342書き物。少女の時間・・・・・・。

「あ・・。」

唇を離されて。


少女はかすかに残る体温をいつまでも忘れないと決めた。


クルザス。

帝国軍や、そこらへんの魔物でも十分脅威になる、アルデナード地方。

その怖さに反して牧歌的な草原は、リムサ・ロミンサのあるラノシア地方にも似ている。

そうして、似たような。いわゆる草食系の動物が多い。

もちろん、魔物並みの強さを持った獣もいる。
が。
中には、大人しく、見た目も和めるやつらも居るわけで。

「そうそう。」
金髪のクセッ毛の少年は、一つの袋を取り出し。

「こういうのが出てきたんだよ。」
NM ノートリアスモンスター。悪名高い魔物。

それが、ついさっき現れたのだ。
モコモコの羊に混ざって。

一体だけ黒いのですぐにわかるその羊は、見た目はともかく十分に悪名高い。
だれが取り付けたのか、その羊には首に袋が提げられていて。
それを撃破した少年が。

「え?」
あたしは、ワケがわからず・・。
ナンだそれ?

「うん。これがお土産。」
満面の笑みの少年。

「あ・・。ありがとう・・。」
何が入っているのか全く予想がつかない。
そもそも、これがNMの品なんて、想像すら出来ていない。後から聞いたのだが。

取り出す。

胸元にフリルのついた、かわいいジャケット。

少し、胸元開きすぎじゃないかな・・・?
んー・・・。
紺色に、白いフリル。あとはいろいろとお洒落な細工が。
とりあえず、今の胸元を見て、ジャケットを見る。
うーん・・・・・。かわいいんだけど・・・。その・・。少し自信が・・・。

「着替えてごらん。」
目の前の少年は屈託無く、そう言った。

「うん。・・・」
そう言われると、着たくなってしまう。

革のジャケットのリベットボタンを外し始める。
半分以上ボタンを外し、下着が見え始め・・・。

「おいおい。まあ、おれはいいんだけど。」
少年の言葉に。

「あ!!!!」


慌てて胸元を押さえ、岩陰に行く。
見られた・・・。
「うー、あああー。」
うめきながらも、着替えは済ます。

どうかな・・?少し、おもった以上に積極的なデザイン?
そして、胸元以上に、腰周りがスースーしているのに気がつく。
しまった・・・。

脚の装備はサブリガしかない・・・。

でも・・・。ここでお披露目しなければ・・・。

ヘンな義務感を覚えつつ、裾だけはしっかり両手で押さえながら。

岩場の影から顔を出す。

目の前の彼は、にっこりと。
「かわいいよ。」と。

顔が赤くなるのが一瞬にして分かる。
むああああ!はずかしいい!!!!!

「マユ?」
少年の声に
「見ないで・・・。」
もう顔が爆発寸前にまで赤くなっている。ボムが居たら対決したいくらい。
「もう・・・。」かろうじて声に出す。

「じゃ、な。」
え?

えええ?

少年は剣を携えて、また違う場所に行こうとする。

さっきのキスと抱擁はなんだったの!
「え!!!そんな!!」

頭の中が混乱する。

そうだ。カナルから買ったサンドイッチがあるじゃないか。
とりあえずはコレでのりきるんだ!

「サンドイッチ!用意してきたの!一緒に食べよ?」
昼前の昼食。こういうのもいいよね!
一人頷きながら、彼の顔を見る。

しょうがないなあ、と言いたげだが。
「そっか。いいよ。」

二人の時間は過ぎていく。

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