149ZERO書き物。10

暗い一室。

目の前のデスク越しのララフェルはただの少年に見える。が。
まとう空気が読めない。

少年のようであり、古びた木のようにも思える。
とりあえず、この場にはそぐわない、これだけはなんとか解る、というか、そうして雰囲気をすら勘違いをさせられているような。

だが、言わないわけにはいかない。

「ホラン殿。」この質問に。無言のララフェル。
「あの娘はどうなっている?」男からすれば、至極当然の質問。
他人からは鬱陶しい、とは言われるが、仕事だ。仕方あるまい。

「どうというコトも無いな。」あっさり。
「俺の指導で言えば、まだまだ、だがな?」

む・・。「それは、使えない、ということでよろしいかな?」
眉間にシワを寄せる男。

男の目の前に、小さいが必殺の拳がある。
「このくらいは、普通にできるのよな。」いつでも撃てる。その体勢。

いつのまに?この距離、高さ。無いだろう?あるわけがない。が。目の前には拳を構えた老人。

「で?あの娘は駒なのかな?」老ララフェルは笑っているのか怒っているのかわからない。
「も、もちろんです!そのために貴方を招聘したのですから。報酬は十分にご用意いたします。
こんな動きが出来るのでしたら、十分に役に立ってくれるでしょう。」
と、薄い笑みを浮かべる。

「そうか。」老ララフェルはニッコリ微笑む。
「はい、なんでもおっしゃってください。」と男。
「俺の報酬は、あの娘だ。」
「は?」
「なんでも、と言ったな?ならあの娘だ。お前等の好きにはさせん。」笑顔で言うが眼は全く笑っていない。
「それは・・、その。本末転倒でしょう?このために貴方を呼んだのに!」と男の語気が強まり。
「何も連れて帰る、とかいうのではない。お前等の駒だけで、あの娘の人生を食い潰す、なんぞあってたまるか。」
「その・・?」怪訝な男。
「依頼、という形であの娘を雇う、というのなら認めてやる。」
「ええと・・。」
「もし。俺の耳にあの娘を好き勝手に使う、などと話が来れば。次の日にはお前の墓ができるぞ。」
「そんな・・、馬鹿な。」あはは、と男は流すが
「ウルダハの情報力と、俺の腕を舐めるなよ?前にも言っただろ?」
「脅し、ですか?」「ウルダハだと交渉、という。」
「暗殺はしばらく休業だったんだがな。現役の、なんていうか血がうずいてきてきたんだよ。お前ら見てるとな。試すか?」

「いぇ・・・。」

このまま森に出るララフェル。特に申し合わせたわけでもないが。
「あら?」と、一人の赤いローブのミコッテから声がかかる。
「お久しぶり。」
「おや?お嬢さん。どこかで会いましたかな?」
「すれ違っただけですしね。覚えておいででないのは仕方ありません。」
「(おぼえておるがな。)そうだったかな?」
「あの子をよろしくお願いします。」
「任せてほしいのよな。」
「え?」
気がつくと、もう目の前からララフェルは消えていた。

戸がたたかれる

「はあい。」この小屋を知っている人間は・・・師匠くらい。
あとは・・たぶんスウェシーナ。彼女はいつも迷って泣きながら来るけど。
もう森は黒い衣を纏い、寝る準備をしていたところだ。
戸を開ける。もちろん開けた瞬間トラップが発動する。
それも自分主導のトラップだ。知らないとまず吹っ飛ばされる。

が、目の前に居たのは師匠。

「どうしたんです?」「いやな。」唐突に。
「お前はな、卒業なのな。」
「へ?」
「教えれることは、教えたのよな。」
「え?」少女の顔はもうなにがなんだか。
「意味がわかりません!」
「これからは、一人でやっていけ。そのためのツテは作っておいたのよな。」
「師匠!」
うん、別れはいきなりなのよな。「こう、ほっぺにチューとかしてほしいのよな。」




ちゅ。


----------コメント----------

ぷはぁー。読み応え増しましたねー!
Alto Springday (Sargatanas) 2012年02月04日 09:42

----------------------------

>アルトさん、いらっしゃい♪
はいなw7話目だったか、文字数オーバーで投稿できなくってw
泣く泣く後半を削りましたw>で、次回に持ち越しwそのために話数が増えていますw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年02月04日 13:25

<<前の話 目次 次の話>>

マユリさんの元ページ