406書き物。婚儀のあいだの一幕。2

「なあ、スゥ。一つ言っていいか?」

我が娘の婚儀の次の日。

グリダニアでは最大のカフェ、カーライン。
親友でもある鬼哭隊隊長の息子、および元隊員のミコッテの少女の婚儀。

グレイの髪を後ろに束ね、薄いブルーのワンピースのドレスの女性は、傍目には少女にも見える。が。
彼女こそは名を轟かせた「天魔の魔女(ウィッチケイオス)」

そして、その横に居る親友は、鬼哭隊隊長に就任したスウェシーナ。
こちらは栗色の髪、濃いブラウンのドレスだ。
「なによ、レティ。」
「いや、なにそんな滝のような涙ながしてんだ?」
「なっ!」
最近はその槍の冴えも凄まじく、「隕石の槍(メテオーア)」などと呼ばれている。
しかしながら、一人息子の婚儀とならば、このくらい感慨に耽ってもよかろうに。
真っ赤に目を腫らしながら、反論する。
「レティ、あんただってマユちゃんの、昨日の式のときは涙垂れ流してたじゃないの!」
「ほう、覚えておりませんな。」
「こいつ。」

「まあ、落ち着けよ、スゥ。収まるところに収まったんだ。祝ってやろう。」
「そうね。」

キスのお披露目が終わると、席に付いた二組にこれでもか、と祝福の手が伸びる。

娘を見る。
綺麗なドレスで(婚儀とは違うが)幸せそうな顔で、ニヤけてやがる。
まあ、あたしの時よりも、ニヤけ度がまだまだだね。照れてやがるな。

そして、隣のカップル。親友の息子と、信頼できる少女。どっちも少し表情が凍り付いているが。
まあ、あの頭の花飾りを欲しがって、何人も手を伸ばしているが、華麗に避けている。シャン。それは避けたらダメだろう。

そこに。

猛突進してくるルガディン。赤毛の彼は見た事があったかどうか?
とりあえず、この場的には・・・。

「せいッ!」
ハイキック。

華麗な曲線を描く脚。
続いて、前蹴り。押し出す。

流れるような蹴りのコンボの前にルガディンの青年は吹っ飛ばされて。

「ひどい・・・。」とだけ。

確かに酷かったかもしれないなー、とか思いながらも、まあ。いいか。で終わらせる。

「レティ。」
親友からのコメント。

「足技も達者になったのはいいけど、ドレスでやると後、知らないわよ。」

む。

確かに少しほつれた気がする。というか、ビリっって聞こえたような。

まあ、なんとかなるだろう・・・・・。

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