381書き物。いろいろな事情。の2

ふぅ。

自室に戻り、お茶を淹れる。

「まーったく、こんな仕事回してくンなヨ。」

長い黒髪の少女は、カップにお茶を注ぐとたっぷりの砂糖を入れ、ぐいっとあおる。

「あっち!」


キャンプで二人をハリネズミ、もとい矢で串刺しにして、もう一人も似た様な、だがさらにヒドイ状態で始末。
そしてその前にアジトの急襲。
その前にも売人の始末と、今回はハードだった。
まあ、危険らしい危険はなかったが。

大弓の名手の少女は、神勇隊のイレギュラーメンバー。葬儀屋ことフネラーレ。

地図には載らない特区に宿舎というか、一軒家で暮らしている。

さあて、次の仕事が来るまでゆっくりするにはドコがいいかナ・・。

かわいらしい、というか、綺麗な顔をかしげながら思案する。
人形みたいなその容姿に反して、言葉使いは恐ろしく悪いのだが。

とりあえず、仕事用のパールからは何も連絡がない。
キャンプのど真ん中で始末した連中の後始末に追われているのだろう。
愛用の大弓「コフィンメイカー」を磨きながら、お茶をすする。

「ン・・、そろそろ弦の張替えしないトだめかナ。」

母の形見の大弓に、「棺桶製造者」なる命名をしたのは、
自身をフネラーレ(葬儀屋)と名乗り出してからだが、もうどれくらい経ったのだろう。

父の船、海賊船ペスカトーレ号が、アスタリシア号に沈められ、その時に自身の左眼をえぐり、復讐を誓った。
が、結局のところ、金色の呪眼をはめ込まれ、船長との決闘に敗れ、クルーになり。
しかも、その船の副長と恋に落ちてしまった。
なんとも複雑な人生だなあ、といまさらに思う。

「あーア、どうしようかナ。」

カップの中のお茶はもう無い。

しばらくは寝て過ごそう。決めた。今決めた。



服を適当に脱ぎ散らかし、明日あたり家政婦を呼んで洗濯させようと、寝台に潜り込む。

が。


パールから連絡が来た。

!!!

「カルヴァラン!」
最愛の人。
「予定より早く帰れそうだ。もう少し待っていてくれ。」
「うン!早く逢いたい!でも気をつけてね!」
「ああ。今のところは大丈夫だ。お前も気をつけろよ。」
「うン。」
「じゃあ、仕事があるから。またな。」
「またネ。」

にんまりした笑顔は歳相応の少女だ。

さらに、パールからの連絡。

この伝心に少女はいたく不機嫌に。

「仕事です・・・。」
連絡役の銀髪の青年、キーファー。
「知らなイ。」
寝台でごろん、と寝転がるとパールを放り投げ、眠りにつく・・・

<<前の話 目次 次の話>>

マユリさんの元ページ