250書き物。とある双子の日記VIII

(ふむ。この少年は・・。)
赤銅色の肌を持つ、大柄の男。
種族で言えばルガディン。炎の部族「ローエンガルデ」の出自ではあるのだが。
どうにも見た目とは反して、などといわれる。
ローエンガルデは山の民、そして火の民。
決してグリダニアにそぐわない、などということはない。はず・・。

その「そぐわない」という、先入概念をほとんど持っていないな。
目の前の金髪の少年は、下げていた頭を上げると真摯な眼を向けてくる。
その内心を気取られまいと少年に一声。
「ウルラ、君は何を成したい?」

「全てから、ひとつ。引いたものを。身につけたいのです。」


大きな洞窟、と言ってしまえばそれまでだろうか?
大樹、それも生半可な大きさではない。
その底に眠るようにその窟はある。

碩老樹瞑想窟。

ひんやりとした空気。それは窟の中に流れる水からの冷気だろう。
同時に湿った空気。
だが、それは詠唱の際に喉を潤す。

「大きく出たな。ウルラ。」
その言葉以上に大きな顔で少年を覗き込む。

「おいおい。だからお前は大雨だと言われるんだ。レーゲングス。」
傍らのエレゼンの術士は、(腐れ縁の)導師に苦言(老婆心か?)を述べる。
「そう言うな、アル。前途ある若者に覚悟を説いている。そういえばお前は、自分にそんな意見はできないはずだ。うむ、ここは瞑想窟だぞ?」
してやったり、な顔で今度はエレゼンの術士に。

「これはこれは。大変失礼しましたね、レーゲン導師。しばらくはメーヴェの料理が食べれないということでよろしいでしょうか?」
ニヤリ。

「おいおい、そこは・・その。なんだ。食いたい。というか、お願いします。」

二人のやり取りに、こらえ切れなくなり。

「あはははっは!」金髪の少年は、笑い声を上げてしまう。
体を「く」の字に折り、笑い続ける少年。

「「いや、此処でその笑い声はやめてくれ。」」
二人の異口同音に、さらに笑い声は止まらない。

少年の笑い声を抑えるために、一振りの枝を放り投げる。
続けて、同じく枝で一薙ぎ。
ルガディンの振るう枝は、少年の顔を弾くはずだったのだが。
「あ、すみません。つい、おふたりのやり取りに。」

投げられた枝は少年の右手に。
振るったはずの枝は、少年の足元に。

「なあ?ウルラ。君は剣士か術士、どっちがいいんだい?」
「先ほどお答えしました。全て。ですが、一つ足らないくらい、ですか。」

「やっかいな生徒だな。がんばれ。」
「何を言う、アルの紹介だろうが!」

「まあ、なんだ。よろしくな。ウルラ。ついでに言うが、自分はあまり加減ができない。そのつもりでよろしくな。」
「はい。お願いします。」

二人の師弟が誕生したことについて。
「いやあ、今日はいい日だね。」
黒髪の術士は、まさに他人事。

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