198書き物。幕間。(グリダニアでの)

エレゼンの少女、カナーリエンフォーゲルは、夜も更けた頃店を出た。

色白の肌に、金髪。明るい場所で見ればかえって目立たないが、月明かりだとよく目立つ。

グリダニアのカフェ、カーラインでリーダー格の給仕をしている少女は帰路についていた。
「あー。彼氏ねー。」
前髪を留めていたピンを外すと深呼吸する。
深い木々の香りが心地いい。
「ネルケさんは、ちょっとばっかしどうかなあ?」
辛口。
「わたしはもうちょっと、ホネのあるほうがいいなあ・・・。」
少女の理想は高い。


(ふう。)
正直、どうなることかと。
カフェの主人、ミューヌは一息。
ついさっき、給仕の子たちの雑談を聞き逃すまい、と耳を澄ませていて。
どうにも、魔女の娘と、ミコッテの少女、そして少年の取り合い?は解決したらしい。
「あの二人が居なくて、ホントよかった・・・・。」
魔女と副隊長殿。
二人は仲がいいのに、こと子供に関すると戦争でも起こしかねない。
しかし、これで当面は争いはないだろう。
カフェは平和だ。



(うーん。勢いで言っちゃったけどにゃあ・・。まさかココまでスルーとは思わなかったにゃ・・。)
明るいオレンジ色の髪を短く刈ったミコッテの少女は、少しやりすぎた気がしないでもない。
(つっかかってくるものだと思ったのにゃぁ。)結果は「どうぞ、進呈します。」
(うーん、ネルケ君もらってもにゃあ。こっちこそ困るのにゃ。)
表情に出さないようにしているが、おそらく出ているであろう困惑。本当に困ったものだ。
「あ、あたいでよければ。」などと、要らない言葉も付け足してみた。



硬直。
槍術士、元鬼哭隊の少年は固まっていた。
まず、その前にスープを噴出すような問いを投げかけられ。
(給仕の女の子にタオルをもらっても拭うことすら出来ず、あまつさえ口元まで拭ってもらったのだ。)
「ネルケ君、もらってもいいかにゃ?」
(なんのコト?)
そして。
「どうぞ、進呈します。」とブルーグレイの髪の少女。(え?)
「あ、あたいでよければ。」と少し頬が赤くなっている先輩。
(まてまてまて。なにがどうなってこうなっている?)頭の中は「?」マークしかない。
向かいに座るブルーグレイの髪の少女は淡々と食事を続けている。
(マ、マユちゃん?どうしよう?)どうもこうも無い。
「あ、ええと。その先輩?」
「どうしたにゃ?」
「その、あの、もうちょっと待ってくださいね。」
「いいのにゃ。」
ホッと胸をなでおろす少年。



いきなりな質問。
(どこまで進んでる?ですって?)
少女は向かいに座るミコッテの能天気な質問に、雑な答えを。
そして。
「ネルケ君、もらってもいいかにゃ?」(はぁ?)
「どうぞ、進呈します。」反射的に答えてしまった。
そして、オロオロしている少年に目を移し、なんかムカつく。
続くミコッテの先輩の言葉にも、なんだか歯切れが悪い。ムカつく。
第一、出来の悪い少年に「女の魅力」なるものが、目の前のミコッテより劣っているなんて、考えたくも無いし!
(もういい。とりあえず食べよう。)
もくもくと料理に手を出す。
(コイツなんかより、もっといい男がいるわよ。ホント。)

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