128書き物。ZERO-FINAL

さらに2年が経つ。そして。

「もう一回!」栗色の髪を短く刈った少女は、目の前のグレイの髪を腰まで伸ばした少女に挑戦する。

鬼哭隊。森に囲まれた深遠なる精霊の加護と、預言者たる導き手に護られた街。
その実質的な守りを担う自警団。と、同時に槍の技術を求めるもの達に技術を教え、また自身たちも研鑽を重ねる隊。

その鍛錬場にて、二人の少女が向かい合う。

この対戦の後には二人そろってカフェに行くのが定番になってはいたが、いまは真剣だ。

「のう?ネーベルさんな?」銀髪のララフェル。見た目はともかく老人らしい。
「はい、ホラン殿。」と、茶色の髪を少し長めにした男性。鬼哭隊の隊長でもある。
「子供のケンカにしては、大仰なのな?」と笑う。
「けしかけたのは、あなた方でしょう?」と真面目に返す。
「俺とやってみるかな?」と笑う。
「いえ、やめておきましょう。正直、勝てる気がしません。部下の前ではさすがにご遠慮いたします。」と。
「遊び心がないやつなのな。」と残念そうだ。
「質実剛健が隊の誉れではありますが。郊外にて、お手合わせしていただければ幸いかと思います。」と、少しうれしそうだ。
「その心意気やよしなのな。」好々爺はやる気満々だ。
なにしろ、弟子とはそろそろ別れないといけないから。今のうちに楽しみを増やさなければ。


「ホラン殿。あの娘はどうなっている?」とはいつもの鬱陶しい男だ。
「どうということもないな。俺の指導でいえば、まだまだだがな。」
「それは使えない、という事でよろしいかな?」
いきなり目の前に飛び込んできて、拳を突き出し、男の顔面の直前で止める。
「このくらいは普通にやるくらいかな。」と答えるララフェル。
デスク越し、距離、身長から考えるとありえない素早い動きに声もない。
「で、あの娘はお前等の駒なのかな?」
「もちろんです!そのためにあなたを招聘したのですから。
報酬は十分に用意いたします。お好きな額をおっしゃってください。
今の動きが出来るのでしたら、十分に役に立ってくれるでしょう。ご苦労さまでした。」

「そうか。俺の報酬はな。あの娘だ。お前等の好きにはさせん。」
「それは・・。本末転倒でしょう!」
「なにも連れて帰るとは俺も言わん。ただ、お前等の駒だけで人生を潰す事だけはさせん。わかったか?」
「その・・?」
「依頼、という形であの娘を雇う、というのなら認めてやる。」
「ええと。」
「もし、俺の耳にあの娘を好き勝手に使うという話が来れば、次の日にはお前の墓ができるぞ?」
「そんな馬鹿な、はは。」
「ウルダハの情報力と、俺の腕をなめるなよ?以前にも忠告しただろ?」
「脅し、ですか。」
「暗殺稼業はしばらくやっていなかったんだが。現役の血がうずいてきたんだよ。お前等をみてるとな。体験したいか?」
「いえ・・。」




「師匠、お話って?」
初めて会ったときからすると、随分と女らしくなったが、まだまだ小娘だな。

「いや、他でもないな。お前は卒業な。」
「はい?」意味が分からない少女。
「お前には、教えれることは教えたのよな。」
「え?」
「これからは一人でやっていけ。そのためのツテは作っておいたのな。」
「師匠!」
「うん、別れはいきなりなのな。こう、ほっぺにチューしてほしいのよな。」
「師匠・・・。」


ちゅ。




「君がレティシアか。」男の冷たい声。
「はい。」グレイの髪を後ろにまとめた少女。
「家名すら無い君が、この場に来れた栄光をかみ締めたまえ。」
「レティシア・ヴィルトカッツェ(山猫)です。」
「報告ではアラミゴ出身だろう?なぜグリダニアの家名を名乗る?」
「いえ、こちらに来た際に親を亡くしましたが、この家名を与えてくれた方がいました。覚えてはいませんが、誇りを持って名乗っています。」
「まあ、いい。君の任務はクルザスの偵察だ。イシュガルドに出来るだけ行ってこい。報酬はその都度出す。嫌ならいつでも言うといい。」
「わかりました。」






一人、潮風に吹かれながら昼食を摂るのもいいものね。
故郷では味わえない景色と味付けも、今となっては馴染んだものだ。

「お待たせしました!」と元気な声で料理をテーブルに置く少女。
ブルーグレイの髪を短く肩のあたりで切りそろえた姿を見ると、もうちょっと長ければ泣きそうになるけどね。と微笑む。
「ありがとう。」と、老ミコッテは料理に手をつける。

「ちょっと、マユ!あっちのお客さんが呼んでる!」
「母さん、行って来い!こっちも忙しいんだから!」

老ミコッテは、誰もいない向かいの席にそっとお辞儀をして。
「私の後に、大変な目に遭われたのね。お話もこれで最後なのかしら?」
「案外楽しかった、ですって?」
「もちろん、私も楽しかったんですのよ。」
「妹も呼べればいいんですけど。あの子には辛い思い出しかないかもしれないので・・。」
「そうね。今のあの子を見れば、自分が成し遂げたことに満足でしょう。」
「それは自分もな!ですって?そうね、私はできなかったから。」
「私もそう遠くないうちに、そっちにお邪魔することになると思うから。」
「え?まだ早い?」
「気長に待ってるのよな。ですって?ありがとうね。」
「じゃあ、お料理が冷める前に頂くわ。またご一緒しましょうね。」





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ZERO編、しゅうりょーw

あとがきw

ラストは丸くなったあの方のシーン。これは書き始めたときから考えていました。
魔女の成り立ち、密偵になるまでと、組み立てる中で必須のキャラでしたね。
次回は・・・人気投票のキャラでやっちゃいますかw
意外とおもしろそうなw


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ラストでちょっと目頭熱くなりました。こういうのに弱いです…。
Alto Springday (Sargatanas) 2012年01月21日 11:53

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>アルトさん、いらっしゃい♪
少ししっとり系のエンディング。シリアス続きの話しでしたので、ラストはこういう風にしたかったんです。
少しでも感情に響いてくだされば、書いた価値もあるってものです。ありがとうございます!
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年01月21日 12:12

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