148ZERO書き物。9

さらに2年が経ち。

そして。

「もう一回。」栗色の髪を短く刈った少女は、目の前のグレイの髪の少女に挑戦し続ける。
腰まで伸ばしたグレイのストレートの髪は少女の自慢なのだろう。自身はこれほどまで短くしているのに。
まったく邪魔にならない。そう言いたげだ。本当に腹がたつ。

鬼哭隊。自警のための有志から、ギルドに、果ては国軍としての任務すら負うことまである部隊に。
技術の研鑽や、知らぬ者に技術を伝え。

その鍛錬場では、恒例の少女二人が向かい合う。

その武器と同じく、真っ直ぐで真っ向から切り崩す戦い方をする、スウェシーナ。
反対に、同じコトをやらない。いつもとんでもないことをやらかすレティシア。


一礼の後。

まず踏み込むレティシア。格闘としてはまず定石。
そこに応えて、あえて踏み込むスェシーナ。そこで打撃を受けてから、距離を外しての攻撃。
が。
格闘は近接。と思いきや。
少女の持っているのは杖。
(しまった)とは少し遅かったかもしれない。
バンっ!
空気が爆ぜる。
いつの間にか得物を杖に替え、そしてその杖を後ろにしまいこむと拳で連打にかかる。
慌てて間合いを取る。すると。

ひゅるるるるる・・・。

空気を揺らす音。

「あ!」背中を撃つ衝撃。

刃を落としてあるゆえ、負傷は少ないが完全に不意を突かれた。

チャクラム。

そして目の前には、少女の拳がある。

寸止めで、試合終了。

「あんた、アホみたいに強いよね?」と栗色の髪の少女。
「あなたがバカみたいに弱いのよ。」とグレイの髪の少女。

悪口を垂れあっているが、この後はそろってカフェに行ってああだ、こうだとやるのが定番だ。
最近はその中に看板娘のエレゼンの少女も仲間入りしたらしい。

「のう。」老ララフェル。銀髪は生来ではなく、年齢からのものらしい。
「はい。ホラン殿。」と茶色の髪を長めにした男性。鬼哭隊隊長。
「子供のケンカにしては、大仰なのよな?」と。
「けしかけたのは、あなた方でしょう?」と。
二人そろって笑う。
が、鬼哭隊隊長の眼は笑っていない。
「俺とやってみるかな?」
「いえ・・。」
「ほう?」
「いろいろと、ありますから。」と苦虫を噛み潰した表情。
「ただ、正直勝てる気がしません。部下の前でさすがにそれは遠慮したい。」
「遊び心の無いやつだな。こういうときにこそ遊び心を見せんと、「上」の奴らには、な。」
「そうですな。ですが。・・。では、郊外にて、お手合わせいただけますか?」と笑顔。

「その意気やよし、なのよな。手加減はできんのでな。まあ、それはお互い様かな。」
「委細承知、です。」
「まあ、なにも命の取り合いじゃないしな。」
「そうですな。誰か一人幻術士も呼んでおきましょう。」
「楽しみなのよな。」
「自分もです。」


弟子とはそろそろお別れだ。今のうちに楽しみを増やしておかないと。


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ぬう以降数年巻き込まれ続けるデススパイラルw
Bob Dalus (Hyperion) 2012年02月04日 03:11

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>ぼびー、いらはいw
このスパイラルは都合3代いってるからねwある意味呪いw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年02月04日 03:41

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