313書き物。幻術師の・・。想い。

目の前の少女は、銀髪のミコッテ。
その耳は、ぺたんとなって息も荒い。

「あの?」

「はぁはぁはぁ・・。」

グレイの髪の女性は城門の手前でへたり込んでしまった少女に声をかけてみた。
グリダニアとの境界。

「あの・・。大丈夫?」
女性は、自分の娘とそれほど歳の変わらなさそうな少女にもう一度、声をかける。

「大丈夫じゃない・・。の・・・。」

青いローブの少女は、耳と尻尾をうなだれさせ、顔だけを上げる。

「どこか怪我してない?主人がすぐそこにいるわ。ちょっと呼んで来るわね。」
急いで振り返ろうとする。

「あ!違うの!わたしじゃない!」
「へ?」
一般的な主婦の彼女は、どういった事を求められているのか分からない。

「とりあえず、主人を呼んで来るから。」



「む・・。どうしよう・・・。」
自分は幻術士として、何がしたかったのだろう?
先日の姉との会話で、少しはわかった、とおもっていた。
実際の自分は、足手まといでしかない。
先の護衛の二人すら、わたしのために身の危険を顧みず・・・・。
「助けに行ったほうがいいのかな・・・。」
サ・ヴィントは、どうしていいのか分からなく。
「助けに行くべき、だよね・・。」
銀髪の耳がピンと跳ねる。



「あ、いたいた。あなた!この子。」
グレイの髪の女性と金髪の男性。

「君!大丈夫か?」
「はい。ですけど・・。護衛についてきてくれた方たちが・・。」
「森の方か。」
「はい。」
男は苦い顔で・・。「すまないが、それには応じられない。君もこの城門を超えることは難しいかもしれん。」
「そ、そんな!じゃあ、わたしが戻ります!ありがとう!」
「待て!」



結局二人で森の中に入るが・・。
「移動術式で帰った、か。」
戦場だった場所には、怪物の死体が一つ。それ以外は無い。
「はぁ・・。よかった。」少女はため息一つ。
「とりあえず、長居は無用だ。君も術式で帰りたまえ。」
「え・・。いや、その。」
「ん?」訝しげな男性。
「アラミゴに、その用事がありまして・・。」
「まあ、詳しい話はここから戻ってからにしよう。」



家の中。
「まあ、まあ。今夜は泊まって行くといいわ。」
アラミゴの居住区。
「あの・・。」銀髪のミコッテの少女。
「あ、自己紹介が遅れたわね。あたしは、アナスタシア。主人は・・。」
また城壁の警備に戻った主人の紹介はさておいて・・。

「あ。わたしも・・。サ・ヴィントです。」
「よろしくね。」
「はい。」
「あ、娘がいるのだけど・・。レティシア!起きてる?」
「あああ。いいですよ。そんな。」
「歳も近いから、お友達になってくれたらいいかなと・・。」
「はい。また次回。」
「また来れる?」
「たぶん・・。お仕事もちゃんと終えたし。」
親書を届ける、という仕事はちゃんと果たせた。次回からは、検問で捕まることはないだろう。
「ヴィントちゃんは、魔法が使えるんだっけ?」
「はい。」食後のおやつのチップスを頬張りながら。
「今度、あたしにも教えてね。」
「いいですよ。」
「うちの娘も、なんだか隠してるけど魔法が使えるみたいなのよね。」
「それは・・。是非グリダニアに留学してくれれば。」
「そうかもね。」微笑む。

夜も進み。二人は寝室に・・・。
「おやすみ。アナスタシア。」
「おやすみ。ヴィント。」



シ・ヴェテックトは、二人の寝室に戻ると、空いている寝台を見て。
「食費が浮くのはいいことだけど。この先ずっと浮く、なんていうのはやめてくれよ。ヴィント。」
ローブを脱ぐと、壁にかける。隣にかかっているはずの青いローブが無い。
「リンクパール、か。持っていないと少し不安になる、か。」
(明日、パールを申請しにいこう・・。)
灯明を吹き消し、寝台に身をゆだね、眠りに落ちる。

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