216書き物。少女の一日の続編(長いので・・・)

「あらあら、いらっしゃい。」

出迎えてくれたのは母と同世代くらいだろうか?エレゼンの女性。
違うところは、「家庭的」なのか、「好戦的」のトコロ。
我が家の母はどうにも後者だ。間違いなく。

「あの、こんばんわ。失礼します。」と一礼。
「まあ気にするな。」とアルフレート。
エレゼンの幻術士は気軽に家に招待してくれたのだが。
(すごーく気まずい気がする・・。大丈夫かなあ?)などと不安は尽きない。

玄関で固まっていたのだが・・。「あ!マユ、ちゃん?」とエレゼンの少女。
「へ?」とさらに固まってしまう。

「こらこら、順番に紹介するから待っておけ。」とアルフレート。
「はぁい。」と赤に近いブラウンの髪の少女は引っ込んでいった。

「どうぞ。たいしたものはできませんけれど。」と、奥方。「とんでもない!まさかのご招待でこちらこそ!その、あの。」
「まあ、俺がついうっかり話題にしたせいで、皆が気になってしまったらしくてな。」
「え!?」
「せっかくだし、ご招待、とあいなったワケだが。」
「あの・。。。、あたし、そんなに、というか、他のヒトとデートとか促したりしてませんでした?」
「はは、無いだろうと思ってたよ。ああ、彼はデートを断ったみたいだね。あの娘が1人で歩いてたから。」
「はぁ?」
「たまたま二人とも見かけたんだよ。」
「ウチの主人は影が薄いから・・・。あまり気がつかれないの。」
「おいおい。いいすぎ・・・。」
「はい、まずはお席にどうぞ。」

食卓に案内されて、1人の少女ともう一回顔を会わす。
「あ、さっきはどうも。お邪魔します。」と、ブルーグレイの髪を揺らす。
「よろしくね。私はミーラン。ミーって呼んでね。」と少女。
「あ、ええとあたしは・・」「マユ、でしょ?知ってる。」にっこりするエレゼンの少女。明るい赤色の髪は母親似だろうか?
「なんで知ってるの?」と同時に「その話はその辺で!」とアルフレート。
「おとーさん、こわーい。」と少女が茶化すと「はいはい、できたわよ。」とお皿を持ってくる。
「やったー!」「わ!おいしっそー!」同年代の少女二人は期待に胸が高鳴っている。
「俺の分は?」「ああ、今残ったもので適当に煮込んでるから。パンでもかじっておいて。」・・・・・・・。

食後、「なあマユ。今から帰らせるのもなんだ。ウチに泊まっていけ。明日は早いからな。娘も喜ぶだろう。」
「え!?いいんですか?・・じゃあ、一度宿に戻って装備だけ持ってきます。」
「明日、ちゃんと起こしてやるから、パールで連絡だけしておけばいい。」
「そうだよマユちゃん。一緒に寝よ。」「うん、じゃあ。お言葉に甘えて。」



「マユちゃんのお母さんって、実はすっごいんだって?お父さんもビックリするぐらい?」
「そんなんじゃないわよー、ただのヤンチャ。」「マユちゃんのお父さんだって、すごいって。」
「えー、アレがー?ただのゲンコツ親父。」「ふううん。でもいいなあ。わたしも、なって見たいな冒険者。」
ベッドで毛布にくるまりながらエレゼンの少女は手を上にかざし。夢見るようなまなざしがランプに映える。
しかし。
もう一枚の毛布にくるまった少女は。
「やめといたほうがいいよ。」とぼそり。
「え?」
「ううん。なんとなく。」
先日の救えなかった兵士の、あの・・、まぶたの裏から離れない。
後の3人は「見慣れている」と言ったか。この少女があんなものを「見慣れて」しまうなんて。
ミーって呼んで、と言った同じ年頃の少女は、この職に就くべきではないだろう。
「んじゃ、おやすみ。」隣りの少女に告げる。「おやすみ。」

(もう、こんな思いはしたくないし、させたくない。。。)

(うーん。やっぱりお父さんみたいになりたいな・・。マユちゃんは反対みたいだけど・・。)

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