263書き物。とある双子の日記XVIII

なによ、こいつ。
目の前の光景に、少し身体が言うコトを聞かない。

苔と、カビと、魔物達の体液と。
革鎧に身を包んだ、自身が流した赤い液体。

それらが放つ臭気の中。

仄暗い、石壁に囲まれた少女は。

「あなた・・。剣、使えるの?」

目の前の金髪の少年は、おもちゃでも振るうように先ほどの短剣をくるくるっと舞わしてから腰に挿す。

「たまにはね。」振り返らず、前を見ている。


母から、曲者だから気をつけろ。といわれていたが、ここまでとは。

「ああ。マユちゃん。目の前の彼がかなり待ち遠しそうに君を見ているんだけど。
デートの待ち合わせに遅れそうだから、早めに相手をしてあげたら?」
と、あっさりと、睨んでいた相手から目を離し、左後ろにいる少女に促してみせる。

「あのね。そいつ。」

パタパタと、小さな羽を動かしている、小鬼。
褐色の肌に、青い目。瞳は無く、ただの青い、ガラスのような目。

ブルーグレイの髪の少女は指を突きつける。

「ああ?」

「欲しければ、あげる。」

金髪の少年は、首をかしげ。
「いや・・。遠慮しとくよ。」

「ギギギギャギギギグゲガ!」
悪名高い、といわれる小鬼は先ほどからの放置に抗議を上げるかのように、大声をあげる。
そして小鬼の手に光の塊が生まれる。
ニヤリ。と。
小鬼の表情がわかるとするならば、おそらく「してやったり。」だろう。

魔法の威力を高め、必殺の魔力を注いでくる。

魔法放題。

「ちょっと!あんたがバカ話してるからっ!」
少女は長爪を掲げる、そして来るであろう魔法の衝撃に備える。

「ん?」金髪の少年は、小鬼に振り返り。
「おいおい。邪魔すんなよ。バカ話の途中なんだ。」


ぞりっ。



濃い青の短剣は、軌跡すら見せずに腰に仕舞い込まれる。

小鬼は、手に光を掴みこんだままの姿勢で硬直しているが、もう光は薄れていく。
魔力を宿した短剣。
その効果は、斬りつけた相手の硬直。

振り返り。
「で、そうだなあ。おれは一応やることが終わったから、このまま帰るんだけど。」
「あ。あらそう。じゃあ、これの相手はあたしがするわね。」
「そうだね、目的ってこれだろ?おれが取ったらまずいしね。」
「それはどうも。」


会話の間にまたしても小鬼が手に魔力の光をため始める。

もう一度、振り返る。
「ああ。もう。お前、面倒くさい。」


がり。


どん。


首の半ばまで刃が突き進み、その衝撃に耐え切れずに壁にたたきつけられる小鬼。

青い液体を撒き散らしながら吹き飛んだ小鬼は、それでもよろよろと起き上がり、こちらを見据えてくる。

「ほら。早くしないと。彼、怒ってるぜ?」
「え?ああ?えええ?」
あまりの出来事に、もはや硬直するしかない。魔剣の効果はここにもあるのかもしれない。

「あ、あのウルラ?」少年の名前を声に出す。
「ん?」
「あんた、その腕前があるのに、なんだってここに?」
「それは、ほら。マユちゃんと同じく、ってところ。ここに行けって言われたからさ。」
手のひらから、カードの形をした契約書を取り出す。

それを気軽に放り投げると、蒼い光の柱が現われる。

「ということで、後はしっかりやんなよ。」
光の中に消えていく。



「ギー!!」
小鬼の抗議に。
「うっさい!あっちいけっ!」
振るう長爪は、首の皮一枚どころか。
ゴロゴロと音を立てる勢いで胴体から魔法を唱えようとしていた頭を吹き飛ばす。

「うーん。」
魔物が落とした戦利品よりは、先の剣術、いや、その使い手の方が気になりだして困ってしまった少女。


----------コメント----------

討伐おめでと~じゃよ~w
そして新たな恋の予感じゃよ~w
Syakunage Ise (Hyperion) 2012年08月01日 16:19

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>しゃくなげさん、いらっしゃい♪
さんきぅv
そろそろ恋愛ネタも欲しいかもwなーんてw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年08月02日 07:55

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