976(977)外伝2 日常の欠片 モザイク。

よーっし! 行くぞお、ワタシ!


ウルダハの日差しは容赦がないが、建物の背が高いので日陰は多い。
回廊みたいな都なので、場所さえ選べば一日中影になるポイントは存在するし、ちょっとしたコネさえあればそういう「オイシイ場所」のキープも難しくはない。

が、反面。出遅れてしまうと、いくらコネがあろうと露天でお仕事は難しい。
そのくらい場所の取り合いはハードなのだ。

うん。ワタシは今日もがんばるぞー!

体を拭ったタオルを洗濯用のカゴに放り込むと、勝負用の衣装に身を包み。
御守りの弓を背に。
「じゃあ、行こうっか。リーナさん。」
磨き上げた盾と、カバン一杯の商売道具。

朝方、というか、もっと早めの時間。
店舗も早々に出始め、露天店は場所の取り合いが始まる。
アパルトマンから足早に出ても、この喧騒じみた空気が。
馴染んだ今でも、少しばかりニガテで。そこに。

「やあ。エフィ。今日も元気そうだね。」
声をかけてきた青年は、金髪のくせ毛をかきあげて、いつもの挨拶。
「はい!ウルラさん!」
「ああ、マユが会いたがってたよ。マリーも一緒にって、パールで言っておいたんだけど。マリーも、コッファー&コフィンでの仕事が忙しそうでね。」
「ああ、そうなんですか!うん、ワタシも・・その。いいんです?」
「当然。マユとマリーは俺の方から都合を合わせれるように言っておくから。エフィは楽しみにしておいてくれ。」
「はい・・!」
あ・・・ワタシ・・・あの・・・・ターシャちゃんが・・・その・・・あの・・・その・・・・

「顔に出てるよ。エフィ。ターシャが失礼な真似をして、申し訳ない。俺がちゃんと押さえつけておくから、安心してくれ。」
じゃあ、と手を振って青年の剣士が去っていく。

耳をピコピコとさせながら、顔に出てるのかー・・・とか・・・
少しばかりの時間を、ちょっとした後悔に費やし、ふといつもの場所を見ると。

(やばい・・・先客さんが・・・)

居場所は、早い者勝ち。
取った物が優先権を主張されれば、引き下がるのが常なワタシ。
本来なら、そこで文句を言い立て交渉が始まる。
曰く「場所代を寄越せ。」と。
でも・・・・
ワタシは・・・

そんな争いごとがニガテで・・・・

そんな状況を知った上で、その「場所」を先取りしておく「商人」も居るらしい。
これは、親友から教えてもらったのだが・・
小銭稼ぎであっても、難民がなだれ込んでいるウルダハとしては、ありがちな光景で。
それに対処すべき、だと。自分じゃそう思う。
でも・・

「あの・・・」
恐る恐る、声をかける。
グレーのフードの付いたカウルと呼ばれる衣装に身を包んだミコッテ(ミコッテ用に耳のカバーがついている)に。

「エフィ!ちゃんと場所とっといたよ!」
「わ!?」
「この場所、人気スポットだから。」
ニっと、笑みを浮かべる親友。
「あ・・・あは!うん、ありがとう!エリス!!」
「えへへ!っと。こっちも仕事があるからね。交替、終了っと。頑張りなさいね。」
「うん。」ありがとう・・・
「ありがとう。エリス。」
「じゃあ・・」と、小悪魔めいた笑顔。エリス・ローウェルは。「夕御飯、オゴリだよ!」
なんて。

うわあああああ・・・・どうしよう?
「うん。」
勢いに押されてしまい・・

ああ、ワタシ・・・どうしよう?あ、アレだ。ショコラさんに連絡して・・・いや、まてまて・・え?どう?どうする?
あの人、グリダニアだよ?呼ぶの?あれ?そうすれば・・・あれ?ちょっと思考を戻して。
遠ざかる親友に、ニコヤカな表情で手を振りながら、思考ストップ。

あれ?

キーワード。

なんとかなりそうな。
多分。
ワタシ・・・うん。なんとか・・

無意識に商売場所にカーペットを広げながらこの組み合わせは・・・でも・・・

いくら朝が早いからといって、でも。

この準備が終わってからじゃないと、ちゃんとした事が言えない?相談すら。
傍らに置いた盾を見る。
「リーナさん?どうすればいいかな?」
盾は朝の光を浴びて、キラリと輝きを。

「そう、そうだよね。うん。繋がりは大事、だよ、ね。」
盾を抱きしめ、頷く。

エフェメラは、いつもの通りに。
「はいはーい!鍛冶屋エフェメラだよ~!武具の修繕ならコチラにどうぞ!」
声を張る。
(こっちが先手を打つのもいいかもしれないニャ。)
内心、ドキドキしながら、

小さな宝珠を握り締める。
(マユさん?)

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こちらのミスで保存し忘れた1話分を後から足しているため、今回の話で977話目です。
次回から978話として修正します。(管理人