135書き物。ウルダハにて。の5

ウルダハ。砂漠の中にある街。荒涼たる地の街としては意外と人口は多い。
海洋国家リムサ・ロミンサ。
森林国家グリダニア。

そのどちらもが「住みやすい」という点では間違いなく上なのだが。

こと、商売に関してはウルダハにはかなわない。つまりはそういう理由である。

しかしながら、ウルダハという街は2面性があり、貧困と富裕や、ナルザル神信仰などもあり、かなり明暗の分かれる街でもある。

極端な話、繁華街の裏手の道には、今日の食い扶持すらない子供達が屋根も無く寝ていたり、ストリートギャングも居たりするのだ。
つまり、この街に不案内な人間にとっては、ある意味荒野より危険な場所とも言える。


「ねぇ、マユちゃん。」とは茶色い髪の青年。
「なによ!?」と、ブルーグレイの髪を肩で短く切りそろえた少女。
もう夜更けなのだが、街は灯りを絶やすことがない。

ここ、裏通り以外は。

「ここって、危なくない?」先の青年。
「そんなことより、この暗がりで男に寄り付かれてる、あたしが危なくない?」とマユ。

二人はとある事情でこんな裏道に入ったのだが。
ドコだあああああああ!!!!!!!!!!と酒場で聞こえた瞬間、本能の赴くままに逃げては来た。だが。

「そうは言っても!」と青年。
「ネルケ!思い出した!さっき、あたしのお尻ずっと見てたでしょ!」と酒場での逃走劇でのシーンを話題に挙げる。
「いや、ちょっと待って!」
「待たない!このままイケニエにして、あたしは逃げる!」
「たしかに、その。見てたけど・・。」
「やっぱり見てたああ!」と、そこで。



「見ーーーーーィツケタアアァ。」








酒場を出て、叫んでみたが返事は無い。二人は本格的に逃げたようだが。
「スゥ。あんた左回りね。あたしは右回りに。」
「OK!」
「あたし達から逃げ切れるとか、勘違いさせないためにも。」
「実力の違いを見せてやるわ。ね?レティ。」
「「よし!」」





先に見つけたのはスウェシーナ。彼女は裏道の暗がりで痴話げんか?みたいなカップルを見つけ。
「見ーーーーーィツケタアアァ。」と一言。
実際問題としては、暗がりに居るカップルや二人組みに当てずっぽうで言っていたのだが。アタリのようである。
声からしてそうではないかと思っていたのだが。

ちなみに、それ以前に声をかけられたカップルは、仮面をつけ、槍を手にした鬼から怨嗟の声を聴いたと。
後の都市伝説になっていく・・・。


「ネ、あなた、アッチに逃げて!」と少女。
「マユちゃん、それどっち?」答えて青年。
「だから、名前で呼ぶなあああこのド阿呆っ!」


「なにやら、今夜はさわがしいのぅ・・・。」
裏道に住んでいる老ルガディンは、迷惑だとばかりに首を振る。
が、借金取りが追いかける逃走劇なら日常茶飯事。痴情のもつれなど、それこそ数える気も起きない。


「レティ!そっち行った!」とパールで通信。
「任せろ、仕留める。」の声に。
「アンタ、あほ?バカ!?仕留めてどーする!!」
「あれ、どら息子の始末じゃなかったっけ?」
「それならこっちは、色娘を始末!」
「待て!色だとぉ!」
「さっき、お尻を見せたとか聞こえた!」
「なんだとおおおお!」
「「とにかく、捕まえる。」」


ウルダハ。街の構造としては、外回りに大通りがあり、内側に重要施設がある。
その内の一つが飛空挺乗り場であったり、議会場であったり。
その合間に裏道や、ギルド、ナルザル神の神殿などが散らばっている。

ここは中央部の噴水。吹き抜けで天井から階下まで十分に見張らせる。夏にあった催しでは、
花火すら上げられていたくらいの広さだ。

「ねぇ。なんでココにいるの?ネルケ。」とは、疲れ果てた少女。
「いや、その。昇降機があったから。飛空挺乗り場で使ったから、使い方は知ってるんだ。」
「そうじゃなくて・・。なんで別れて逃げたのに同じ場所なのか?ってことよ。」
「あー。それは、なんとも。マユちゃんこそ、なんでココに?」
「ココは好きな場所なの。なんていうか。」
「そう。」
「んじゃ、休憩したら分かれて逃げるわよ・・・。」
うん、と頷く間も無く。



疲れきり、やっと腰を落とした二人に、回り込むように二人の女性がやって来る。

「見イイイイィィィツケタアアアァァァァ。」


「いやあああああぁ!」と少女。
「わ、わ、あの、その、わかれてその。。」


「「ほぉう。やっぱり。」」
「「ウチの子をたぶらかした挙句、捨てるってか!」」二人の主婦は異口同音でバトルモードに入る。

(ね、ネルキ。今のうちに分かれて逃げよう。)
(そうだね、マユちゃん。どうにも勘違いがすごいよ。)
(まず、しばらく待って。多分母さん目くらましに何か魔法使うんだけど、その前に必ずフェイント入れるから。)
(それって何時?)
(たぶん、最初の魔法をフェイントにした後、攻勢に出て、その後あえて受身に回ってから。)
(すごいね。読めるんだ?)
(まあ、師匠だし。)
その間にも、まずはレティシアの魔法が発動・・せず。
槍の一撃が空を払う。
魔法を唱えるだけで相手を牽制するフェイク。この払われた槍を引き込む前に前進。
間合いの内側にもぐりこむ。
が、そこは槍の名手。一歩素早く引き、持ち手を変えて、素早い振りで石突を下段からアゴに向けて振りぬく。
そこはすっと上体にそらしてかわすと、そのまま後ろに下がる。
間合いを取ったスウェシーナは、牽制と見せかけて本命の一撃を突いてくる。
それをスっとかわすと、乗り込んできた身体めがけて唱えておいた魔法、エアロを目の前で放つレティシア。



逃げる二人の子供。が、本気の戦いゆえに気がついていない。主婦二人。

(すごい、あの戦いもすごいけど。全くあの子の読みどうりじゃないか。)

気がつくと、少女はとうに居ない。
「あれ?」

上階での戦闘もおそらく、母の負けだろう。あれだけ先読みされていては。
と。

いうことは。


魔女がやって来る。



逃げなければ!!!!!

あれ?最後にネルキってよばれた・・・気がつかなかった。心理戦では全く勝てない気がしてきた・・・。


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おおw少年が一番酷い死亡フラグ引いたぞw
Bob Dalus (Hyperion) 2012年01月22日 23:07

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>ぼびー、いらはいw
だんだん、ゴシックホラーめいてきたw
ってわけでもないけどw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年01月22日 23:32

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