371書き物。Can you forgive her (彼女にできるのかい?)

グリダニアの早朝。
というか。
明け方に近い。

そもそも、森の街グリダニアは陽が上っても、木々に囲まれているせいで朝が遅い。
そのため、住人達もかなりのんびりと生活しているのがほとんど。

少女はそんな明け方に起こされて、昨夜の労働の疲れもとれていない、と自分に言い聞かせた。
「僕は眠イ。」
長い黒髪を枕に散らばらせ、一度は起きたものの、もう一度眠りを貪るために倒れこむ。

マネジメントをしている青年が何やら言っているが、気にしない。

が。

「ペイ(給料)がアップ」の単語には少し惹かれたので、がばっと起き上がる。

銀髪の青年キーファー。見た目は冴えないが、色々冴えない。
こちらをあまり見ない青年もこの時はさすがに顔を向ける。

(ンー・・・3人ぶっ殺せばいいのネ・・・)
説明を聞きいて、ぽりぽりっと頭をかく。
自身を見やり、うン。
肌が透けて見えるような薄い素材の寝着。
よシ。
一気に脱ぐ。

白い裸身がさらされる。

小振りな胸だが、全体的には人形のように綺麗にまとまっている。
白磁のような肌もそう思わせるのかもしれない。
それに長い真っ直ぐな黒髪もあいまって、等身大の人形のような気もする。

「あ、見たネ?」

銀髪の青年に。

もちろん確信犯でやっているので、見られたところで恥ずかしくもなんともない。

寝台の上で上半身を裸にしておいてなんだが、この青年とはこういう関係だ。
もちろん、肉体的な関係は一切ないが・・。

「ペイ上げろヨ。」

見物料、というわけだ。

青年はうなだれながらも、ペイ分の眼福だけはとしっかり見てくるのでシーツを纏う。
「はぁ・・。」とため息が聞こえたが、気にしない。
「着替えるかラ、出ていきナ。」

「はぁい・・・・。」とションボリな青年。





寝台から降りると、まずは姿見の横にある水桶で顔を洗う。
「うーン。寝ぼけ顔だナ・・・。」

このサイズの鏡が置いてあるという時点で、彼女の家はちょっとした上級なのだが。
「ペイアップ、か。いい話だネ。」
顔がほころぶ。

さて、水浴びもしたいところだが、この時間にわざわざと言うコトは、急ぎだろう。
もう一度内容を頭で繰り返す。

園芸師ギルドのメンバー3人の殺害。

ドコのダレだか、もう一度確認しなければならない。街を出てからがいいのか、そうでないのか。
とりあえず、仕事用の装備に取り掛かる。

いつもの黒いチュニック。これは明け方だと逆に目立つだろう・・。
「汗臭いから洗濯しないとネ・・・。」
ということで、草色のチュニックを取り出す。

ブーツや、その他。

そして、愛用の大弓「コフィンメイカー」名前は彼女がつけた、母の形見でもある。

「よシ。」
姿見で一応の確認をする。

バン。
ドアを開けて、マネジメントの青年キーファーから、事の詳細を尋ねる。

「ああ、コッチが似顔絵です。それと、できるだけ街の外がいいんですが、逃げられたら意味がないので、臨機応変ってコトで。」
「ララフェル二人に、ヒューラン一人、か・・・。」
「はい、主犯格はこのヒューランの男なので確実に仕留めてください。」
「まとめて居るのカ?」
「どうでしょう・・。普段は普通に園芸をしているので、一般的な家にいるかもしれません。」
「なンだよ、そこ重要だロ。」
「すみません・・・。」
「別々に逃げられたら、追いかけるノ大変ダろ?」
「はい。ですので、鬼哭隊に連絡して、出口の封鎖をしています。
あえて東側だけ空けていますので、抜けるのならベントブランチ方面だけですね。」
「移動術式は?」
「はい、彼らはグリダニアから出たことがほとんどありません。なので、近辺のキャンプ、そうですね。
エメラルド・モスくらいなら飛べるかもしれませんが。おそらく一般的なギャザラーとして、街から逃亡するでしょう。」
「ナルホドネ。」

「まずは探し出しましょう。ぼくも手伝います。」
「ま、一回でも見れば逃げれないからネ。」

「呪眼」
一度視れば、意思で切らない限り、永遠にどこにいるかが分かる上に、
ドコを狙えばいいのか、狙いたい場所を精密に教えてくれる能力。「ターゲット」
さらに、暗闇だろうが、閃光の中だろうが、普段と同じ以上の視力。「ノクトアイ」
視覚に入る限り、この「眼」からは逃れる事が出来ない。

彼女自身は知らない、もしくは知りたくないだろうが、知ってしまう能力。
「イージスシステム」
全ての魔力と引き換えに、ターゲットされた相手に、不可避の魔力の矢を撃ち放つ。
それは数百人だろうが、お構いナシに放たれる、絶対死の矢。
代償として、魔力を使い切った体は「眼」に喰われる。
汚泥のように成り果てるか、干からびて炭のようになるかは、使ってみてのお楽しみ、というわけだが。


とはいうものの・・。ギルドはこんな時間でも、というよりは、この時間が通常営業の開始という、なんとも早い時間。
「すみません、こういう人、今日は来てません?」
似顔絵を見せて、受付に聞く銀髪の青年。
「さあ?多分、みてないね。」
「すみませんでしたー。」と去っていく。

その頃少女は東出口付近で鬼哭隊の隊員に聞いていたが、情報がなかった。

「あー。。。。。。面倒だナ・・。帰って寝たいヨ。・・・・。」


そろそろ本格的に朝になる・・・・

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