207書き物。カンパニー。その先には?

「な、なんだっての!?」

少女はまたしてもチョコボから飛び降りる。
「クェエエエ!」チョコボが興奮しているが、なだめる時間が惜しい。

またしても倒れている人。ただし今回は明らかに事切れているのが分かる。

まず、首が無い。

「うっ!」深緑の中、血の臭気がむせかえる。
「・・・・・・。」ごぶっ。
昼食が胃から逆流して、周りを汚す。が、気にはならない。
「げふっ!ごぼっ!」
ブルーグレイの髪が揺れて顔を隠すが、少女の目には明らかに涙が。
「なんてことしやがんのよ・・。」
いつの間にかかがみこんでいた。

「マユちゃん?」いつの間にか追いついてきた少年達。
「死体を見るのは初めてか?」と長身のエレゼンの男性。
「大丈夫かにゃ?」とミコッテの少女。
「大丈夫そうに見えるなら、大丈夫だし、そう見えないなら、大丈夫になるから。」
「健気なのはかまわんが、この先も同じようなものがあるかも知れんぞ?」
「マユちゃん・・。」と気遣わしげな少年と。
「まゆちゃん、あたい達は、鬼哭隊は、あ、元だけどにゃ。実戦でいくらか見てるから、慣れてるにゃ。
こっちのソーサラーさんも、慣れてるみたいだしにゃ。しんどかったら、報告だけでも戻ってくれたらいいにゃ。」
明るいオレンジ色の髪のミコッテ、シャンが言い出すと。
「ふっざけんじゃないわよっ!」
口元を拭って振り返る少女。
「ふざけてるのは君じゃないのか?」とソーサラー。
「なんですって?」と食いかかる。
「まずは冷静になることだ。この後もし戦闘になったとしよう。このままだと、おそらく確実に出会うだろうし、守るべき対象がいるはずだ。
そこで、目先も見えず、ただ感情に任せて突っ込むだけでは守るべき者も、我々すら脅かしかねない。それすら分からないなら退場してもらうしかない。」

「・・・・。」他の二人は沈黙している。実戦、とはそういうことなのだと理解しているからだ。

唇をかみ締める。吐いた物が口に染みる。出た言葉は。

「すみません。あたしの独断専行、でした。頭を少し冷やします。」
「そうか、なら守りに行くのだね?」「はい。」
「マユちゃん・・。」「ネルケ君、ここはもうちょっと優しい言葉が要るんじゃないかにゃ?」


戦場はチョコボの足だとすぐ近くに。少し開けた場所に、ローブ姿が二人、剣士が一人。
そして、おそらく帝国兵だと思われるいかめしい鎧の槍兵が3人。そして弓兵が一人。

「おおおおるぁああああああああ!!!」
いつもの話し方とは思えない声を上げるミコッテの少女。兵士がこっちを向いて、安堵する。

帝国兵も気を取られてこっちを向くが、弓兵はつがえた矢をローブの一人に放つ。
命中。倒れる。
「くっ!」誰かが声に出す。
「あたし、あの弓兵やって来る。」「いい判断だ。」「よろしくにゃ。槍相手は慣れてるのにゃ。」「任せて。」

チョコボから降りた少女は、ブルーグレイの髪を揺らしながら帝国兵に向かっていく。

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