322書き物。少女の・・ちょっとした・・。悪戯。

熱い空気が吹き抜ける。

ここはウルダハ。

砂塵が風に混じる、栄光と敗退の都。

その酒場兼冒険者ギルドで情報を得た二人は、ルビーロード国際市場に出てくる。

「ねー?」
「どうした?」
黒髪の少女は、いつもの黒いチュニックではなく、この前買った白いドレスを着ている。
長い黒髪は腰まで届き、襟の黒いリボンともよく似合っている、とエレゼンの男性は思う。
「んー?」
大きく開いた胸元を見せ付けるように少女は。
「惚れなおしチャったかナ?」
「どうしたんだ?」怪訝なエレゼンの男性。
「ンー・・これから行くお店でサ。欲しいのあるかもだかラ。一緒に選んで欲しいなあって。」
長い黒髪はさらりとしていて、ドレスから零れ落ちるように首を傾げる。
「まあ、いいだろう。」
褐色の背の高いエレゼンの青年は、青いジャケットからブラウンのものに着替えていたが、存在感は隠せない。

酒場でのやり取りの後、一度宿を取り、着替えてからの・・。

「もう一回したかったナー・・・。」
などとこぼす少女の口を押さえたかったが。

目当てのお店は割りとすぐそばに。

「下着屋」


目頭を押さえる、エレゼンの男性。
「ねえ。カール。ここのお店ってどうかな?」
ララフェルが店長を務めるこの店は、それなりに有名だ。が。
それなりに腕のある冒険者からすれば、少し物足りない。


「なあ、リッラ?」
「なあに?」とても複雑な表情の彼にあえて無邪気に答えてみる。
「行きたい店というのは、その、ここか?」
「そうよ?なンか問題ある?」首を傾げる。
少女の笑みは、おそらくそのまま通りがかった男性数人を釘付けにするだろうし。
実際、両手では足らないくらいの男性が足止めされている。


「リテイナーの方に行こう。」
やはり、他人の目が気になるカルヴァラン。

(下着、か・・。)
横の少女を見やる。
(はぁ・・。本人さえ可愛ければ、身につけているものなど・・・。)
女心がまったく分かっていない。

白いドレスは確かにとてもよく似合っている。
そして、下着選びなどどうしていいかわからない・・・・。



(ふふふふふー!)
密かに笑みを浮かべる。
今回の悪戯は、おそらく成功だろう。
このままリテイナーで気に入った下着をオネダリして、それを目の前で披露する。リテイナー達の見ているところでだ。
これであの鉄面皮も、おそらくはビックリするだろう。
なんせ、この後数ヶ月逢えないのだ。
パールでのやりとりはしているとはいえ、そろそろ神勇隊からも仕事の話が来るだろう。かなりの時間を空けている。
このくらいの冗談は・・・。
「まてよ・・。」
このオカタイ彼氏は、そこまでやると少しダメだな・・。
しょうがない、今夜に改めてお披露目、といこうか。

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