994外伝2 ワンダーランド

ひゅ~~~

どど~ん

ぱらぱちぱらぱちぱちぱち・・・

そんな、爆発と色彩が大音響を奏で、彩を昼夜と問わず。

ちょっとした街が。

実際の街としては、小規模ながら派手さは恐らくどこの街よりも一番。
それだけは間違いないだろう。

「マンダヴィル・ゴールド・ソーサー」

砂蠍衆のひとり、ゴッドベルト氏が(勢いで)建設した、一大遊戯施設。というか、街。
元々は・・・ある企業と連携してはいたのだけれど・・

「あんにゃろう、こっちが脇役じゃないか!」「まあまあ、社長。要は持って行き方です。乗せられて損をすればお怒りも解りますが、上手く便乗できているので。」
ミコッテの社長と、秘書のやりとり。
遊戯施設と、宿泊施設でなんだかんだと、上手くいっている。
「ま、あの人じゃなきゃ、キレてるけどね。」「そうですね。」
書類にサインをしながら、マルスはリムサ・ロミンサにも聞こえてきそうな花火を意識しながら。



「おお!スゴイのじゃよ~!」
傍からは、なんて思われているのだろう?
いつ見ても、と・・か?
むしろ、誰?
というか・・・
カボチャに手足が生えた・・・というか。
なんというか。
「おうさま、さっさと歩きなさい。」
小柄な女性がパンプキンヘッドに蹴りを。
「ちょっと、それは・・どうかな?まなん?」

ララフェルの4人組。
「おうさま」と呼ばれるララフェル以外は女性で(年齢が不詳なのは、ララフェル独特というべきか)

「ゆいちゃん。コレはこのくらいが丁度いい。」
まなん、と呼ばれた彼女は持っている杖で、転がったパンプキンヘッドを小突き回しながら。
「そーね、たぶん大丈夫。」と。もうひとりが短い杖でツンツン、とカボチャを突く。
「ワ、ワシは!」
カボチャの中からくぐもった声が・・・
「はいはい。」と、長い杖を大きくスイングバックし・・・・
「いっちにーの!」
フルスイング。
「さんっ!!!」
オレンジ色のカボチャが転げていく。

「うーん、ホールインワンとは行かなかったわね。」
「惜しい。」
「えー。」

3人(+1)は、此処。ゴールドソーサーの入口で。

事の発端はとりあえず「面白そう」「あ、そういえば招待チケットもらいましたよ」「よし。行こう!」「あ、でも宿泊券はないです。」
「そんなときこそ「銀行」がいる」「あ、王様ですね!」「いいのかな?」「問題は解決した!」「うん!」「すげー。」

そんなこんなで、カボチャを転がしながら。

「まなん?」カボチャをつつきながら。
「えらっち、どうかした?」
「なにからするの?」それはそうだ。
なにせ、バカでかいホール。冒険者や、一般客で溢れかえっている。
「わたしは・・カードゲームとかしたいかも。」
「ゆいたん。それは非常にいいポイント!でも・・カードは素人が手を出すと痛い事になる。」
「まなん、やったコトあるの?」
「もちろん!ないっ!」
「なんだそれ。」
「えらっち、ゆいたん。その・・冷たい目で見ないで!」

・・・・・おうさまに、まずはやらせちまえ。

なんとなく、目線をそちらに。

「を?ワシに期待の目線が集まっておるのじゃよ~。」
彼の目線?は、バニーと呼ばれる少し露出のある衣装の給仕の、ララフェル、いや、エレゼンに釘付けされている・・
「剣王」と称される事だけはあり、視線には敏感なのだけれど・・。
カボチャの被り物に、下着だけ。という出で立ち(剣はさすがに入口に預けてある。)は、ちょっと類を見ない。
ララフェルゆえに、そのバランスはなんとも・・・カボチャに手足をつけたら、こんな感じ。な。
愛らしいんだか、不気味なんだか、なんとも判断はつきにくい。
かつては、その威容でもってコロセウムを混沌の坩堝に落としたらしいが。

「じゃあ、おうさま。とりあえず、カードから始めようか。」
女性陣の一人、今は薄桃色の髪のララフェル。
水晶の魔力、という二つ名で通っている彼女だが、果たして本名は誰も知らないらしい。
「いいのじゃよ~。ワシにまかせておくのじゃよ~。」
カウンターに行き、背が届かないので、台座を借りにエレゼンの給仕の元に。
(アレ、絶対狙ってるよね?)(だよね。すぐ隣にルガ兄ちゃんいたのに)(まあ、想定内?)

「よし、カードの対戦相手をさがしてくるんじゃよ~。」台座を抱えながら人だかりのあるカウンターまで。

「ほう、これは珍しいお客様。このスペードがご相手致しましょう。」
「ワシに勝てるのかじゃよ~。」


「で?」エラルは、見るからに萎んだカボチャを尻目に。
「ワシは・・その~」
「まあ、いいよ。おかげでルールと攻略のメドがたったし。」ユイニーは、今対戦しているマナを見る。
明らかに優勢で、スペードを名乗る男性がタジタジになっているのがなんともこ気味良い。
「ワシの財布が~。」
「いいじゃん。その自己犠牲はこちらで美味しく・・いや、尊敬するよ。さすが王様。」
「むふふ~なのじゃよ~。」
すでに数千ギルをスっているが、交換の度にバニーなお姉さんと会話できるのが嬉しいらしく、金額はあまり気になっていないらしい。
それと、聞けば各地にカードのチャレンジを待っている好き者もいるらしく、彼らとの対戦も楽しいだろう、ということだ。
「なるほどね~、そのマージンとかもしっかり取ってるんだろうね~。」なんて。
10連勝ほどして、ホクホク顔のマナが台座を降りる。
「じゃあ、次行こう。」

なにせ、施設は広い上にあちこちでイベントのアナウンスが聞こえてくる。

ただいまより、イベントスクエアにて「鼻息・・・」

ウグイス嬢のアナウンス。

「おー、なんだか面白そう!」「だね。」「行ってみよう。」「ワシは・・」
「おうさまは、とりあえず参加決定で。」「まず、放り込んだら?」「面白そうだけど?」「あの・・ワシ?」


「ぶっふぉおおっっっ!!!!」
円形の舞台には、想像以上に参加者が立ちイベントが始まるのを待っている。
ルールは、テュポーンという魔物の鼻息を回避できればいい、とシンプルだ。
ただし、舞台のどこに現れるかわからない上に、現れる直前に行動禁止をされる。
そして、その鼻息たるや・・場外に吹き飛ばされ、悲鳴と嬌声をあげる参加者達。
これを数度繰り返し「生存者」にはチップが還元されるシステムだ。
意外と儲かるらしく、人気は高い。
そして。
「なんで、ワシだけ~!」カボチャが鼻息で吹き飛ばされて舞台から転がり落ちていく。
「やっぱり、おうさまの横はキケンだったね。」「うん。でもコレでサバイバルの保険が難しいね。」「3人バラけて、勝ち残ったらなにかおごるって事でいいんじゃ?」「そうね。」

結局勝ち残った3人。

「次は、ドコにしよう?」
「まなん、とりあえず休憩行こう。」「そだね。」「よっし。」「ワシ、お腹すいたんじゃよ~。」

各スクエアと呼ばれるエリアには、2階もあり、場所によっては飲食のできる場所も。

「で、この先どうしよ?」一応のリーダーのクリスタル・マナはザナラーンでは珍しい海鮮料理をパクつきながら。
「そうですねー、今いつ時くらいかな?」エラルはこの窓の無い、が明かりだけは過剰な中で。
「腹時計によるとだね、たぶん月が登ってしばらく。」ユイニーは、串焼きに手をつける。
「ワシ的には、宿泊場所の確保じゃとおもうんじゃよ~?」こっちは器用に被り物の中にソーセージを送り込んでいる。
どうやって食べているのか分からないが、そこは「イリュージョン」だそうだ。
「ま、そうだね。宿もなんとかしないと。んじゃ・・」パールを取り出す水晶の魔力。

(あ、社長さん。ちょっといい?)
(ああ。どうしたの?宿の心配?)
(さすが、ね。)
(招待したけど、宿泊券はつけてなかったから。)
(そのこころは・・・宿選びを自由にできるから、よね?)
(そう。アリティア産業としては、今回の施設のうちのいくつかを担当してたんだけど、ヒゲ親父にいいところを持って行かれたからね。
宿泊施設と、ちょっとした遊興施設だけで上手くやらないと。)
(なるほど。)
(なので、宿泊チケットはあえて出さなかったんだけど、好きなところに泊まってくれていいわよ。そのかわり。)
(辛辣な評価を出せ、ってことでいいのかな?)
(それがサービス向上につながるからね。)
(相変わらずドライだこと。)
(実費じゃないと、率直な感想が聞けないからね?)
(おっしゃるとおり。じゃあ、適当に予約させてもらうね。)
(ええ。2部屋はどこのモテルでも開けてあるから。)
(1部屋でいいよ。カボチャは庭にでも転がしておくから。)
(そこは・・)くすくす、笑うニュアンス。(お任せ。)

「よーし。んじゃ宿の確認だけど、今ならまだ空き部屋あるんだって。そんで、上中下。どれがいい?もちろん実費だけど。」
「上ー。」「上!」「ワシも!」「カボチャに発言を求めた覚えはない。」「ひどいのじゃよ~・・」
「じゃあ、スイートの予約しとくけど。実費だからね?」マナが念を押す。
「いくらくらいだろ・・?」「たぶん、なんとかなる・・?」カボチャを見て。「財布、あるし。」「ゆいたん。時々怖い。」「そう?」
「まあ、とりあえず宿代くらい稼いでみようか。」

結局、バカツキなのは3人で。
「ワシだけ、なんで負けるんじゃよ~・・・」
クレーンゲームですらマトモにチップを稼げない「剣王」

それじゃ。

そろそろ月も中天から降り始め、真夜中のロンドを奏でる賭博場から出ていく4人。

「面白かったけど。」「そうね。」マナに続き、エラルがカバンを覗く。
「コレはクセになったら、ピンチかも?」ユイニーが高級宿を指差す。
「ワシ、部屋あるかな~・・?」
「ああ。ちゃんと中庭にいい芝生の場所を聞いておいたから。」異口同音。
「・・・・落ち着くのじゃよ~・・・・」


ウェルカムドリンク、フルーツで迎えられ、食事や時間管理を専属のバトラーが一日中付きっきりで。最高とも言えるサービスに3人はご満悦。
「ドコ行こう?」「そだねー、昨日行けなかったイベントとか?」「そういえば、チップでカードクジもあるみたいです。」「いっとこうか。」「ですね。」

「ワシ・・・忘れられてない・・・と思いたいんじゃな~・・・」

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