415書き物。悪運 2

一人の少女が、ため息とともあくびとも付かない、ほぅっと息をつく。

「誰かを殺してこい。」

この手の依頼はいくつもこなしてきた。

上司の妻に始まり、その他。政府の高官すら射殺してのけた。

が。

「あんの、バカやろう。」
白磁を思わせる白い肌、細いおとがい、長い黒髪。
この美貌の少女を見た人は、人形だと思うだろう。
ただ、少し変っているのは、左眼を隠すような前髪。
ストレートの髪を斜めに切っている。
せっかくの、と思う誰もが、その奥の左眼を見れば、多分逃げ出すだろう。

夜の右眼。
満月の左眼。

「オッドアイ」
呪眼とも呼ばれ、ウルダハでは「金銀妖瞳(ヘテロクロミア)」とも呼ばれた、忌み子だ。

が、生来彼女はそんな眼ではなかった。事情。

軽く思い出して、イヤになって、やっぱり寝台に戻る。


依頼内容。
「悪運(バッドラック)ベッキィ」に接触して、フリーランスの情報屋、兼、傭兵にスカウト要請。

「アホか。」
枕にしがみつきながら、ネックレスのパールをさわる。
「カルヴァラン。」

この依頼を断れば、それなりのペナルティがあるだろうが。

「アホか。」



待ち合わせの場所に行く。
もちろん、武装などはしないで(と言いながら、折りたたみ式の手甲につける弓と、ダーツ、もちろん毒塗り)
それ以外、白いワンピース、サンダル。

弓は手に装備するのに手間がかかるので、基本ダーツの想定で。
バッグに入れ、わからないようにしている。

待ち合わせの場所から出てきたのは。

エレゼンの女性。

背の丈は自分と同じくらいか。
エレゼンとしてはかなり背が低いと思われる。
全体的なボリュームとしては・・・
胸が圧倒的に負けている、か・・・・。
服装もなんというか、給仕娘(メイド)のソレで、どうやって戦闘しているのかわからない。

グラマラスな彼女は、符丁を言い、ソレを返す。
「そちらに、フュ・グリューンお嬢様が居るとお伺いしました。」
ショコラのような、褐色ではなく、ほぼ夜の闇のような肌、冴え渡るような銀髪、燃えるようなオレンジ色の瞳

一度見れば多分、忘れないかも。

「あ、ショコラ?」
「フュ・グリューンお嬢様です。」
鉄面皮。


「あ、あのサあ。僕、アンタとお話、っていうカ、その、ナニ?」
正直。
この街のはずれの場所で、こんな変なやつと交渉というか、仲間にいれろ?
冗談じゃない。ソレこそあの茶色のトカゲか、冴えないヤツでいいじゃないか。
なんで僕なんだ?

「あちらこちら、探しておりました。本当に。」と目頭を押さえる。
「は?」
「いえ、給仕婦長の、ワタクシといたしましては。」
眼から滂沱のような涙があふれ出る。
「え?」
「いえ、ですから、お嬢様の身の安全を守りきれず、お館から逃げ出されて、それはそれは、心を痛め、日々、探し続けておりました。」

ああ・・。この情報屋って、もしかしてショコラ探しのために、ひたすら探してアッチコッチ行ってた、ってか。
しかも、手練。
おそらく、なんの戦闘訓練もしてないショコラに付けた、ボディーガードとして。

白いエプロンドレス、長い銀髪。そして夜の闇のような肌の女性。
鏡で見比べれてみれば、ものすごく似た様な、というか、正反対の女性。

「で、本題。ダ。僕達のグループに入るのカ?」
「当然です。フュ・グリューンお嬢様には、ワタクシが付いていなければ。」

うぜー・・・。とは心の中だけで。


「あいヨ。」

(ヲイ、キーファー。終わっタ。てか、お前ラだけで済ませヨ。)


(すまん・・・ショコラがあまりにも拒否するから・・。)と、青年。

(バカか、おまえラ。)と伝心を切る。

「ンジャ、よろしく。」
「はい。」

またヘンなのが来たなあ・・。
黒髪の少女は笑顔を見せつつも、内心、苦虫を噛み潰しまくっていた。


----------コメント----------

キーさんわざとショコラの弱みに付け込んだのかな?w

新キャラの活躍に期待!
Jonathan Jones (Masamune) 2012年11月19日 00:32

----------------------------

>ジョジョさん、いらっしゃいw
まあ、上からの指示だしw仔細を聞いて、たしかに子供っぽい仕返しになったのは否めないかもw
新キャラ、メイドさん登場ですw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年11月19日 02:48

<<前の話 目次 次の話>>

マユリさんの元ページ