967外伝2 評価、かな?うん。ワタシ的に。

うん。
こういうのがイイの。
ワタシとしては。

普段は、というか、大抵の食事は・・・質素というか。
言われてみれば、自炊してるのだから質素と言えば当然だし、贅沢するくらいなら貯蓄する方が向いている。
それに、故郷の森だと自炊どころか、狩りで獲物を獲ってきて、森の恵みたる菜をいただくのが常だったし。
それが、環境が変わればそうとも言ってられなくなり・・・

半分は自分のせいでもあるが・・・

事の発端は、まだ幼い自分が悪いんだと、今では理解もしてるし、その理由も些細なもので。
成り行き半分、好奇心半分で選んだ未来。
後悔はすることもあるけど、そうそう捨てたものでもない。
なにせ、自分で選んだのだから。だから、そんな暇もない。

そう。そうなのだ。
目の前の皿を凝視しながら・・・・・・・・・・・・・・

「あの・・。コレ?」
思わず、屋台の店主に声を
恐る恐る・・

「ああ。珍味だぜ?ヤーゾンの卵の塩漬けだ。冒険者でもモノ好きくらいしかもって帰らねえ。糸を引く位が食べごろだ。」

(うえ・・・)見た目には、(おそらく)サボテンダーの(どこか?)をスライスしたであろう、付け合せと一緒に盛られた、小さな粒ツブ。
「お嬢ちゃん!グルメなんだってな!だったら、コレはいかなきゃダメだぜ?」
屋台のオヤジは次の料理を準備しているらしい。

「あ。あの?」
「ん?」
「その・・どうしてワタシがグルメ?なんです・・か?」
「ああ。馴染みのミコッテの嬢ちゃんが人相書き付きでお嬢ちゃんを紹介してな。って、心当たりはないのかい?茶色い髪に肌で、碧の目が印象的なんだが・・」
(ショコラさん!いらないコトを!)
「あ、あはは。知っています。」
「次のもオススメだ。これは宮廷仕えだった料理人から教わったんだ。だから間違いねえ。」
「あ。そうですか・・で、その。」
「あ、その卵な。サボテンダーの上に乗せて食べてよし、通な食べ方だと・・」
オシャベリが続く店主を置いておいて、目の前の卵を凝視するエフェメラ。
こんなことなら、先日の祝賀の席で「ワタシは量より質だよ!」なんて、親友に言わなければよかった、と悔いたところで。
時はすでに遅し。

思えば、確かに量はあったし、味としても問題は無いどころか、この規模でよくもこれだけ、と思ったけど。
だからといって、妥協してるわけじゃない。とも主張をした。けど。けれども。
目の前の物体を「甘露甘露」と言える自信は微塵も持ち合わせていない。
味を見たわけでもないが、あからさまに臭うこの何とも言えない香り。ネバつき。
グルメ、なんて言葉に呪いを・・と思わず言いたくなる・・

しかし・・・。
意を決し、一口。

(むっぁっ!!!)
口の中でナニかが暴れている。それはきっと愛らしくも憎たらしいモーグリのようなモノではない。
吹き出す寸前に。

「あ、エフィ!どう?美味しいでしょ!?ソレ!」
ミコッテの女性。
親友にして、大企業の社長(ウルダハ支店)のエリス女史が隣に。
同じものを注文し、さらにいろんなトッピングまで追加している。

「ワタシには・・」心の中で(ムリ。)と告げる。
それを意に介した風でもなく、トッピングをし、さらに混ぜ込んでネットリと糸を引くモノを・・・
「はい、あ~ん。」
口元に。
涙目で訴えるも、彼女は優しい表情で目をつむったまま・・
「あ・・・ん・・」ぶふッ!
必死にこらえ・・
ぐっと、さっきのとまとめて喉の奥、胃袋に流し込む。

ああ、メネフィナ様。これが試練・・いえ、慈愛なのですね・・うぷッ。

「エフィ?美味しいでしょ?」エリスが美味しそうに先程までの物体を食しながら。
「・・・ん。っぷ。」

「あい、お嬢さん方。ボムの自爆コロッケだ。自爆させないように慎重にな!」
大きなコロッケに火を灯しながら店主が笑う。



自爆、というか、火はパフォーマンスだが・・・中に強烈なスパイスのチーズを引いたのは、エリスだった。

「ウルダハって、やっぱり油断ができない・・・にゃ・・」
帰って、リーナさんに報告のための日記の内容を考えつつ、親友がむせ返っている背中をなんとかしつつ・・
「グルメって一筋縄じゃ、いかない・・」なんて思ったりした午後。

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