ。ビックリしたさ。」
(ショコラは基本的に宿を転々とし、同じ宿に数日泊まる時も、毎日部屋を替え、鍵も毎日のように取り替えていたのだが。)

「お嬢様のおられるところなら、ワタクシはいつでも馳せ参じます。」
「だとヨ。お嬢サマ。」くっくっく。
「あー。ベッキィ。いま、いつどき?」
「はい。陽は中天からかなり落ちてきています。お屋敷でしたら、ちょうどティータイムあたりでございましょうか。」
「あ、いいんじゃネ?カフェ行こうゼ。おい、何時までもンな格好してるとひン剥くぞ?ショコラ。」
「ひゃああああ!」寝台から飛び降りて、荷物袋まで一直線。
「あ、お嬢様。お着替えならこちらに!」
「あはは!おもしれー!」黒髪の美少女はこの光景にいたくご満悦だ。

ちらっと、その笑顔を見たショコラは、そういやフネラーレってこんな大笑いできるんだあ、と。心のメモに書き留めておく。


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酸っぱい枕使ってる人はとりあえず枕カバーの交換なり洗濯からだな!!
Bob Dalus (Hyperion) 2012年12月23日 02:11

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>ぼびー。経験者は語る、だネ。
すっぱい枕かあ、ヤだなあw
前に見た番組で女子アナの枕はクサイのか?みたいなので、臭気検知器?もちだして計測したら、公衆便所並みだったという、恐ろしい結果がwww
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年12月23日 03:58

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久しぶりのFF14小説キター
楽しみに待ってましたw
現行版の再ダウンが決まりましたが、小説の方でも新生するのでしょうか?
Marth Lowell (Durandal) 2012年12月23日 11:57

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>マースさん、おひさw
そか、14のがお好きなのねw
お待たせしましたw今回は意外と人気の高かったショコラと、破壊メイド、ベリキート、フネラーレのトリオw
もう、カオス。
現行版ダウンはやむなし、としてこのまま14ワールドと、番外編を交互にしていこうかなあと。
新生が始まれば、5年後の設定らしいので、小説内でも時間軸をあわせていきたいと思います。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年12月24日 02:49

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お久しぶりです、マルスです。(マースじゃないよ・・・)
なるほど、こちらの方でも新生していくのですね、新たな物語を楽しみに待っていますw
Marth Lowell (Durandal) 2012年12月24日 08:24

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>マースさん、すんませんwww
前のレスでも名前間違えてツッコミいただいてたので、あれ?どっちだったかなぁとwもういいや、ネタにしちまえ(失礼w)と、本能のおもむくままにwww
と、いうわけでお楽しみにマルスさんw(次回はもう間違えない・・と、おもふ・・。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年12月24日 10:59

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