116書き物。ちょっとはさんで~ 一幕

グリダニアでの朝は遅い。樹齢数百、いや千年に届く木々に朝日がさえぎられるため。



森林都市、精霊の加護の街、神秘に満ちた街。

だが。

案外住んでいる者にとっては、そんな評判などどうでもよく。
のんびりとした生活が多い。

もちろん、そうでもない人達もいるわけで。

自警団である、鬼哭隊の朝は早い。
というか、一日中である。
もちろん、交代で休憩があったり、鍛錬があったり、だが。


深夜番だったスウェシーナが家に帰った時にはすでに靄が出ていた。
これが見えるという事は、日光が空気中の水分を反射しているから。(と、魔女から聞いた。)
「さて、と。」

家の中に物音がしないので、息子の部屋を見に行く。同じ隊だが、たまに寝坊をしでかす時があるので確認にノックをする。
返事は無い。入れ替わりに出て行ったのだろう。安心してドアから背を向ける。

「・・・あれ?おかあさん・・・?」

振り返る。

ドアから、もっそりとした動きで顔を見せる息子。

「なっにっしってっんっのっっ!」振り向きざまにドアを蹴る。
十分に体重と(ヨロイの重さと)バランスの取れた後ろ回し蹴りは、ドアを打ち抜いて、向こう側に居たモノもろとも部屋に吹っ飛ばす。
「ネルケっ!あなた、今日は朝の鍛錬でしょ!」

もう、何度蹴り飛ばされたかわからないドアの蝶番は、ただの飾りでしかない。ついているだけだ。
そして、そのドアの下敷きになっている息子を見ると、ああ、あの人の血なのかしら?などと思ってしまう。
過去に、親友に頼んでいた「鬼哭隊の不意打ち特訓」、
それで見事なまでにやられて精神的に落ち込んでいた隊員を励ましているうちに、夫婦になってしまったが。
後悔はしていないが、息子にまで先天的な「負け根性」はついていて欲しくはない。

のだが。

鍛錬を何度か交わした少女に、いまだ一勝も挙げれない。
こうなれば、鍛錬しかない、かと。
思っていたが。

先日、その子供達で街の依頼を一つ終わらせ、カフェでの一幕に件の少女から言われたこと。

どうにも、読み方が単純。というか、読んでいない。

「なるほど。これは、隊から少し離れて、外での経験も積め、か。」
との思いで、今朝には出立する旨を知己に言っておいたのだが。

目の前のドアの下敷きになってる息子を見るに、どうしようもなく頼りない。
実戦、ということなら、それほど腕前はわるくないのだが・・、とは親の心情か。

「さっさと、起きろ!」「はい、おかあさん。」「副隊長と呼べっ!」「え?」
「朝の、鍛錬、覚えてる?」「はい・・。」「特別メニュー。」「はぃ。」
「なら、さっさと準備して、とっととお行きっ!」「はいっ!」



はぁ。

こりゃ、あの子に勝つのはかなり先ね。っていうか、勝てるのかしら?

思えば、わたしら一家が、あの一家に勝ったコトってないわねえ・・
まあ、わたしならあの子には勝てるけど・・。その後が怖い・・。
魔女はともかく、マイスターも参戦など、親子3人だとケタが違いすぎる。

「行ってまいります!」と、今更ながらにドアの音。

不安だ・・・。まずは、ウルダハか?さてはリムサ・ロミンサか?どちらかを選ぶのはあの子だ。

「さあて。」と。
「あの人、今日は何がいいかしら?」

いそいそと、クルザスに届ける食事を作りながら、息子のことはさっぱり忘れることにした、鬼哭隊副隊長であった。





「はっくしゅん!」と酒場のカウンターで。
「どうしたのー?マユ。」とクイックサンドの女将、モモディ。
「えと、なんだか悪寒が。」と、ブルーグレイの髪を短めに肩あたりでそろえた少女。
「ああ、この前行ったトコ?あそこに、そんな格好で行ったら風邪くらいひいちゃうわよー?」
「うーん、醸造庫って名前に騙されたかも。というか、グリダニアってもともと寒いし。」
「オカシイわねえ。東方の言い伝えに、「バカは風邪ひかない」て・い、うの。にー・・・」
「ほぅ。」
「マ、ユ・・・・ちゃ・・こ。  レい・・じょう ・・。し・・ん。 ・・じゃ。  ぅ」


----------コメント----------

今後、まさかのネルキ編もありそうですね。あ、ネルケか。(苦笑)
だんだん周囲のキャラも個性が立ってきましたね-!すごいすごい。
Alto Springday (Sargatanas) 2012年01月05日 18:15

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>アルトさん、いらっしゃい♪
ネルケ編かーw
マユの家庭以外で考えたらこうなった、というべきかw
よく考えたら、どっちも旦那が負けてるwがんばれ、旦那!www
キャラの個性が出てくるにつけ、あたしの手から離れて、勝手にいっちゃいますw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年01月05日 18:34

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