123書き物。ZERO?

故郷には、特別な思い入れはなかった。
ただ、両親と過ごし、近所の友達と遊んで。
逃げ出した。
それだけの場所だった。

アラミゴ。

帝国の侵攻におびえ、不安の広がる中、国を出ようとする人が後を断たない。
つい先日も、向かいの家族が逃げ出したところだった。
別れの挨拶も無く、朝方挨拶をしようとしたらもぬけの空だった。

「ねぇ、あなた。どうするの?お向かいさんも・・。」
「まだ帝国はここまで来てない。大丈夫さ。」
「そんなこと言って・・。」
「大丈夫だ。国軍がなんとかする。」
「・・・。」

両親が何を言っているのか、なんとなくは分かる。が、不安は広がるだけで何にもならない。
今年で10歳になる少女は、腰まで伸びたグレイの髪を手で漉きながらポツンとベッドに腰掛けていた。


ガレマール帝国。通称「帝国」
戦場を各地に広げ、エオルゼアに向けて侵攻を進めている。その間にあるのが、アラミゴ。

少女の両親の考えはすでに致命的なほど遅かったが、まだ気がついていない。

次の日の夜。

「んー?」
「しー。静かにして。」と母。
寝てるところを起こされて。
「なあに?母さん。」
「今から街を逃げ出すの。静かにして。お願い。」と母は切羽つまった様子。
事情を察した少女は、うん、と頷いてベッドの下からカバンを取り出した。
「あなた!」と驚く母。
「しー。」とクチを押さえる少女。
「わかってたの?」「うん、要る物はこん中に詰めておいてあるから。乾かしたパンも入れてあるから、二日くらいは大丈夫。」
「それで・・。」少し前からパンを残して部屋に持って行ったのはこのためか。
「お父さんは?」との問いに、「あの人は・・。」
「そう。」
「グリダニアに行くわ。」と母。「なんで?」
「ウルダハに行く人も多いけど、あなたも連れて行くとなるとかなり辛い旅になりそう。そして聞いた話だと、奴隷だとか野蛮な話もあるから。」
「グリダニアの方が遠いんだっけ?」「だけど。とりあえず、知り合いに途中まで送ってもらえるから。それは安全な術だそうだから。」
「お父さんも来ればいいのに。」「あの人は・・。」


知り合いだという、幻術士が目の前に居る。
「あ、来たわね。そっちがお子さん?」とはローブを着たミコッテ。
周りには他にも数人。
「今から、テレポという術をかけます。これでグリダニアに行けますが、
必ずしも安全だとは言いかねます!術自体は失敗しませんが、キャンプと呼ばれる場所からは自力で行ってもらわないと。」
「なんだ!最後まで面倒みてくれ!」とは、どこかの商店で見かけたオジサンだ。

「ごめんなさい、一度に連れて行けるには限度があるんです。」ミコッテは沈痛な表情で、「この後も送らないと。」「ち。」とオジサン。

そして。
淡い蒼の光に包まれて。


眼が馴染んでくると、深い緑が目に付く。
濃い森の湿気を帯びた空気が鼻腔に新鮮だ。

手を繋いでいた母が、「地図をもらったわ。どうにもここはエメラルドモス、っていう場所ね。」「うん。」「レティ。もしもわたしが・・。」「やだ。」

「では、私は戻ってまた送りにいきます!」とミコッテの幻術士。
「がんばって!」と思わず声に出してしまった。
ニッコリ微笑みを返して彼女は淡い光の中に消えていく。


どれだけ走っただろうか?
森の中は似たような道にしか見えない。
「ここどこ?」との声に「ちょっと待ってね。」と母。
同じく来た人たちは、キャンプに残るか、勝手に走り出していて。
その「走り出した組」の自分達は、自力で行かねばならない。
ただ、魔物の類も、野生の獰猛な生き物もいる。途中でもう数人が倒れている。

幸運にも、自分達はなんとか進めているが。

「もうイヤだあああああ!!!」と叫んで、男性達の集団はパニックを起こして走り出してしまった。
「あ!ちょっと!!」と母が声をかけるが、「しー。」と声をかける。
「レティ?」「ダメ、大声出したら。」
木々の茂る向うで悲鳴が聞こえてきた。
「静かにしないとダメ。森が怒るから。」「レティ?」
「なに?」「逃げて。」口からは赤い液体が。
「え?」「逃げて。お願い。」
見ると、お腹から木の枝が突き出している。周りには木しかない。
ただ、木には目のようなものがついていた。
「あなたは、森の気持ちがわかるみたい・・、先のミコッテみたいに・・・。」
「母さん?」「はやく。地図は・・・・。」「や、だ!」「お・・ね・・」
木の枝がもう一本、突き刺さる。

「レ・・ィ。・・・・る。」
「うん、母さん、愛してる。」そっと頬に手を当て、血にまみれた口をぬぐう。

生きてやる。
そのまま、走り出す。
ドコを走ったのだか分からない。地図なんかクソくらえだ。

ただ、後ろからでっかい木が追いかけてくる。ちょっとした幸運は、根っこを引き抜く時間があったくらいか。

遠くになんだかそれっぽい街のようなものが見えた。この森の中ではそれこそ幸運以外の何者でもない。

が、子供の足でそうそう振り切れるものでもないが。

「間に合った!」とは、先のミコッテ。別のキャンプから来たらしい。
「へ?さっきの?」「いいから、あっちに走れ!」
無我夢中で走る。
「グリダニアに着いたら、幻術士ギルドに行けっ!私はサ・ヴィント。行けっ!」


「なあ、尊き樹の精霊、トレントよ。」ミコッテは声をかける。
「この鎮守の森を騒がした非礼をわびる。」
トレントは動きを止め。
「どうか怒りを鎮めてはくれないだろうか?」
トレントは動かない。
「感謝する。」
一礼をするミコッテ。そして枝の一本が胸を貫通させる。
「かはっ!」血の混じった吐息が漏れる。
「そうか、これが対価、か・・・。」(これが罰、か)薄れいく意識の中で先の少女に幸あれ、と、思ったところで暗闇に飲まれていく。

ミコッテの幻術士をぶら下げたまま、自分の領地に帰っていくトレント。



グリダニア。着いてみたらなんというコトも無い。
目新しいものは見える。
先のミコッテの言葉に従って、幻術士ギルドとやらに向かう。場所なんて分からない。
とにかく、人に話を聞き、たどり着く。
「あの。」
「子供の来るところじゃないわよ?」とさっくり言われたが。
「サ・ヴィントって人から、ここに行けって。」
「!!!」
「あなた、お名前は?」とローブの女性。
「レティシア。」
「ああ、ヴィントが最期に託した子はあなたなのね。」
「あの人、死んじゃったの?」
「あなたの中に生きているわ。」
「どうしたらいいの?」
「お母さんは?」
「もう・・。いない。」
「そう。では、しばらくここで過ごしたらいいわ。」
「うん。でも。ここでの教えを、修行もさせてください!」
「・・・。」
「だめですか?」
「いいわ。その代わり子供として扱わないから。そのつもりで。」
「上等!!」














というわけで、妄想過去をw
魔女の成り立ちですw


----------コメント----------

サっちゃん・・・
アニマ的にも距離的にもグリに直接飛んだほうが
コスパ良いだろうに(ノД`)
何か理由があったのかな・・・
Eraru Control (Hyperion) 2012年01月12日 12:37

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この生い立ちでっていうかあのギルドで育ってなにが有ったらあの破天荒な人格になるんだろう@@;。

絶対途中で海賊か山賊に転職してたなw。
Bob Dalus (Hyperion) 2012年01月13日 03:19

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>えらるちゃん、いらっしゃい♪
少し長めに・・・。
古今東西、現実でも「難民」は国にとってやっかいな問題。
で、ピストン輸送で難民を連れて行くのは、ギルドにとっても国から目を付けられて、マイナスになる。
なので、勝手にミコッテの幻術士が行動に出た、という設定です。
そして、彼女の思惑を良しとして、ギルドは見て見ぬフリをしながら、保護に動いた、というわけです。同じキャンプに送るとこれまた目立ちますし、たまたまモスに連れて行ったら、トレントなんぞが出てきたと。で、お母さんがパールで娘を助けてくれと、今際の際に。
罰か。と言って果てたのは自身の勝手な行動で数人もの被害を出したことによることです。
長々と説明しちゃいました(・ω・)
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年01月13日 05:39

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>ぼびー、いらさいw
生い立ち、でいうとモトモトこんなんw
スゥに「アラミゴって?」の質問に「つまらない」発言や、死に別れの時にも「生きてやる」というように、芯が通った性格w
幻術士ギルドには、軒を借りて、生きていくために利用してやる、という感じですねwこの後、密偵稼業をしていくわけでw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年01月13日 05:51

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