碩老樹瞑想窟。
グリダニアきっての、不可思議なもの。
大人数人でやっと抱えることが出来るほどの巨大な大樹に鎮座する大岩。「おろち石」
大樹自体は幹しかなく、それも根に近いところ。
それを台座に見立てたのか、おろち石が居座っている。
その中には、幻術士ギルドがあるのだが。
「すみません。シ・ヴェテックトです。妹のサ・ヴィントを迎えに来ました。」
銀髪の少女はミコッテらしくなく、あまり尻尾や耳で感情を表現しない。
「あ、少し待ってください。確認しますね。」受付嬢のララフェル。
待つことしばし。
「お待たせしました。あの・・。サ・ヴィントさんは、もうお帰りになられたみたいなんですが・・。」申し訳ない顔。
「ザフィーア師は？」
妹の師にあたる。もちろん、自分も面識があるが・・。
「あ、師に確認をとりました。いわく、「やる気がなさそうだから帰らせた」、だそうです。」
「あの・・ばかが・・。」拳を握り締める。
「その・・。」ララフェルの受付嬢は、どうしたものかと、左右を見渡す。
「悪かった。妹の不始末、重ねてわびる。」腰を折り、丁寧に詫びる。
「いえいえいえ、そういう事は・・。」逆にお辞儀をしてしまう。
（何をしているんだ、あのバカは。）
「ザフィーア師。」
ヒューランの壮年の男性に声をかける。
「ああ、君か。」
銀髪の耳もうなだれるように。
「大変失礼をいたしました。」
「いや、君のせいではない。彼女の資質の問題だろう。」
「躾を間違えました。私の責任です。」
「何を。君だってまだ年頃の娘だろう。もう少し自分も楽しめばいいのじゃないか？」
「な、何を・・。」
「あの娘は、自由奔放だな。それがかえっていいのかもしれない。精霊達と自由に戯れるには、そういう素質があるんだろう。」
「そう、ですか。私は・・。」
「君は君で自由にすればいい。ただ、あの娘が自由すぎない程度に枷となる必要はあるかもな。」
「はい。師。ありがとうございました。」
頭を下げる。
「あのバカ、見つけたらとりあえず殴る。」
珍しく感情を表に出す少女。
「むー。」
今、奢ってもらった香茶は、とても美味しく。
ゴツっ。
カーラインカフェに、少しの沈黙が訪れる。
「お・・。おねえちゃん・・・・。」
銀髪の少女は、突如襲い掛かった悲劇に、「姉」の名前をつける。
「あなたね。」
「ひゃい。」
「自分が何をしたのか、分かっているの？」
「お茶を飲んでます。」
ゴスっ。
二撃目のゲンコツに、銀髪の少女は、耳も尻尾もへたれるがままに・・。
「おねえちゃんのばかー・・・。」
「お前が馬鹿だ。」
「あの、ヴェテックトさん、あんまりお姉ちゃんをなぐらないで。」
エレゼンの少女。給仕の手伝いをしている。
「ん・・。そうだな。すまない。」なんとも、バツが悪い。
「おい。ヴィント。」
「あい。お姉ちゃん。」
「少しくらいなら贅沢もできる。」
「え？」尻尾が跳ね上がる。
「だが、やはりやめておこう。」
「え？」尻尾が垂れ下がる。
「だが、まあ、今日くらいは少し贅沢をしたいな。」
「！！！」
目の前の妹は、口元からよだれが垂れそうなのを気にもしていない。
「お前な・・。」
キラキラした目に、返す言葉も無い。
独り身でも、存外、悪くはないな。妹がいる。
独り立ちでもしたら、弟子が取れればいいな。
赤いローブのミコッテの少女は、銀髪をかきあげ。
「私にも同じ茶をくれないか。」とエレゼンの少女、ミューヌに。