374書き物。How can you expect to be seriously(本気かい?)

ふぁあああ・・・・・・

大きなあくび。


黒髪の少女。

見た目は長い黒髪、少し変わった前髪。
真っ直ぐに切りそろえた前髪だが、不自然に斜めになっている。
ちょうど左眼が見えないように。
色白の肌は、白磁のようだ。
細い体に、繊細なおとがい、黒い瞳とあいまって、見た目としては美少女といっていいだろう。
ただ、黒い前髪からかすかに見える、金色の瞳に気がつかなければ。

朝から叩き起こされて、不機嫌きわまりない少女は、このまま一日が過ぎたらマネジメントの青年をぶっ殺そうと、本気で思っている。
「アー・・・。キーファーの野郎・・・。」

海賊の生まれの彼女は、恵まれた容姿のわりに、言葉使いが恐ろしく悪い。
ついでに性格も恐ろしく短気だ。

事件の後始末めいた狙撃。

いわゆる暗殺だが、相手の居場所がわからない、というなんともマヌケな依頼を朝早く叩き起こされてするこちらの身にもなってみろ。

と、思いながら。

「来た。」

ターゲットは3人。ララフェル2人、ヒューラン1人。

東出口で、張ってただけのことはある、のか・・。
が、あえて見逃す。

主犯格ではなく、ララフェルの女。ただ、ターゲットには違いない。
帽子を深くかぶっていたが、この「眼」には関係ない。
「視た」それだけでいいのだ。もう逃がさない。
続いて来るであろう相手を待っているが、一向に来る気配も無い。

パールを使い。

「ヲイ?今一人飛び出していったヨ?ソッチはどうなノ?」
マネジメントや、サポート役の銀髪の青年にパールで連絡する。
「ギルドにはいませんね。やはり家にいるか、移動術式でキャンプに飛んだ可能性があります。」
「マテマテ。キャンプに行かれたら追うの大変じゃないカ!」
「はい、そうですが、彼らは戦闘スキルを持っていないそうです。なので、それほど遠くには行けない、という話ですが・・。」
「いいかげんだナ、おい。」
「まあ、一人づつ、ですか・・。捜索には、力を入れますので。」
「当然だロ。ついでに言えば、今見つけたヤツを一人だけ始末すれば、ヤツら、もっと隠れるゼ。」
「・・・・そうですね。。。」
「ターゲットはした。もうアイツは逃げれなイ。次を探すか。僕はキャンプ・ベントブランチに行ってくる。お前、モスに飛べ。」
「えー・・・!」
ろくに戦闘スキルその他も持っていない青年に告げる。
「行ったコトあるだロ?」
「あります・・・。」
「行ケ。」
「はい・・・。」青年からのパールの伝心が終わる。
「ふぅ・・。」


少し走るか・・。


心地いい風が胸に入ってくるが、その心地よさとは真逆の仕事がある。

キャンプに着くと、例のララフェルが二人に増えていた。
と、言うコトは、残りはヒューランだけ、と言う事になる。

「モス、居るかナ?」

さて。


愛用の大弓。「コフィンメイカー(棺桶製造者)」母からの形見。
自らの船を沈められ、この弓一つでいろんなものと戦ってきた。
そして、リッラと言う名を殺して、フネラーレ(葬儀屋)とまで名乗ってきた。
それにふさわしい名前が要るだろうと、古い大弓に名前をつけた。


「じゃ。」

大きく弦が張る。

「死ネ。」

新米パーティや、いろいろ人が賑わうキャンプのど真ん中に、
ララフェルの女が頭に何本もの矢を生やして倒れこむ。

「ひ・・。」
男のララフェルが逃げ出すが・・・。


「眼」に囚われている以上、逃げようも無い。

音も無く。

後頭部から眉間に抜ける矢。

「ヲイ。二人始末しタ。そっチは?」


キャンプは騒然となっている。いちいち説明するのも手間だ。アイツに任せよう。
周りを見れば、蘇生術式を使おうとする冒険者がいるが、即死していれば意味が無い。
もちろん致命傷しかあたえていないので、全く無意味だ。

「じゃ、ネ。」と移動術式デジョン。




「これは、ちょっと事件ですよー・・・。」と
銀髪の青年。
「なんでキャンプで殺害したんです?」
「眠たかったかラ。」
「は・・・ぁ・・・」ため息がパールからでも分かる。
「最後の一人もなんとか足取りがつかめそうです。
こうなれば、もう好き放題しちゃってください。まとめて報告しますから。」
「ふううン。」


少女は黒髪を弄びながら、報告を待つ。

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