400書き物。終焉に向けて。

アッタマおかしいんじゃない?

飛空挺に乗った黒髪の少女、フネラーレ。

目の前では導火線に火のついた樽、それも酒場にあるようなものではなく、蔵にあるサイズだ。それを次々と放り出している。

下ではもう、なんの音だかわからないくらいの大音響が炸裂している。

海賊船アスタリシア号の始末。

船一隻沈めるためにここまでやるか。

全部で12個あった樽は全て投てきされた。
が、自分の見た目では直接的な被害はあの船には無かったはずだ。
せいぜい自分と同じく、耳が少しおかしくなったか、そのくらいだろう。

これでもしも沈められなかったら、最終的なプランまでいくかもしれない。
だが、それはまっぴらゴメンな話で。

その前の作戦。

船首に備えてある砲。

普通は船腹にあるものだが、機体、というか、船体自体が浮かせるために軽くしてあるのだろう。
横からの衝撃には、例え反動であろうとも転覆なり、行動自体に致命的な衝撃なのかもしれない。

そして。
砲の前提条件として、射角というものがある。
船首についている、と言うコトは、船体を横にするわけもいかず、ただ真正面に的をとらえるだけだ。
が、船腹に並んだ砲と違い、相対する船との総面積においてははるかに小さい。
だが、空を行く船にそのメリットがあるのかどうか。
「ア。」
つい声をあげる。
船が急降下し始める。
この高度からだと、かなりのものだ。おそらく砲を使うために同じ高度、つまり海面まで行くのだろう。
そうしないと込めた砲弾が転げ落ちてしまう。そんなマヌケなマネはすまい。

「砲手、撃ち方用意。」
隊長の掛け声。
かなりの高度から砲に支障の出ない角度とはいえ、何かに掴まらないと放り投げ出される速度と角度。
必死にマストにしがみつく。
そのうえで、甲板に屹立しているこの男は、ある意味驚異的といえる。
そして。
砲が放たれる。
轟音と共に出された弾丸は、狙いたがわず船の半ばに達し、轟音の後には海賊船から悲鳴が聞こえてきた。
だが。

相手の船からの報復射撃も当然やって来る。
こちらも2発ほど船腹に食らったようだ。
幸い甲板には被害はでなかったが・・。

「ようし!総員突撃準備!」
この船の砲弾はあの1発だけだ。まず爆雷で始末する、というのが大前提だったゆえ、とりあえずの、というところか。

そして。
今のキーワード。海賊船なら当然ある台詞だ。
が。
この船は軍船。
そして、船首にはラム(衝角、船を船に突き刺すための槍)が付いている。
ただそこにさっきの樽みたいな火薬が仕込まれている、ということ以外は。
つまり、この船を使って相打ちに持ち込もう、と、そういう事なのだ。

キーファーから聞いていた、その相打ちのキーワード。今、それが言われた。
他のクルーたちはソレを知らされていない。乗り込んで勝ちを得る。そう思っているだろう。

僕はソレを知っていた。

だから。



遠慮なく隊長の頭を撃ち抜いた。


「な!!!」騒然となるクルー。

「いいか、お前ラ。よく聞ケ。この船には爆薬がまだある。
そしテ、いま突っ込めば、あの船もろとも木っ端みじんにナる。お前ラも、だ。なりたいカ?」
「ど。・・どうすれば・・?」
「とりあえず逃げろ。」
「え?」
「機関部?ソコにとりあえず話しつけテ来い。そして、操舵手。
さっさと上昇しろ。お前ラまとめて死にたけれバ、このまま船を走らせろ。」
「ひいい!」

「で、では、我々はど、どのように報告すれば?」
「好きにすれバ?殺されそうになった僕が隊長を殺害した、とか、作戦失敗しました、とカ、いいわけは好きにすれバいい。」
「は、はい。でも、あなたの行動なくして我々の命が助かったのは間違いありません。感謝いたします。フネラーレ。」
「いいよ、ソンナノ。僕もさすがに自分の棺桶を用意するのを忘れていたダけ。」
「あなたの事は一切口外いたしません。他のメンバーも同じおもいだと思います。
それでは無事に帰還した後、しかるべき叱責及び罰則は我等が負担いたします。どうぞごゆっくりと休暇をお楽しみください。」

「そう。ありがとネ。」
気が付けば、メンバーほぼ総員で頭を下げていた。



カルヴァラン・・・・・。愛する人に想いを馳せる。





後日。冴えないマネジャーの青年キーファーが一つの箱と、手紙を添えてやってきた。
下着姿のまま迎え入れ、ペイを要求した後箱を開ける。
中には色とりどりのケーキやクッキーが詰まっていた。
そして。
「ささやかながらのお礼です。一同。」とのメッセージ。

ふうン。やるね。あいつら。

「あの・・俺は一応これは見なかった、ことになってますからね。それと、また依頼があります。
こっちは急ぎじゃないんで、明日、また来ますよ。」
そう言って出て行った。

「ふむ、このケーキはイケるな。今度ドコか聞き出させるか。」
スイーツに舌鼓をうちながら、彼と逢える日を心待ちにする。
この瞬間の少女の顔を見れば銀髪の青年はさぞ驚くだろう・・・・・


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少女の裸身よりも、最後の笑顔の方が嬉しい気がする・・w
Jonathan Jones (Masamune) 2012年11月03日 23:25

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>ジョジョさん、いい事言ったw
この笑顔のほうが、価値がある!
ただ、この二人の関係からすると、丁度いいのかも・・・
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年11月04日 01:44

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