369書き物。Domino dancing(ユカイに倒れる奴等)

ん・・・・。



んん・・。む・・・・

ん・・。

まどろみの中。

「フネラーレ!!!」

ドアがバン!と開く。


がす。がす。がす。


ドアの近辺、もっと言えば、ドアを開けた銀髪の青年の頭をすれすれに、3本の矢が壁に刺さる。
丁寧に、両耳、てっぺんと中るスレスレのところ。
言葉も無く立ち尽くす青年に、さらに矢が飛んでくる。
今度は、両腕の形に左右3本づつ。さらに両脚にも3本づつ。

今ヘタに動けば、串刺し確定なのがわかってくる。
どの矢も、中るぎりぎりのところなのだ。
そうして矢は増えつつ。

綺麗に人の形を壁に作っていく。



寝台でうたた寝していた黒髪の少女は、愛用の大弓「コフィンメイカー」を持ちながら、寝ぼけ眼で・・。
「なニ?」


(え・・・。今の・・・・寝ぼけてて・・・。しかもこの精度・・・・。怖えええええ!)
銀髪の青年キーファーは、腰を抜かすようにしてペタンと座り、後ろを見る。
綺麗な人型は、自分のシルエットだ。
(今度からは絶対起こすときにはドアを棒かなにかで叩いて起こそう・・。)
この物騒な少女のマネジメントをしている青年は、しばらく動かないまま強くそう思った。

森の街の中にある一軒家。

グリダニアの誇る神勇隊の敷地であるにもかかわらず、この家は「無い」事になっている。
宿舎でありながら、地図にすら載らない区画、特区なのだ。

その家の住人もまた、イレギュラーメンバーとして、裏の汚れ仕事を担当している。
それが、黒髪の少女。通称「葬儀屋」
基本的に、森の警備、及び外敵に対して結成されたこの隊は、
街の警備を担当する鬼哭隊と活動の場を同じくすることはほとんど無い。
が、鬼哭隊は警邏任務やその他で、犯罪者などを捕縛することが多く、殺害には至らない。

が、中には大金に物をいわせ、拘留から抜け出す者も少なくない。
そういう犯罪者の始末。
これをこの少女は請け負っている。


「ふぁーあああァ。キーファー?」
腰を抜かしている青年に。
大弓をつかんだまま、大きくあくびをして、ついでに伸びをする。
「あ・・。あの・・。寝ぼけてたんですよねえ?」
声が震える。

「へ?」
少女は本当になにも知らない、という表情で、ぼぅっと見つめてくる。

「いや・・。その・・コレ。」と後ろを指差す。
壁には矢で出来た人の形をしたオブジェ。おそらくは30本は刺さっている。

「ン?」

ゆったりとした寝着のまま少女は少し眼をこらし・・・。

「知らなイ。」と真顔で言った。


え・・・。
この少女が眼をこらしてまで「視て」知らない、となると、いよいよもって死に掛けた、ということか・・・。
黒髪の奥にある「眼」。彼女はそれでもってこのイレギュラーメンバーとして採用されているわけで。
この「眼」で視られたら、死は確実。とまで言われている。
もちろん、実績あっての事なので、だれも冗談にはしない。

肝を冷やしつつ、マネジメント担当として・・・。
「その、今回の件でのペイ(給料)のアップはOKが出ました。ただ・・。」


「ン?・・」
眠そうな眼をこすりつつ、少女は青年を見つめる。
透けるような薄い素材の寝着は、少女の体のラインをはっきり見せるが、キーファーはできるだけ見ないようにする。
恥ずかしいわけでもなんでもなく、ペイのアップを「見物料」として要求してくるからだ。

「たダ?」

「今回の薬物の売り出し人は、おそらく全て始末できたと思われます。が。
そのモトになる薬草の栽培をしている人物が、園芸師ギルドのメンバーでして・・。」

「ふうン。」

「件の隠れ家から、ソレらしいリストを確認しました。彼らは襲撃の情報をすでに察知して、逃亡を図っています。」

「彼ラ?」

「はい、3名です。まだグリダニアからは出ていませんが、すぐにでも逃げ出すでしょう。」
「鬼哭隊に任せておけヨ・・・僕は眠イ・・。」

ぱたん。と寝台に倒れ長い黒髪を枕に撒き散らすように。
少女は眠りに就こうとする。


「それが、ダメなんですってばっ!」

「ナーニー?眉間に矢が欲しいのカ?」
物騒な脅しだが、先の事件では眉間に矢が刺さっている死体をいくつも見ている青年は、
冗談ではない、と後ろの壁にできた矢のアートを見る。

「鬼哭隊では、封鎖はできますが逮捕の理由が作れません。
証拠はこちらで提出できますが、おそらくその間に逃亡するでしょう。
幸い、彼らはグリダニアから出たことはほとんど無いので、
他国に移動術式で逃げることはできない、との事です。」

「めンどー・・・。」

「正式な依頼です、給料アップのためにも頑張りましょう!」
眼福出費もそろそろ今月はツラくなってきたキーファー・・・。


「しょうがないナあ・・。」少女は、がばっと起き。
寝着をがばっと脱ぐ。
もちろん上半身は裸だ。
「あ、見たネ?」



もう、勘弁してくれ・・・。
そう思いながら、しっかり値段分は見させてもらう・・。

これからサクサクと倒されていく犯罪者に、少しの哀れみを感じながら、少女は着替え出す。

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