241書き物。ようこそグリダニア11

喧騒。(騒がしいこと。大声が飛び交う賑やかな様。)

森の中の一軒家、とはいえ周りにも家がある。いわゆる宿屋や、集合住宅ではない、と言う意味の一軒家。

森の都、グリダニアのとある住宅街。その入り口から程近い家。
「あっはっは!ソレ、本当?」「うん、ほんとうにゃ!」「えー、ミー、見てみたかった!それ!」
「うん・・うるちゃーい・・。」「ミー、ほどほどにして早く寝なさいよ?」「おかあさん、顔がニヤけてるー。」


時間にして、夜半。月がそろそろ西の空へと落ちていく。

しかしながら、少女達(と、もう一人)の夜は更けたばかりだ。

結局、一人娘の部屋に布団を敷き詰め、そこで皆で寝ようというコトだったのだが、年頃の娘達がおとなしく寝るでもなく。
あまりの喧騒ぶりに、夫人が注意しに行ったところ、同じ話題に見事に捕まってしまったのである。
「あの時の主人は、それはもう・・。」「きたー!のろけきたー!」
「おかあさん、どうだったの!?」「それは・・・」「おおー。で?」「・・・」「・・・・・」「・・・・・」
「う・・・うるちゃぃ・・・。」金髪の少女は布団にくるまったまま参加表明はしていない。のだが・・。


「マリー?」「ん・・。」「いい加減、うるさ過ぎやしないか?」「ぅん。。」
「まあ、いい。聞くまでも無いだろうが、何か役に立つような話のひとつでもあったか?」
「ぇー・・。なんらろう?うーんと・・・おにいちゃん、けっこうにんきあるみたぃひょ・・。」
「何だそれは?」「みためとかさぁ・・。あと、どじなのも、わるくないって。・・・。よかっひゃね・・・。」
「じゃあ、ネルケの評判は?」「んー、ひゃんちゃんは、ほんきひゃない、み・・た・・。」「わかった。さっさと寝ろ。酔っ払い。」

ネルケに関しては、将来有望かどうか?という意味だったのだが・・。
なんせ、次期国軍クラスの隊長の子だ。パイプとしては持って置きたい。
聞いた話によると近日中にその隊長に就任するらしい。ますますもって、なのだが。
「アイツ、大丈夫か・・?」
茶色い髪の少年の顔を思い出すに、いささか頼りない。
帝国がアラミゴ兵を使って侵攻するなら、その国境のあるグリダニアからだろうに。
まあ、各地にいろいろと斥候まがいはしているらしいが・・威力偵察レベルだろうしな・・。

そんなことよりも。

この喧騒。巷では、女子だけで盛り上がる会が流行っているとか、たしかミーランと言ったか。
この家の娘から聞いてはいたが。全く眠れない。聞くとはなしに、聞こえてくる単語や名前に気をとられてしまう。 
(彼も年頃の男の子なのでw)
いっそ、ただの雑音ならよかったのだが・・。
マリーには、情報があれば集めろ。とは言っていたが、自身の容姿や人気など聞かされても・・。
というか、既に酔って寝ている上に、うるさいから黙らせろともいえず・・。・・・。・・・・・・・・・・・・・・・。
そして、さすがに睡魔には勝てずに・・・。



明け方も近い頃。
「ねー、マユ。」「ん?」「起きてたにゃw」「マリーって、じつはブラコン?」「はぇ?」
「なんかにゃ、兄弟姉妹に愛着ありすぎる人のことなんだって、ミーから聞いたにゃ。」
「え、あ。なんかそんな話題あったなー?って、夫人は?」「日が昇る前に出て行ったにゃ。」
「あ、そか。あたし少し寝てたのか。」「起こしちゃってごめんなさい。」
「いいよ、ミー。それより、ミーこそ寝なくて平気なの?」「うん。」
「あ、さっきまで実は寝てたのにゃ。でも、ミーの恐ろしい寝相で叩き起こされたあたいが、ここにいるのにゃ。」
「ああ、アレね・・。」「マリーさんは全く動きませんけど。」「後頭部にカカトが乗ってたからにゃあ。それでにゃい?」
「笑えない朝ね・・。」「まあ、そこはスカっと笑顔で・・・えへへ。」

少女達の朝は早い。               の?





「ただいま。」
「おかえりなさい。」
「遅くまですまないね。」
「いいえ。家に居れば魔法で家が消し飛んでたかもしれないから。」
「おいおい。そこまではしないさ。」
「魔女さんが居れば、やりそうね。」微笑む。
「彼女は、そんなん・・じゃない・・・さ・・。たぶん・・・。きっと・・・。」引きつる表情。
「酒場でおもしろそうな話がでたのね。朝食の準備をするから、聞かせてね。」
「ああ、かなり笑えるさ。」






「人が悪いですね、お師さん。」
(いやなに。私の鎮魂のために、なんていわれるとね。)
「昔話ですよ。つい、この前まで忘れていた、そう。むかし話。」
(ひどい事をしたと思っている。許せ、とは言わないが、バカネコとはどういう了見だ?)
「相応の対価だとおもいますよ。それに、森から出れるんですか?」
(かわしたな、まあいい。その質問には応えられるかわからんが、かのご老人いわく、繋がりのある人なら、
ありていに言えばあの精霊と会話をすることができれば、少しだけ意識を飛ばせるらしい。)
「そんな便利な・・。」
(まあ、これにも対価があってだな。もちろん。存在と引き換えだ。)
「え、じゃあ!」
(ああ。お前と外で逢えるのもそう多くは無い。まあ、まだ少し位は大丈夫だ。かのご老人はすごいな。
それと、私達の存在は「知っている者」がいないと成立しない。長生きしてくれよ。)
「お師さん・・。」
(ではな。また酒を奢ってくれ。)
「はい。」


「お師匠、か。いい師に恵まれたモンだんなあ。レティシアさん。」
「マスター・・。」
「気の効く台詞がでるじゃないか。バデロン。」
「俺はそれが売りなんだがね?天魔の魔女レティシア嬢?」
「その割には・・。」
「ええ、レティさん。今のマスターの脳内にはおそらく、マスコットサイズのモルボルが多数繁殖しているように思われます。」
「ああ、そうだよ~そうだよ~・・・。」

「ま、とりあえず。ラムくれ。」
「あいよ。」

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