281書き物。一戦の後。

ミコッテの少女、ミュ・アハートは目の前の光景に目を丸くする。

仕事はといえば、グリダニアのカフェ「カーライン」での給仕。
主に、接客と相棒であるはずの赤毛のヒューランの少女、イーリスの手綱を握ること。

「ああ、もう!イーリス!」
「あ、ごめーん。オーア。」

「オーア」と呼ばれるのは「オーアリール(ネコミミ頭)」浮ついてるから、が理由だそうだが、間違いなくイーリスの方が浮ついている。

おっちょこちょいだが、店での人気は一番のイーリスの手綱どころではない、今日一番の修羅場。
それこそ、ミューヌ店長ですら凍りつきかねない、そんな光景。

夜も更け、来客自体はそれほどではないが・・・。

カウンターに3人。

この度、「副」が取れ、「隊長」に任命されたスウェシーナ。
叙勲式も済み、お祝いモード炸裂中。

「天魔の魔女」こと、レティシア。何かと人間離れした武勇伝をいくつも持つ。

「呪眼」のフネラーレ。神勇隊の一員だが、客員扱い。それも海賊あがり。
密偵なのでは?との声に、「僕に勝てば教えるよ。」など、挑戦的だが、実力の方は申し分が無い。
見た目はまだ先の二人の子とさして変わらない、ようだが?


「あー・・・。レティ?」目出度く隊長になった女性。
「なんだ?スゥ?」魔女。
「その。なんていうかさ。この組み合わせって、ちょっとオカシクない?」
「そうか?神勇隊のエースだぞ?それも非合法の。」
「ソコがオカシイってんじゃないのよっ!」
「つまらん奴だなー。せっかく勝った条件として、一杯付き合え、って誘ったのに。レアものだぞ?」
「あんたの面白さ最優先で呼ばれたこっちの身になれ。」
「ミューも固まりまくってるな。」
「給仕の子達もね・・・。」

「ヒドイいわれようだナ。僕が何かしたか?」
夜を切り取ったような少女。
その不自然に切り取られている前髪で左目が隠れている。
白磁のような白い面には、表情が無い。

クイっと、ワインを空ける。

「なンで僕を呼んだのか、ソッチの方がどうかしてる。」
「面白いから、に決まってるからじゃなーい。」
「嗚呼・・。就任早々、なんでこんな目に・・。」

「あの・・。その・・。」女主人。硬直から少し立ち直って、注文を聞く。
「あ、ミュー。せっかくだ。もう一本ボトルくれよ。」
「はい・・。」いそいそと用意する彼女は完全に空気に呑まれている。



「ミューヌさん、・・・お気の毒に・・・・。」
オーアは、両手に皿を持ちつつ、イーリスの監視も怠らない。
案の定、お客に掴まって世間話に興じている。
「イーリス!」
まったく。目が離せない。カナルが居てくれればもう少し楽なのに。
「そういえばカナルのお父さんって、神勇隊、だったっけ?」
カウンターの黒い少女につい目が行くが、その前に注文だ。
イーリスに両手の皿を投げつけたくなるが、そこはお仕事。
意外とソツなくこなしていく。


「で。だ。お嬢さん。」魔女が切り出す。
「僕、のコトでいいんだよね?」白磁と夜の闇の少女。
「私にはそう言う事言わないから。こいつ。」鬼哭隊、隊長。
「お前、何しに来た?」
「お仕事。でいいンじゃ?」
「この1年ほど活動、目撃?らしきもの。主にその目撃者はスグ横にいるんだけど。」
「あたしかよ。鬼哭隊、何してんだ?」
「街の防備。」
「で?お遊びするンならもう一回外に出るか?隊長さんが相手でもいいンだぜ?」
「勝率はたしか五分五分だったな?スゥ、この際勝率上げて来いよ。」
「やめとく・・。」
「ち、つまんね。」
「僕の出番はコレまででいいのかナ?」
「本題飛ばしてんじゃねえよ、このガキ。」魔女の眼に力がこもる。

カウンターの女主人はそそくさと裏方に逃げてしまったため、今は3人。
給仕の女の子二人は見て見ぬ振りで仕事にいそしんでいる。

「アァ?」左手で髪をかきあげる。「呪眼(オッドアイ)」の由来となった金色の瞳が現われる。
「そのユカイな眼ン玉で、何しに来たのか?って答えてねえ。今回の「勝ち」はソコだろ?」
「いいよ、オバサン。今は帝国のザコ狩り、それと情報集め。それと「気に食わなイ奴」の始末。こンなところでいいか?」
「アーあーあーあーアーあーあー・・。」鬼哭隊隊長の声。
「何ユカイな雑音出してんだ、スゥ。」
「聞きたくない話・・・・聞けば、いろいろと・・・・・。」
「うっとおしいなあ、お前。まさにコレを聞かせるためのセッティングだろうがよ。」
「鬼・・・・。」さめざめと泣き出す隊長。
「まあ、せっかくだ。僕の立ち居地はわかるだろウ?リムサ・ロミンサは、帝国に対して防衛線(グランド・カンパニー)の強化も図りたい。
でも、他の国はどうなのか?っていう「表」だけじゃなく、「裏」も見据えた話なンだよ。」
「舌の動きもよくなってきたじゃないか。小娘。」
「オバサンほどじゃないけどね。」
「まあ、飲めよ。そうだ。バデロンのトコに行こうぜ。」
「・・・。」
「苦手か?」
「いいよ。」
「スゥ?おい?」
「私は・・・・・・・。」
「面白いトリオなんだから来いよ。」

代金を適当にカウンターに置くと、3人は・・。

「災厄、ってのは、こういうのを言うんだね・・。」赤毛の少女。
「イーリス?わたしにとっての災厄は、ある意味あなたっ!」対するミコッテの少女。
「あれ?」

「ウルスリ・・。がんばれ・・・。」女主人。
「ミューヌさん!」二人の給仕の少女達は異口同音に・・。


----------コメント----------

ミューヌさんはもっと肝の据わった方だと思ってたんじゃが
逃げ足も速いんじゃよ~w
Syakunage Ise (Hyperion) 2012年08月16日 19:13

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>しゃくなげさん、いらっしゃいw
相手が悪いというか、ロクでもない結果は分かりきってるから・・w
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年08月17日 00:57

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