140ZERO書き物。

アラミゴ。

帝国、との戦の話は芳しくない。


故郷、といえば故郷、なのかなあ。少女の考えとしては、両親と過ごして。
友達と遊んだ。

「それで?」
言ってしまえば、それだけだった。仲良く遊んだ友達は、今朝居なくなっていた。
それも。
「向かいのご家族が・・。」と母の歯切れの悪い言葉で。
(ああ、あの子も。)と
「ねぇ、あなた、どうするの?お向かいさんも・・。」
元軍人、戦役での負傷で退役した自身では何も出来ることは無く。
「まだ帝国はここまで来てない。大丈夫さ。」と言うばかり。
まだ過去の栄光にすがるのか・・。
母は目を瞑る。
「大丈夫だ。国軍がなんとかする。」と自信満々な声に、母はさらに不安を募らせる。
「・・・。」

静かに流れる不安を、暖炉が緩やかに燃やし尽くす。



長い真っ直ぐのグレイ髪を持つ少女は、大体の事態を理解していた。そして。
そのための準備も備えていた。
もちろん、両親にわからないように。
「いつでも大丈夫。」自身に言い聞かせるように。
簡素なベッドには、いつでも。そう。 いつでも大丈夫。

ただ。

少女の考えだと、両親、主に父親の考えかたは、おそらく遅すぎだろう。と。


(レティ?)
「んー?」
「しー、静かにして。」と母。ものすごく切羽詰っている気がする。
まだ10歳の少女は、少しぼうっとしている当然だ。まだ早朝どころか。
「なあに?母さん。」
当然の答えに。
「今から逃げ出すの。静かにして。」と。母。
「うん、わかった。ちょっとまって」ベッドの下からカバンを取り出す。
驚く母。「あなた!」
「しー。静かに。」イタズラを成功させたような少女。
「わかってたの?」と驚く母。
「要る物は二日分くらい。パンとかあるわ。」
「それで・・。」どうりで残したパンを部屋に。

「お父さんは?」と不安げな少女。

「あの人は・・。」(おそらく・・・。)
「そう。」賢明なこの子だ、察したのだろう。
「グリダニアに行くわ。」突然の発言に。

「なんで?」思惑があったわけではない。が。少女は疑問を投げかける。
聞いた話だとウルダハに避難する話が多い、そのくらいは知っていると言わんばかりだ。

「ウルダハに行く人も多いけど、あなたを連れて行くとかなり辛い旅になりそう。
そして、聞いた話だと奴隷だとか野蛮な話もあるから。」と母は緊張と疲れで・・。
「グリダニアのほうが遠いんだっけ?」と聞いてみる。
「だけど。とりあえず、知り合いには途中まで送ってもらえるから。それは安全な術だそうだから。」と。

(ああ、安全だけど・・。たどり着くのは難しい、のかな。)
少女は漠然と考えを心にしまいこんだ。

明け方の広間。目の前にはブルーのローブをまとったミコッテ。
白銀の髪をざっくりのばした、まだ若い幻術士。

「アナスタシア!よかった。」
「ヴィント。だいじょうぶなの?」
「わからない。正直アタシは・・・。」
「それって?」とあるきっかけで出会った二人ではあるが・・。
「ココから逃げ出すの、それには・・。でも。森に受け入れてもらわないと。」
「前に言ってたあれ?」とアナスタシア。
「うん。まずは。静かに、森を驚かしたりしないように、受け入れてもらわないと。」
「私たちは・・」と娘を見て。
「大丈夫。他の人も聞いてくれるはずよ。」
「そう。じゃあテレポの説明始めるわね。」と銀髪のミコッテ。

「今から。テレポという術をかけます。これでグリダニアに行けますが、
必ずしも安全だとは言いかねます!術自体は失敗しませんが、キャンプと呼ばれる場所からは自分で行ってもらわないと。」
悲壮な表情で説明をするミコッテの幻術士。

「なんだ!最後まで面倒みてくれ!」と、どこかの商店で。いつもはにこやかだったのだが。そんな殺気だった人たちに
「ごめんなさい、一度に連れて行けるには限度があるんです。」沈痛、というよりも。
このまま消え入りたい、しかしそれを許されない、許して欲しくない。その「覚悟」
が見える。

少女、と言うよりももう少し年上に見えるミコッテは。
「この後も送らないと・・。」と涙と唇をかみ締める。
「ち。」とオジサン。


淡い光に包まれたあと。

見たことも無い緑の空気と、圧倒的な緑。

簡素なチュニックの少女は両肩を抑えて、肌寒い空気を受け入れる。
(・・み・・・)(こういう・・)

へ?
「母さん?なにかいった?」レティシアは普通に聞いてみた。
「え?なにを?レティ。」と母は気がついていない。
あれ?

「地図をもらったわ。どうにもここはエメラルドモス、っていう場所ね。」
地理的には少しグリダニアから離れている。
「うん。」「レティシア。聞いて。もしも私が・・。」今は10歳の娘は「やだ。」と。
「あ、アナスタシア。お願い。森では絶対に騒がないで。彼らは「認めた」人以外は許さないの。」
「わかってる。あなたも気をつけて。」と。娘と実はそれほど変わらない年のミコッテを送り出す。

「では、他の方を連れに行ってきます。」とミコッテの少女。
いろいろと反応がある中。

グレイの髪の少女が。

「がんばって!」と手を振り上げてジャンプしている。

まかせろ!と、拳で返事をしてミコッテの少女は淡い光に消える。

「さっさと逃げないと!」と
「ちょっと、さっきの話を聞いていないの!?」

一部の男性達が逃げ出す。

キャンプに残るつもりの人たちは一向に気にもしない。

「あ、待って!」と母。


逃げ出す男性達を追いかけだす母。同じくついていく。少女。

「かあさん、ここどこ・・・。」
「ちょっと待ってね。」

「もうイヤだあああああああ!!!!」絶叫が聞こえる。数人が森の怒りに触れて・・・。

少し油断も。母には。あったのかもしれない。
さっきの絶叫は。

目の前の
逃げ出した連中がするのはかまわない。母の「あ!ちょっと!!」
この声は。

「しーーーーー。」娘の声だ。

振り返り。
「レティ?」自分の娘をしっかり見つめる母。

「だめ。大声出したら。」
と娘の声に先の男達と自分の失態に気が付いたが。もう遅い。
「静かにしないとダメ。森が怒るから。」
ああ、この子は。
「レティ。」

「なに?」と母の肩をを掴む少女。周りの木々はあいかわらず鬱そうとしていたはずだ。が。

「逃げて。」


母の口からは赤い、それも暗がりゆえか。赤いというよりも黒い液体に見えた。

頭の中では何が起こったのか。

ごふ。

「お願い・・・。」

ぶふっ

手の甲についた生温かい液体は・・・。


ありえないものが。

母の腹から木の枝が出てきている。ありえない。

ありえない。ありえない!





ふと向かいにある木に視線が行った。呆然としたあげく。

ああ。

眼がある。木に。

「あなたは・・。」

母は言葉を搾り出す。

「森の・・、気持ちがわかる・・、みたい・・・。あの、・・子・・・みたいに・・・。」

がふっ

「母さん?」
もうどうしていいのかわからない少女。

「はやく・・。地図は・・。」

「や、だあああ!」少女は絶叫する。が、森の洗礼は無い。

「お・・・ね・・。」
もう一本の枝が母の胸を突き刺す。


「レ・ィ  愛・・  る。」

「うん。母さん。愛してる。」

頬に手をあて。

血に汚れた口をぬぐってあげる。

ごめんね。母さん。ひと言。

逃げる。

後ろからは。

薄暗い森をひき潰すかのような音が聞こえてくる。

だが、「生きてやる。」死んでたまるか。

もう、どこをどう走ったのか。
母がくれた地図なんてもうとっくに無くしている。地図なんかクソくらえだ。
生き残ってやる。地図がいくらのものだ!!

「間に合った!」と。

へ?さっきの?
 
「いいから、あっちに走れ!」
まだ若い幻術士のミコッテはトレントと少女の間に割り込む。
「その先はグリダニアだ!」


あのミコッテさんって・・。
「あの・・。」
「グリダニアに着いたら、幻術士ギルドに行けっ姉が居る!私はサ・ヴィント。行けっ!」

(ああ、あたしは・・。母さん。)
少女は薄暗い森を走る。

銀髪の髪を適当に伸ばしてしまったが案外評判は悪くない。
こんな時だがそろそろ「お年頃?」なんか言われるが。
目の前の相手は少々お年が上過ぎる。

「なあ、尊き樹の精霊、偉大なる森の精、トレントよ。」ミコッテの少女は声をかける。
先の少女を逃がすために少しでも時間を稼がないと。
もしかすると、自身も怒りに触れるだろうことはわかってはいたが。

「この鎮守の森を騒がした非礼をわびる。」実際、自身の行動、良かれと思った脱出劇。しかし。

トレントは動きを止めて。

「どうか怒りを鎮めてはくれないだろうか?」
焦る気持ちを見せずに懇願する。

動かないトレント。

ふぅ。

「感謝する。」

一礼。

顔を上げる直前。

かはっ

目の前に。

苔むした、緑と茶色と暗い影と。

その陰鬱な道に、赤いものが混じるのが見えた。

あれ?

赤いものは口からだけではなく、

胸から生えた枝から。滴り落ちている。

もう一度、赤い液体を吐く。かはっ。

「そうか。これが対価か・・。」

つまり、これが無用に森を騒がせて

数人の犠牲を出したわたしの自己満足の罰。

ねえさん・・・、あのこ を おねがい・・。



ふっと横を見る。

「アナスタシア・・・。」
「そう、あなたも・・・、一緒に逝こう・・。」

薄れいく意識の暗闇に沈んでいく。







ここがグリダニア。
少女は一歩を踏み出す。


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予想以上の書き物の多さにびっくりですw
地道に遡って読ませてもらいまっせー
Meso Daiou (Hyperion) 2012年01月27日 14:18

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トレントさんは走っただけで怒るからねー;;
Bob Dalus (Hyperion) 2012年01月28日 03:21

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>めそさん。いらっしゃい♪
はい、けっこうたまっておりますw
基本読みやすい感じになってますのでw読み出すとサクサクいけるかとw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年01月28日 05:42

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>ぼびー、いらはいw
トレントさん、容赦ないから。
この前、なんか投げられたら9999ダメージいただきました。
ヘタしたらイフよか強いんじゃないの?アレ。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年01月28日 05:44

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心理描写が増えて臨場感増しましたねー!
イフはアウェーですから本調子じゃないに一票です。
Alto Springday (Sargatanas) 2012年01月28日 09:33

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>アルトさん、いらっしゃい♪
そうですねー。いろいろと。ミコッテ姉妹や、師匠なんかをもっと書いて見たく。
イフでもあのダメは出せないだろうとwしかもトレントさんは量産型でアレだしw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年01月29日 01:21

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