331書き物。少女の驚愕と・・。

明け方も近い、黒衣森。

蒼い光に包まれて、キャンプ・クリムゾンパークに着く。

僕は、周りの鬼哭隊連中に。
「あの感じワルい隊長殿はドコだよ?」
と聞く。

「なんだ、お前!」と、マヌケな隊員が聞いてくる。
「いいから言えヨ。」
「この、小娘が!」と槍を見せびらかす。

僕の事を知らないのか。まァしょうがないネ。
背の愛弓を手に取り。
矢をつがえる。

「一騎打ちかイ?」
にっこりと微笑んでやる。僕と張り合うとは。いい度胸だ。

先日とは違い、いつもの黒いチュニック、大弓、という「葬儀屋」のスタイルだ。

「ふ、そんな大弓で・・。」
「ふン。僕は機嫌が悪い。それでいいナ?」
「ああ?」

そこで横槍が。
「おい待て!その人は神勇隊の方だ。それもかなり手だれの!お前、死にたいのか!?」
と、上司だか、先輩だかが。
「チ、売られたケンカ買ッたトコロだよ。まとめて相手すル?」
いい加減、我慢の限界だ。
「いえ、すみません。本当に。ちゃんと言い聞かせます。フネラーレ。」
「ふうン。だったら隊長殿の場所を言いなヨ。」
もう一人の隊員の頭を押さえつけながら、古参の隊員は、具体的な場所を教えてくれた。

「そこの坊主。次はネぇぞ?」
まったく。まったくもって、なってねェ。
ぬるいネェ。
海賊稼業だと、それこそ今ので、この世とオサラバだ。
「まあ、イイか。」
黒髪を走る風に任せつつ。

コッチ・・。




「おい!」キャンプの駐留兵。
「なんですか!あの小娘!生意気な!!」と。
「お前、新入りだろ?」
「ええ・・。」
「彼女が、通称フネラーレ。葬儀屋だ。ケンカを売るなら棺桶の準備をしておけ。後は彼女がちゃんとしてくれる。」
「・・・。」




暗がりの森を走る。
だが、問題は全く無い。

「あのオバサン、どこだ?」

ドオン。暗がりに炎が立ち上る。

「なに?」


轟ッ!
すぐ近くに、見たことも無い、背の高い機械の塔が飛んでいた。

「はァ?」
こうなると、矢が一本中ろうが、なんだろうが関係ない気がしてくる。

アスタリシアの砲撃でも頼もうかナ・・・。真剣に考える。

だが。

「ふーン。ちゃんと居るじゃンか。」
金色の瞳が捉える。

飛んでいる機械の甲板らしき小さな出っ張りに。

「いい子だネ。これなら地獄には行かないヨ。」
矢を放つ。

高速で飛ぶ帝国の機体に、矢が放たれる。

「あ、落ちちゃった。神の国にはいけなかったネ。」
射抜かれ、落下した帝国兵に向けて。

とりあえず、ここでの狙撃は後にしよう。場所も特定されたかもしれない。

少し行くと見慣れた広場。
神勇隊は、基本的に森の警備や、外敵の駆逐。
鬼哭隊は、街中の警備や、治安。
なので、なぜ鬼哭隊がこんな役回りで、やっかいな敵を見つけたのかが、イマイチ分からない。


そして、その広場では。



複数の鬼哭隊隊員が地面に倒れ伏し。

大槍を構えた隊長。スウェシーナ。
横には。
あのうっとおしい魔女。レティシア。

その二人の前には、なんだか、デタラメに工具を繋ぎ合わせたような人形が。

「!」スウェシーナがこちらに気が付く。
「助けにきてやったゼ?」と弓を構える。
「出番があってよかったな、小娘。」と魔女から憎まれ口を叩かれ。

「オバサン達じゃ任せきれないってヨ。」
実際、状況的には五分五分以下だったろう。

しっかし、さっきの飛んでるヤツとか、最近は物騒だネ・・。

矢を放つ。

カン。はじかれる。
「ッ、なンだありゃ。」

「見ての通りだよ!殴るにしてもちょっとね!」
魔女が珍しく弱音?か?
「関節に上手く入ればダメージが入る!」と、槍を振るう。
そうイうコトか。なるほど。
「僕に任せておきなヨ。」

金色の左目に気を向ける。

ガラクタ野郎の腕の関節がよく見える。

なんだ、この程度なラ。

一番重い矢をつがえて。

がしゅん。

中る前にもう一本の矢が放たれる。

がしゅん。


ガラクタ野郎の両手はもう動かない。

「後は殴り倒しチまえよ。お得意だろ?」
僕はとりあえず弓はしまい、遠目に見ている。

「ちょっとー!あんたもソコで終わらないで、その辺りに倒れてる隊士たちをなんとかしてくれない!」

あー。そういや居たナ。

周りを見渡す。

<<前の話 目次 次の話>>

マユリさんの元ページ